城の別室で手当を受ける私。
その横には心配そうに私を見つめるディーノがいた。










La Traviata  57








…大丈夫か?」
「…血もそんなに出てないし、大丈夫」
「じゃあ…シモンファミリーについては、どうだ?」
「…」








部屋に連れて行かれる前、私はタルボに頼み込んでいた。









『タルボ、私も連れて行って』
『何故じゃ?』
『それはジョットとジョットの守護者リングなの。最後まで…』
いかん
『どうしてですか』
『これはワシが作ったリングじゃ。最後まで面倒を見るのはわしじゃ』
でも…ッ!
よ。これはお主でもどうにもできん。
 シモンの誤解を解くためにお主に出来ることは一つじゃ…』
『…』








私は顔を上げ、ディーノを見た。








「…私もあんまり知らないの…
 ジョットは抗争の話になると私をその話しら遠ざけたから…」
「そうか…」
「でも、ジョットもコザァートもそんな人じゃない」
「……」







すると、隣の部屋から溢れ出る炎が感じられた。
私たちは急いで、部屋を飛び出し、隣の部屋のドアを開けた。
そこには新しいボンゴレリングがニューバージョンとなってツナたちに届けられていた。









バージョン…イクス?
さん…!怪我が大丈夫なんですか!?」
「ツナ…そのリング…」
「新しいリングです。
 あ…すいません…一世の残した形とは随分違うようになっちゃって…」
「…いいのよ。
 形なんて関係ないわ…魂さえあれば」

9代目!!
 シモンアジトの場所の目星がつきました!!









そう言って部屋に入ってきたガナッシュ。
9代目はツナ達を連れて会議室へ向かった。







9代目…!
は休んでいなさい」
「でも…ッ!」
これはお前に対処できることではない
「!」








閉まるドアを無言で見つめていた私の肩をディーノが抱き寄せてくれた。
そのとき、ポタっと何かが床に落ちた。
それが自分の涙であるということに、気づくまで少々時間がかかった。
ディーノがハンカチを私に差し出してくれた。








「これ、使え」
「…え?」
「涙」
「…あ…」
「悲しいか」
「…ジョットとコザァートってね、凄く似てたの。
 同じように貧しい人に見方して、街を愛して…
 ジョットに自警団創設を勧めたのもコザァートなのよ」









昔のことを思い出して笑う私。
そんな話に興味を持ったのか、ディーノは真剣な顔で私を見た。







「どうしたの?」
「その過去…詳しく話してくれないか?」
「え?いいけど…」







そうして私は、過去の話をディーノに語り始めた。









※   ※   ※










19世紀、南イタリア。
小さな街の大きな屋敷で私は生まれた。
その街では私の父であるジェラルド・が金にモノを言わせていた。
街の民は税金を収めるために働き、貧しかった。
それでも街の民は笑顔を絶やさず、毎日を暮らしていた。
ただ、家の者を見たときだけは目の色を変えるのだった。








「おい、あれ…家の使用人だぜ?」
「使用人は関係ねーだろ」
「いやいや。買い出しってことは金、持ってんだろうーが!」








使用人が襲われることなんてよくあったし、
私自身も、小さい頃から屋敷の庭以外の外の世界を知らなかった。








「ねぇ、お母様?どうして外に出てはダメなの?」
「そうねぇ…貴女が可愛いからかしら」
「えー?」
「お父様は貴女を誰にも渡したくないのよ」
「えー?本当?」
「本当よ?でもね、外には色々なものがあるわ。
 まだ貴女の見たことのないものがいっぱい…いつか、外に出られるといいわね」
「うん!」








そんな母も私が10歳の頃、死んだ。
原因はうつ病らしかった。
閉鎖された空間で過ごしていたからだろうか。
しかし、母が死んでも父はあまりダメージを受けていないようだった。
そんな父を見て、私は嫌気がさした。
母を死なせたのは父だと思った。
私もいつか、母と同じように死ぬのだろうか、とも思った。
だからこそ、屋敷を抜け出そうと思ったのだ。








14歳になったとある晴れた朝、私は屋敷の裏口から外に出た。
帽子を深く被り、ある程度の金と服を持って。
















2014/02/11