キキーッ

白のアルファロメオがとある城の前で止まった。










La Traviata  64








「あ、貴女様は…ッ!」
「喉渇いちゃったぁー。飲み物、持ってきて」
「かしこまりました!」








ギィッと大きな軋むドアを開けた。
そこは談話室で、火のついてない大きな暖炉の周りにはソファが無造作に置かれていた。









「なっ…!?
「チャオ、スク!あっつーい…まぁ、城の中はマシか」
「で。何しに来たんだぁ?」
「この前行った旅行の写真持ってきたの」
「写真だぁ??」
「そ!9代目とザンザスとモナコに行ったの。写真、見る?」








スクアーロの返事を聞く前にドサッと大量に写真を置いた。








「これはホテルのプライベートビーチ!
 ザンザスったらずーっと不機嫌そうな顔するから、ご飯に行ったの。
 そのあとはカジノでしょ〜?
 あ、そこでね、5000万ユーロくらい負けちゃった〜!
 でもね、ザンザスの奢りだったから、全然ダメージはないんだけどね。
 ここはねぇ…」







そんな話をしていると、ザンザスが奥の部屋から出てきた。
その後ろにはマーモンが付いて来ていた。







…?何してる」
「旅行の写真持ってきたの。見る?」
「ふんっ!」
「もう!素直じゃないんだから!」
「ねぇ、姫」
「…何、マーモン」
「頼みが、あるんだけど」
「ヤダ」
「まだ何も言ってないよ!」
「だって面倒そうなんだもん」
報酬は弾むよ!
「うー…痛いとこ突いてくるねぇ。
 私、この前買ったクルーザーのおかげで金欠なのよねぇ。
 よしっ!受けてあげましょう!







私は詳しい話を聞くことなくマーモンの頼みを受けることにした。
安堵の顔をしたマーモンに私を笑顔で手を出した。







「…何?」
前金、500万ユーロ
「…姫、酷いって言われない?」
「まぁ時々言われるかな」








その頃、他のアルコバレーノも代理人を確保し始めていた。








※    ※    ※






数日後、私はヴァリアー専用機に乗って日本に降り立った。
真っ黒い服の集団が空港に降り立ったことで空港内は騒然となっていたが、
その中に一人だけ女性がいることにも驚いているようだった。








「わぁ…一ヶ月ぶりだぁ」
、行くぞ」
「はーい。あ、これ、買っていい?好きなの」
「…勝手にしろ」
「やった!すいませーん、カードで」








その言葉にザンザスはピクっと反応した。
カードを店員に出すの隣に立つザンザス。
店員を怖がって顔が引きつっていた。







「おい、それ、俺のか?」
「うん」
「いつ盗った?」
「盗ったなんて、人聞きの悪い。借りたの!
 さ、行きましょ。これ、半分あげるから」
「…」
お兄ちゃん!
ッ…///
「ふふーん♪」







ザンザスの扱い方が段々分かってきたであった。









※    ※    ※









東京の繁華街。
見慣れた町並みだが、ヴァリアーの隊員と歩くのはまた新鮮である。









「あー!これ欲しかった靴!!本店にもなかったのに!
 ねぇ、スク、買ってw」
「はぁ!?自分で買えぇぇ!!」
「今金欠なんだってば。今日を逃せばもう見つからないかもしれない…」
う”…
「お願い!!」








そんなこんなで紙袋がドンドン増えていく。
夕方になり、ホテルまでの帰り道、観光がてら歩くことになった。
鼻歌混じりの私に荷物持ちで不機嫌そうなスク。
長身の外国人グループってだけでも目立つのに、先頭を歩くザンザスが余計周囲を怖がらせていた。

私は周りをキョロキョロ見て歩いていると、知った金髪の男がこけているのが見えた。









「ディ、ディーノ!!?
!?」
何してるの!?
何してるんだ!?









私はヴァリアーのグループから離れ、こけたままのディーノに走り寄った。








「私は、ザンザスたちが日本に行くって言うから付いて来たの」
「おまっ…マーモンの代理がザンザスなんだぞ!?
「代理?なんの話?」
「…知らないのか?アルコバレーノの代理戦争の話…」
「知らな……あーッ!!!!








そう言えば、イタリアでマーモンの頼み事を高い報酬で引き受けたのを思い出した。
「あちゃ〜」と額に手を当てる私を見て、ディーノは何かを悟ったらしい。








「お前、マーモン側に付いたのか?」
「話、聞いてませんでした」
「はぁ〜…お前なぁ!
「ま!しょうがないわね」
「は!?」
「今回は敵同士。恨みっこなしでいきましょ
「ちょ、!?
「ご武運を♪」









それだけ言うとディーノに投げキッスをしてスクの隣に戻った。








「…跳ね馬かぁ?」
「うん。なんか代理がどうとかって言ってたけど…
 私たちってマーモンの代理なの?」
「お前、知らないで契約したのかぁ!?」
「うっさいな!」







スクに一発、蹴りを入れながら考えた。







えらいことしちゃったかもね…














2014/03/24