スパイになって、みんなより先に全てを知るの。


ディーノも、スクアーロも9代目も…!!


私を馬鹿になんてさせないんだから…!










屋上物語 -変化-












「なぁ、。ほんとにスパイになるつもりか?」
「私に二言はないわ!」
「きっつい仕事だぞ?命、掛けれるのか?」
「…う、うん」
「やめとけやめとけ!女には無理だよ
「みんなのそーゆー態度が嫌いなのよ!ジャンニーイチ!だから私、スパイになる!!









ボンゴレ城の地下2階。
技術屋のジャンニーイチが武器の定期点検に来ていた。
昔から顔見知りのジャンニーイチは秘密主義だし、信頼できる。








「はー…9代目もとんだじゃじゃ馬娘を持ったもんだな」
「9代目も私には何も教えてくれなんだもん。」
「そりゃお前さんを…まぁ、いいや。
 んで、何がお望みだい?ボンゴレの姫さん
「その呼び方止めてよ。私、もう子供じゃない。」
「誰から見ても十分子供だよ」
煩いなぁー!
 あのね、ジャンニーイチ!私、銃がほしいの!
…は?









ジャンニーイチは潜っていた戦車の底から出てきた。
ゴーグルを外し、大きな目で私を覗き込む。









「銃?撃てんのか?」
「撃てるよー!ガナッシュに教えてもらった」
「はぁ…」








大きな溜息をついたジャンニーイチは持っていたスパナを机の上に置くと、
無造作に置いてあった銃を手に取り、それを私に投げて寄越した。









わっ!
「ほれ。そこの時計の12の数字に当ててみ」
…はぁっ!?
「一発で当てられたらお前専用の銃、こしらえてやるよ」









25mは離れているだろうと思われる武器庫の入口の横に時計はかかっていた。
何故あそこに時計があるのか、のいる場所からは時間なんて分かりもしない。
そんな場所の、それも12の数字に弾を、しかも一発で、当てられるはずがない。









25口径マグナム。ここにある中で一番小さな銃だが威力は十分だぞ」








煙草に火をつけながらジャンニーイチは言う。
私は背中に冷や汗が流れるのを感じた。

実を言うと、銃なんて持ったことがない。
ガナッシュに教えを請うたのは事実だが、教えてはくれなかった。
初めて持った銃は思ってたより重くて、冷たかった。

でもこれで、一人前に見てもらえるなら。
ディーノが何をしているのか知れるのなら。
スクアーロに置いてけぼりにされないのなら。

私は銃口を遠くの小さく見える時計らしきものに向け、引き金を引いた。









ズガンッ









ガッシャーンと時計が床に落ちる音がした。
私は肩で息をしながら銃を下ろした。
今まで緊張していたからか、上手く息ができない。

煙草を咥えながらジャンニーイチが入口のほうに歩いていく。
そして、時計を手に取るためにかがみ込んで、動かなくなった。








「ね、ねぇ、ジャンニーイチ。やっぱり私…」
。それ、やるよ」
「…え?」
「明日、また来い。お前用の特別なヤツ、作ってやるよ」
「それじゃあ…」
はんっ!お前、天才なんじゃねーか」








スッと手渡された時計の文字盤。
12の数字のところだけに穴が開いていた。










※ ※ ※ ※









貰った銃を紙袋に入れ、私は地下から出た。
玄関にはいつも使用人がズラッと並んでいるのに今はいなかった。
それに、何故か寒かった。
気温が低いわけじゃないのに、悪寒が走ったのだ。

ザッザッと絨毯を歩く音が二階から聞こえ、ふと螺旋階段の上を見た。
大きな窓から差す光のせいで顔は見えないが、それが怖い人だと言うことは分かった。

一瞬で身体の自由が効かなくなった。
後ろに下がりたくても下がれない。
抱える紙袋を力いっぱい握っていた。










「誰だ、貴様」
「あ、あの…」
「この城に女が住んでんのか」
「…っ…ぇっと…あの…」
ザンザス!早く行きなさい」
「ちっ…じじい…」









二階から9代目の声が聞こえた。
9代目の客人だったらしい。
私は小刻みに震えながらもそこから動くことができなかった。
ザンザスと呼ばれた男が私の目の前に立ったとき、ようやく顔が見えた。

冷たく、恐ろしい目をしていた。








「…名は何だ…」
「……」
「…貴様が…じじいに可愛がられてる俺の妹かぁ!」
「ぇ…」
「はん!じじいには何も聞かされてないみたいだな!
 俺はザンザス!お前の義兄であり、次期ボンゴレ]世だ
「…」









はーっはっはっはっ!という高笑いとともにザンザスは城から出て行った。
その後ろには私のよく知っている人物が付いていっていた。









ス、スク…?
「…
「ねぇ、スク。何してんの?」








動け、と命じて動いた右腕は彼の左腕を掴んでいた。
一瞬、時が止まったかのように静寂が私たちを包んだが、それも長くは続かなかった。








「離せ」
「嫌…何してんのか答えてよ」
離せって言ってんだろーが!
ッ!








彼の大声に私は驚き、その手を話した。
外に消えて行く彼の背中は、とても遠くに感じた。




















2013/10/11