「あぁロメオ…あなたは何故ロメオなの…?」
私は小説の一部を朗読した。
読んでいるのは「ロメオとジュリエッタ」ver. イタリア。
シェークスピア版は愚弄だと思っている。
それほどに、私はこの小説が好きだ。
それを隣でつまらなさそうに聞いているのは、
ロメオとは対照的な私の彼氏、ディーノ。
「もう!もうちょっと興味持ってよ!」
「…それ聞くの100回目なんだよ、飽きるって」
「なんでよ!すっごくいい話じゃない!
絶対に結ばれることのない二人…!それでも運命に逆らおうとするジュリエッタ。
ジュリエッタを愛するあまり、早とちりをして死んでしまうロメオ…!
そのロメオを追って、折り重なるように死んでいったジュリエッタ!これぞ、悲劇よ!」
「はいはい。電気消すぞー」
「もう!ディーノ!!」
カチッと電気を消されてしまった。
ディーノは私を抱きしめてじゃないと寝れないらしく、いつもくっついて寝ている。
大きなベッドなのに勿体無い。
それに、私が寝苦しい。
だから、彼の寝息が聞こえたところでそーっと彼から離れるのが日課。
そこでウンと伸びをして私も夢の世界に入る。
でも今日は違った。
いつまで経っても寝息が聞こえない。
「…なんで寝ないの?」
「…別に」
「私が寝れないじゃんー」
「このまま寝ればいいだろ」
「寝苦しいの」
「…だから朝起きたらお前が遠くにいるのか」
「そーよ。バカ」
ディーノの胸をドンドンと叩くがビクともしない。
それどころか、もっとギュッと抱きしめてきた。
「う…ディーノ、苦しいってば」
「なぁ、。」
「…何?」
「なんで、ロメオとジュリエッタが好きなんだ?」
「はい?今頃?」
「ちょっと気になって」
「うーんと…」
そういえば、なんでだろう。
ディーノの腕の中で考えること数分。
ふと答えが思いついたので、ディーノの顔を見た。
「分かった!私もジュリエッタになりたいの!」
「は?」
「ジュリエッタはきっと幸せだったと思うの。
あんなに愛されて、それに自分も愛して。だから私もそういう恋をしたいなぁって」
「…俺がいるだろ?」
「勿論、ディーノのこと好きよ?
でもディーノと私はイケないこと、してるわけじゃないもん。ハラハラ感がないのよ」
それを聞いた瞬間、ディーノは私にキスをしてきた。
普通のキスじゃなく、深いキス。
彼の腕の中にいるから逃げられるわけもなく、
スッと服の中に入ってくる手も拒むことができない。
「ん…もう!ディーノ!?」
「じゃあお前は、ロメオみたいなやつが好きなのか?」
「…え?」
「一生一緒にいることなんてできない相手だぞ?
触れることも、キスも、何もできない相手でいいのか?」
「う…そ、それは…」
「俺は嫌だな。好きな奴にはとことん触れたいし、キスもしたい。
愛してるって言葉も、相手が飽きるくらい言ってやる」
「…ディーノ?」
「もしお前がジュリエッタになりたいんなら…俺だけのジュリエッタになれ」
そう言ってまた口を塞ぐディーノ。
今度は私も抵抗せず、身を任せた。
こんなに嬉しい気持ちになったのは、初めてかもしれない。
愛
しのジュリエッタ
後日。
はロメオとジュリエッタの本を本棚に直していた。
「…もう読まないのか?」
「うん。もういいの」
「…飽きたのか?」
「ううん!飽きてないけど…本の中のロメオより、本物のロメオの方がかっこいいから」
そう言ってはディーノの頬に軽くキスをした。
「でも今度、ヴェローナ、連れてって!」
「あぁ。どこへでも連れてってやるよ」
俺のジュリエッタは本のジュリエッタより何十倍も魅力的だが、その何倍も、わがままだ。
2013/10/19