「いらっしゃいませー!」
「コレとコレと…あとコレの花束を4つ、お願いします」











La Traviata  78







花屋から大きな花束を4つも持った女性は、そのままタクシーに乗り込むと、並盛中央病院へと向かった。











「すいません…」
「はい、どうされましたか?」
「あの、ここにイタリア人の入院患者が数人、いると思うんですが…」
「あぁ…あの賑やかな団体さんね。バスツアー中に交通事故だなんて、気の毒よね
「は、はは…」
「ディーノさんは202号室、バジルさんは204号室ね。
 あとザンザスさんは一番奥の208号室で…スクアーロさんは…
「え…今、なんて…」
「スクアーロさんですよ、綺麗な銀髪の…彼は206…あぁ、ちょっと!!!









私は、看護師の話を最後まで聞かずに階段を駆け上がった。
カツカツとヒールの音が廊下に響く。
ガラガラっと病室のドアを勢いよく開けた。








スク…っ!?
誰だぁあ!?オレは今…な、…」
スク!!!










私は彼に飛びついた。いでででっと声が聞こえるが、構いはしない。
彼の身体は体温が通った、温かい身体だった。








「生きてる…!!生きてる!!
「なんだ、生きてて悪いかぁ?」
悪くない!!馬鹿!!!心配させないでよ!!
「お前こそ、ボスに心配かけさせやがって…」
「う…」
「さっさと行って来い…ご機嫌斜めでなぁ、食事すら取ってねぇらしい」
「はいはい。全く、世話の焼ける兄さんだこと。あ、そうだ、これ…あげる」
「なんだぁ?」
「トルコキキョウの花…これからもよろしくねって意味で。」
「あぁ」









私はそれだけいうと、スクアーロの病室から出た。
あのとき、見せられた映像では死んだと思うしかなかった。
生きていたことに今、心底ホッとしている。
次は、ザンザスね。








「ねぇ〜、ボス〜。食べないと治るのも治らないわよ〜」
「ふん!」
「ふーん…病院でフォアグラなんて、超贅沢!
な!?
「あ、じゃな〜い!元気?」
「ルッス、貸して。私が食べさせてあげるから」
「ま!良かったわね〜、ボス」
「あ、おい!」








あーん、と私はフォアグラをザンザスの口に突っ込んだ。
彼のために持ってきたホワイトレースフラワーの花束をルッスに渡した。








「よかったね、腕。くっついて」
「…」
「9代目が、治ったら一度戻ってこいって。また旅行行こうって」
「…」
「ねぇ、聞いてる?」
「お前の呪いは、解けたのかよ…」
「え?」
「不死身じゃなくなったのかって聞いてんだよ」
「あぁ…チェッカーフェイスの話では、ジョットの時計はおしゃぶりと共にバミューダの夜の炎によって軸の役割を果たしてるらしいわ。
 これで私の…いや、お母様から受け継いだ運命は終わり。普通の人間になったってことね」
「…良かったな」
「…え?」
「良かったなっていってんだよ」









私は一瞬、目を見開いたが、すぐに微笑み返し、ザンザスの頬に軽くキスをした。








なっ!?
「じゃあね、兄さん。まだ、ディーノのところに行ってないの!」
「…ふん!」









そして私は、ようやくディーノの病室、202号室にたどり着いた。
ガラガラっと開けると、ディーノがこちらを振り向いた。











「誰だ?」
「私、よ」
?はは、ひまわりで見えなかった」
「大きなひまわりがね、売ってたから。調子はどう?」
「オレは別に。お前こそ、無茶しやがって」
「え、知ってんの?」
「リボーンから聞いた」
「うわー、おしゃべりだな…リボーンめ」
「最後、オレへの言葉をツナに頼んだらしいな」
「うっ…」
「自分で言おうとは思わなかったのかよ…」
「これ以上、あなたに迷惑かけたくなかったのよ…
 それに!あなた、怪我して動けなかったじゃない」
「う…」
「おあいこよ!」









私は彼の唇に軽くキスをして、ひまわりを窓際の花瓶に生けた。









「それに、私の呪い?も解けたし」
「え?」
「もう不死身じゃないし、時計の守護からも開放された。やっと、一人の人間になれた…」









ベッドに腰掛け、ディーノの頬を撫でた。








「ごめんね、心配かけて…」
…」
「さて!あとは結婚かなぁ〜!
…は?
「だって、これで一件落着。ボンゴレ10代目もツナで決まり。ザンザスとも仲直りした。
 あとは結婚だけ!」
「ちょ、おい…!」
「え、してくれないの?私と結婚…









しゅんとして、俯くと、上からはぁ〜というため息が聞こえた。









「お前なぁ〜、場所とか、雰囲気とかどうでもいいわけ?」
「…あ…」
「ほんとお前ってやつは…」








ディーノはベッドから起き上がると、私の前に膝をつき、私の右手を取った。








…今は指輪もなにも用意できてないが…
 俺と、結婚してくれませんか…?
…はい!!










2016/05/08