血のような朝日が昇ってきた。
その頃には銃声も止み、城は半崩壊のまま、静寂に包まれていた。










屋上物語 -決意-












私はディーノとロマーリオに連れられ、城の正面にやってきた。
広場には重軽傷者共に、ファミリーの医療班に治療を受けていた。
勿論、治療を受けているのは全てボンゴレの人間だった。









様!!ご無事でなによりです!お怪我は!?」
「…大丈夫…」
「嘘はお止めください…足の爪が…剥がれております。それに切り傷も…早く治療を…」
「それより…9代目は…」
「9代目でしたら…」









救急のワゴン車が止まっていた。
はディーノの腕からスッとすり抜けると車に駆け寄った。








9代目…ッ!!







ワゴン車をガッと開けると、頭に包帯を巻いた9代目が座っていた。
着ているスーツは所々破れ、焦げていた。
隣に座るのはコヨーテ。
他の守護者は車の周りに守護をしているのを知っていた。







…大丈夫か?」
「私より…9代目が…!」
「はっはっはっ…私は大丈夫だよ。お前さんは…
 こらこら、泣くな泣くな。綺麗な顔が台無しだ」
「だ、だって…だってぇ…








は9代目に抱きついて泣いた。
夜中泣き続けていたのに、まだ涙が出てきた。
その後、疲れきって寝てしまったのか、
気付けばホテルのベッドで寝かされていた。
城は入れる状況ではないことは明白だった。

も所々包帯が巻かれていた。
足が痛んだ。
そういえば、足の爪が剥がれていると言われたのを思い出した。
部屋のソファで、ディーノが寝ていた。
そういえば、夜中付き添ってくれていたのを思い出した。

彼らキャバッローネ・ファミリーが一番最後に帰ろうとしていたらしい。
まだボンゴレの敷地内を走っていたとき、銃声が聞こえたため、
急いで戻ってきたのだと言っていた。
私はディーノの髪を軽く梳いた。
綺麗なブロンドの髪だった。







うわっ!
わ!いきなり起きないでよ」
「お前こそ…ってか大丈夫なのか?」
「うん。ありがと」
「別に…じゃあ俺、帰るな」
「え?」
「お前が起きるまでってロマーリオに言ってたんだ。
 俺も帰んなきゃ」
「そっか…」








ディーノが立ち上がって扉に手をかけた。
すると、私は無意識の打ちにディーノのシャツを掴んでいた。







「な、何?」
「え…あ、ごめん…でも、離れなくて…
 なんでだろ…ごめん!あの…離そうとしてるんだけど…」







どれだけ頑張っても何故かどんどんシャツを掴む力が強くなっていく。
それを見て、ディーノはクスッと笑うと私の頭を撫でた。








「ははっ!お前、そんなんだったっけ?」
「違う!でも…行っちゃ…ヤダ…








その瞬間、ディーノは私を抱きしめ、そしてキスをした。
私もそれに抵抗することはなかった。
一瞬、スクアーロの顔が頭に過ぎったが、すぐに消えた。



クーデタから一週間後、ホテルの会議室でボンゴレ・ファミリー幹部が
ヴァリアーの今後の進退を問う会議を設け、そこにも出席していた。
立たされているヴァリアーには一人一人後ろから銃が突きつけられており、
その中にスクアーロの姿もあった。







「今回の出来事はボンゴレ最大の反乱として歴史に残る。
 だが、それは裏の歴史として、ここにいる人間にしか真実は知らされない。
 ヴァリアー全員の処刑を望む者も多いが、私はそんなことをしたくない。
 それに、まだまだ若い者も多いからな…」









私はほとんど話を聞いていなかった。
ずっと上の空だった。
目の前に立つスクアーロを見たくなくて。
嘘だと思いたくて。
必死だった。








「……」
「ッ…はい」
「どう思うかの?」
「ぇ?」
「ヴァリアーは9代目の監理下におかれ、今後一切の活動を禁じようと思う」
「…意義はありません」
「…そうか。では、今後、このクーデタは『揺りかご』と名付け、一切の口外を禁ずる!!










連行されてくスクアーロ。
彼を少し見てから、私は窓の外を見た。
今日も綺麗な青空だった。








「…なぁ、姫。良かったのか?」
「…何が?」
「何がって…ボスが姫を会議に出させたのはスクアーロのガキを…」
「そうだね。私だったら、助けられたもんね」
「…分かってたのか?」
「うん…でもスクアーロは9代目を殺そうとしたザンザスの仲間でしょ?」
「ッ!…姫…」
「ザンザスも許さないけど…スクアーロも許さない…」









ガナッシュは私は優しく抱きしめてくれた。






















2013/10/16