翌日、私が学校に行くと、ディーノの席がなくなっていた。









「ねぇ、ディーノの席、どうしたの?」
「昨日、急に転校しちゃったんです。さん、いませんでしたっけ?」
「…」








ディーノは私に何も告げずに転校した。
どういう事情があったのかは分からないが、きっと私の思い込みに愛想が尽きたのだろう。








ディーノはきっと、私のことが好きなのよ











屋上物語

-歪(ひず)み-













「…」
「ヴオォォイ、あのへなちょこ、どこ行ったんだ?」
「スクアーロ、おはよ。転校したって」
はぁ!?
「昨日、急にだって」
「キャバッローネも最近不安定らしいからな」
「…そうなの?」
「お前、知らないのか?」
「うん」
「…じゃあ知らない方がいいんじゃね」
「えー!なんでよ!」
「知らねぇよ!自分で調べよ!」
ケチ!









スクアーロはそれだけ言うと自分の教室に帰って行った。
私たちが付き合い始めたという噂は瞬く間に学校中に広がっていった。
スクアーロも結構女子に人気があったらしい。

そう言えば、毎年バレンタインデーにはトラックに積むほどのお菓子や花が送られていたのを思い出した。
まぁ、全部私が食べたんだけど。
噂が広がるとともに、ディーノのことは忘れ去られていった。
ディーノは女子には人気があったのだが、なんせ泣き虫でへなちょこだったから
いじめれっ子だったのだ。









「やっぱり美男美女が付き合うのよ。どこの世界でもそうよねー」
「ていうか、パパがゴッド・ファーザーで自分も美人なんて、悪いところないじゃない。」








そんな陰口も聞こえ始めた頃、学校は夏休みに入ろうとしていた。













「ねぇ、スク!海行こうよ」
「悪い。夏休みは無理だ」
「全部無理なの?」
「あぁ」
「一日くらい、いいじゃない。私、暇なんだけど」
俺は仕事だ
「…」









夏休み前くらいからスクアーロは急に忙しくなった。
それに…

少し、恐くなった。

何かしてるのは知ってたけど、私には一切教えてはくれなかった。









「ねぇ9代目、スクアーロは何してるの?」
「ん?お前さんには関係ないよ」
「教えてくれてもいいじゃん!」
「はっはっはっ!女の子は知らないほうがいい」
もー!!









夕食のときに聞いても誰も教えてはくれなかった。
みんな私をはぐらかした。
それがとても嫌だった。
仲間ハズレにされているような気がして。
馬鹿にされているような気がして。
だから私は決めたの。







スパイになるって。




















2013/10/10