バタンッと静かに扉が閉まったあとも、ディーノは扉を見つめていた。
屋上物語
-蟠(わだかま)り-
「はぁぁぁあぁ〜〜ッ」
「ちゃおっス!」
「いでっ!リ、リボーン…」
「授業、サボっただろ」
「うッ!ごめっ…」
『謝んなッ!』
「…ったく…の真似、するなよ」
口を尖らせながらの真似をするリボーンを横目で見ながら
ディーノはまた、溜息を付いた。
リボーンはそんなディーノを見て、また頭を引っぱたいた。
「イタッ!だから叩くなって!」
「のこと、好きだったんだろ?」
「…うっ…べ、別に…そんな…わけじゃ…」
「バレバレだ」
「…俺みたいなやつ、どーせ無理なんだよ」
「一昨日、に告白したとスクアーロに言われ、焦ったが、
自分では何もできないと思うと、スクアーロの名前がふと出てきてしまった。
それがちょうとと話している最中だったから、に愛想を尽かされた」
「全部知ってんじゃねーか!!」
「まぁな。じゃあ、行くぞ。ディーノ」
「へ?どこに?」
「9代目ボスのお達しだ。転校だぞ」
「はぁぁああぁぁ!?」
※ ※ ※ ※
ランチタイム終了15分前。
私は自分の椅子に座ってボーっとしていた。
教室にはすでに昼食を終えた者が何名か帰って来ていた。
ボーっとしていたからか、目の前にスクアーロが立っていることさえ、気付かなかった。
「ヴぉぉい、!」
「わっ!ビックリした…スクアーロ」
「何ボーっとしてんだ」
「…別に…」
「今日、映画、行くぞ」
「うん」
「迎えに来るから」
「うん」
「…」
返事も上の空で私はスクアーロを見た。
いつものようにムスっとした顔つきで私を見ていた。
「な、何よ…」
「俺と付き合う気になったのか?」
「そうだったら悪い?」
「…別に」
珍しくキョトンとしているスクアーロを上目遣いで見つめた。
「私を振り向かせてみなさいよね」
「…どんだけ上からなんだよ」
「悪い?」
「…悪くねぇ」
「でしょ」
次、数学サボるから。と一言、スクアーロに告げると、教室から出ようとした。
「行くぞ」
「それ、私の荷物。帰るの?」
「サボんだろ?」
「…ワルだねぇ、スクアーロさん」
「お前ほどじゃねーよ」
あっそ。と言いながらも笑顔でスクアーロの後を付いていった。
ナポリの中心地は日差しがキツい上に人が多かった。
漁業関係の人間、ファッション関係の人間、そしてマフィア関係の人間。
私たちの顔は割れているだろうが、誰も手出しはしない。
それはバックがゴット・ファーザーたるボンゴレ9世だからだ。
「ねぇ、あそこのジェラート食べようよ」
「今、メシ食ったばっかだろーが。太んぞ」
「そんなの別腹よ!付き合った記念だからいいの!」
「…なんだよ、それ」
ナポリで有名なジェラート屋さん。
私はそこでいつもリモーネを頼む。
いつも決まってリモーネ。
別に理由はないけど、冷たくて爽やかで、とにかく好き。
「お!!久しぶりだな」
「あはは。昨日も来たけどね」
「そうだっけ?リモーネか?」
「うん。おじさん、ちょっと多めで」
「オーケ!」
私がお金を出そうとすると、ワンテンポ早くに誰かが小銭を出した。
それがスクアーロだって気づくのに、そう遅くはなかった。
「記念、だろ。おごってやるよ」
「わー、サンキュ!」
「ん?なになに?何記念だ?」
「おじさん、聞きたい?」
「勿論」
「付き合った記念日」
「おぉ!それはめでたいな!
そうと分ければワンサイズ大きいので入れてやるよ!
二人で分けな!」
「やった!ありがと!」
持ってたカップを大きいのに変えながらおじさんが言った。
「いやー、でも驚いたぜ、」
「何が?」
「お前さんはディーノ坊ちゃんと付き合うと思ってたけどな」
「…そう?」
「ま、俺の勘は当たんないし。
スクアーロも中々のいい男だと思うぜ?」
「でしょ」
私は内心ヒヤヒヤだった。
既にベンチに腰掛けているスクアーロに聞こえていたらどうしようという気持ちがあったから。
でも気付いてないようだったから、私はそっと胸をなで下ろした。
「ほら、スプーン、二つだろ?」
「ありがと!おじさん!」
「また来いよな。二人で」
「勿論!おじさんの作るリモーネ、最高だから」
「おぉ!その褒め言葉、一生覚えとくよ」
「あはは!」
そう言ってスクアーロが待つベンチに走っていった。
しかし、おじさんの一言で心の何処かに一つ、小さな石がコロンと落ちたことに私は気付かないふりをした。
2013.10.08