昔…
ユウとこんな話をしたことがある。
まだ私たちが12歳だったとき。
「ねぇ、ユウ!もしもの話しよ〜!」
「はぁ?」
「だから、『もしも』!だよ。絶対に『If〜』から始まらないとダメなの!」
「めんどくせぇ」
「いーじゃん!リナリーもいないから暇なの〜」
ユウはいつも私の遊びに付き合ってくれる。しぶしぶ、だけど。
そこで私たちは「もしも〜」話を作り始めた。
「もしも…私がお花だったら!いーっぱいの虫に蜜をあげる!」
「はっ!ガキの発想だな…」
「な、なによ!じゃあユウはどうなの!?」
「もしも俺が最強なら、全部ぶった斬る!!」
「…全然おもしろくない」
「はぁ!?」
「なんか笑わせるようなこと言ってよ」
「…もしも、俺が一日だけコムイになれたら、髪の毛全部抜いてやる。」
「あはは!コムイかわいそ〜」
「…終わりな」
「えー?なんで?」
「お前、笑っただろ。だから終わりだ」
「つまんなーい。」
そこで目が覚めた。
目を開けると本部の談話室だった。
少しうたた寝をしていたのか、私はなぜこんなところにいるのかすぐには理解できなかった。
ふと、隣を見ると、六幻を抱えながら目を瞑るユウがいた。
ユウは私の視線に気付いたのか、パッと目を開けた。
「あれ?寝てなかったの?」
「お前を探して、ここへ来た。ついさっきな」
「そーなんだ。あ、今ね、懐かしい夢見てたんだ…」
「夢?」
「うん…あ、ユウ、『もしも』の話しようか」
「…は?」
「昔よくやったじゃん。覚えてる?」
「お前の遊びだろ。覚えてるに決まってる」
「何その言い方〜。じゃあね、もしも私が一般人なら、お花屋さんしたいなぁ」
「は!やっぱガキの発想のままだな」
「むっ…じゃあユウは?」
「もし俺が最強なら、アクマ全部ぶった斬る」
「…それ、昔同じようなこと言ってたよ。やっぱバカだね、ユウ」
「はぁ!?」
私はくすくす笑って、ユウの膝に頭を乗せた。
彼は少し驚いたみたいだったけど、何も言わず、そのままじっとしてくれていた。
「じゃあ18歳の私の発想…もしも私がエクソシストじゃなかったら…お嫁さんになりたいな」
「…」
「なんかないの?18歳のユウの発想」
「…もし俺が人間なら…誰も失わずにすんだかもな」
「…もしも私がユウのお嫁さんなら…ずっとこうしてもらいたい」
そういって私は目を閉じた。
そんな私の髪をユウは撫でていた。
まるで壊れ物を扱うかのように…
「でも…私はユウのお嫁さんじゃないから…あと5分だけ…」
あと
5
分だけ
こんなことくらい…いつまでもやってやるよ
そう遠くで聞こえた気がした
2012/08/28