長い長い歴史の裏の話を、チェッカーフェイスはゆっくりと、でも確実に進めていった。
La Traviata 76
「我々の種族が、とうとう私とユニの先祖、そしての母だけになった。
3人だけではとても残りの石を制御することができなかった。
そこでさらに地球人の力を借りようと残りの石を分割して作ったのがボンゴレリングとマーレリングだ。
この2つはユニの先祖の提案によりおしゃぶりとは違い、脱着を可能とし、数を増やした分、一人の
装着者への不何を軽くすることに成功した。
そしてボンゴレリングはユニの先祖が選んだ自警団の青年家族が、マーレリングは彼女の家族が管理することとなった。
それ以降、私がトゥリニセッテの全てを監視する立場となり、おしゃぶりの継承時にのみ姿を現すことにした。」
「でも、今の話ではさんのお母さんは…」
「の母・リディアは私たちを裏切り、逃げ出したのだ」
「え!?」
「この残酷なシステムに唯一最初から最後まで反対したのがリディアだった。
彼女は石を分割する際に出た破片と共に、姿を消し、自らの命を絶った。という娘に運命を背負わせて…」
「違うわ、チェッカーフェイス」
「!?」
私は真っ直ぐ、チェッカーフェイスを見つめた。
「私の母・リディアは、貴方を裏切ったわけではない」
「な、なぜそう言い切れる!?」
「みたのよ、全てを…」
「全てを、だと…!?」
「リディアは…母はトゥリニセッテの最大の弱点、それこそが、私たちの種族だと気付いたの」
私は、時計を両手で包み、蓋を開けた。
針が反対回りに回り始め、数秒の後、12時をさした時点で止まった。
すると、辺りが急に光に包まれ、長い赤毛を靡かせた女性が現れた。
「リ、リディア…!」
『チェッカーフェイス…』
「あ、あれがさんの…」
「この時計は全てを視てきたから…ま、幻覚だけどね」
「リディア…!どうしてあの時…!」
『落ち着いて、チェッカーフェイス。今から全てを話すわ』
「…」
『あの日、ボンゴレリングとマーレリングを造った日、私は悟ったのよ。
こんなことをしても意味がないことを…』
「悟った?」
『セピアが未来を見る能力があるのなら、私は運命を見届ける義務がある。
その運命の歯車をかけ違えたのよ、私たちは。』
「どういう意味だ!?はっきり…」
『私たちは、石を制御するだけの種族…愛し合ってはいけなかったのよ』
「ッ!!」
『この美しい星のバランスを保つためだけの存在…だからこそ、並外れた能力・生命を得ていた。
私たちにはそれ以上に、何も望んではいけなかった。
だけど、私は…私たちは…』
「私は、君を愛してしまった…リディア…」
『…えぇ、決してしてはいけないことを、私たちはしてしまった。
私はセピアに言われたわ。未来が見えないと…
だから…だから私は貴方の元を去った。理由を言うと、私が去った意味がなくなるから何も言わずに…』
「セピアに…」
『彼女は全てが見えていた。私たちが犯した罪を償うためには、人柱をもう一つ、作らなければならない、と。
私は、石の破片でこの時計を作り、人柱となった…
そのすぐあと…ジェラルドに無理矢理結婚させられたんだけどね』
最後は軽く笑い流すリディアを見て、チェッカーフェイスは歯を食いしばった。
「私だけか…何も知らずに…生き続けていたのは…!」
『だからこそ、今までこの世界のバランスは保たれた…貴方のおかげよ』
「しかし…!この数百年…私は君を…憎み続けた!私の心を奪った君を…!」
『貴方には辛い思いをさせてしまったかもしれない。それでも私たち種族は、
このトゥリニセッテを守る存在であり続けなければならなかった。』
リディアは次に私の方を向いて微笑んだ。
『…』
「お母様…」
『貴女にまで、こんな運命を背負わせてしまって…本当にごめんなさい』
「ううん…大丈夫よ、謝らないで」
『現在と過去、貴女が誰かを愛することを学べたのなら、素晴らしいことだということを覚えておいて…
もしもこのあと…』
「大丈夫。もう覚悟は出来てるから」
『そろそろ時間ね…チェッカーフェイス…私は貴方を愛したことを後悔はしてません。
貴方と同じ時間を歩むことができて良かった…』
「リディア…!!」
光がなくなり、元の公園が目の前に現れた。
無言のチェッカーフェイスに私は言った。
「これが真実…」
「…真実を知ろうが知るまいが、アルコバレーノの世代交代は必要だ。
では、現アルコバレーノのおしゃぶりを返してもらおうか?」
「待ってくれ!!他のやり方があるはずだ!
現アルコバレーノを見殺しにしなくてもおしゃぶりを…トゥリニセッテを維持する方法が!!」
「あったらとっくにやっているさ。
リディアを失ってからのこの数百年、私は一人でその方法を探してきた。
だが見つからなかった。この方法が残された最後の手段なのだ。
それに、沢田綱吉君。君は現アルコバレーノの心配ばかりしているが、次期アルコバレーノの筆頭候補だぞ」
「その覚悟はできている」
「!!」
すると、公園の入口に何か大きな球体を持った老人が現れた。
「待たせたな 小僧」
「タルボじいさん!!」
2016/05/08