「ねぇ、このドレス、貴女たちが用意したの?」
La Traviata 54
継承式当日、私は城の一室で服を着替えていた。
使用人にあれやこれや飾り付けされ、ドレスまで着せられた。
初めて着るドレスのデザインに少し戸惑った。
とても大胆に、背中が開いていたからだ。
「いいえ…ザンザス様からのお届けものです」
「…へ?ザンザス…?」
私はそれを聞くとレモンイエローのドレスを見て微笑んだ。
準備が終わると、庭に出た。
窓からツナたちが見えたからだ。
「ツナっ!」
「へ?あ、…さん!?///」
「ん?どした?」
「その…綺麗、ですね」
「ありがと!」
ニコッと笑顔で返したがツナの顔から緊張は消えなかった。
昨夜の出来事は知っている。
幻覚で作った山本。
普通の人間なら違和感さえないだろう。
そんな事を思っていると、後ろからディーノの声がした。
「元気か 弟分!!」
「ディーノさん!」
ディーノを見て周りの女が顔を赤くするのが見えた。
それを見てちょっとイラっときた私はディーノの頬にキスをした。
「お、おい、!///」
「だって他の女にディーノは私のだって知らせとかないと!」
「でもよぉ、ツナたちの前だぜ?」
「いいの!ね、ツナ!」
「あ、はぁ///」
私はディーノの腕に抱きついた。
「未来での記憶はユニから授かった。
またいつか、ゆっくり話そうぜ」
「はいっ」
するとバリバリバリバリッというヘリコプターの轟音と共にそれにも負けない
「う”お”ぉぉぉい」という大声が聞こえてきた。
「久しぶりでもねぇかぁ!!カス共ォ!!」
会場中が騒然とする。
ボンゴレの超新鋭暗殺部隊ヴァリアーはマフィア界でも有名だった。
「相変わらずだな、スクアーロ。
ザンザスは…」
「ウチのボスは欠席だぁ!!来るわきゃねぇ!!」
「えーッ!!!」
一番に声を発したのは私だった。
ドレスの裾を持ちスクアーロの元に走っていく。
その途中、高いヒールが何かに引っかかり、こけそうになった。
「わっ!」
「おい、!」
パッと私を抱きとめてくれたスクアーロ。
彼の顔がちょっと赤いような気がしたが、そこには触れないでおくことにした。
「ありがと!
ていうか!なんでザンザス来ないの!?」
「だからぁ、来るわきゃねーだろ!」
「私も招待状送ったのになぁー。
この継承式後に9代目とザンザスと一緒に旅行に行こうと思って」
残念だなぁ、と頬を膨らませているとスクアーロがスーツの内ポケットから何やら紙切れを取り出し、私に差し出した。
「ボスさんからの預かりもんだぁ」
「ん?」
その紙切れには、一言、「直接行く」とだけ書かれていた。
「ふふ!」
「なんだぁ、気持ち悪ぃ」
「な!スク!私のドレス姿、見たくなかったの!?じゃー、見るな!!」
「はぁ!?」
ディーノとスクアーロがツナを連れて脇に外れているとき、後ろから誰かの声がした。
「もしかして貴女は…ボンゴレの姫、ですか?」
「へ?」
「私、トラッド6のボスのジョージと申します」
「あぁ…アメリカからはるばる…ありがとうございます。
私が・です」
私が手を差し出すと、彼は私の手の甲にキスをした。
「こんな美しい姫がイタリアにいるなんて…我々もヨーロッパに進出しようかな」
「あら。お上手ですね」
「どうです?向こうでゆっくり…」
「はい、ストップ」
「?」
「わ、ディーノ」
「俺の女だぜ。」
「君は、キャバッローネのボス…もしかして…?」
「そうだ。だから手ぇ出すな。行くぞ、」
「へ、あ、はい」
そう言って私の腕を掴んで城の中に入っていくディーノ。
腕を掴む力を強すぎて私は足を止めた。
「ちょ…ディーノ…痛い…」
「あ、すまん」
「もう。ちょっと話してただけじゃん。
トラッド6っていったら北米一よ?仲良くしとかないと」
「でもあいつ、絶対下心あったぜ?」
「そんなのわかんないじゃーん。かっこよかったし」
「…オレの前でそんなこという?」
「ごめんごめん!そんなのディーノが一番に決まってんじゃん」
「っていうかお前、山本のこと知ってんじゃね?」
「へ?あぁ…知ってるけど。内緒」
「な!?まぁ、ワケありか」
「まぁね」
「ところで、そのドレスどうした?」
「貰った」
「誰に!?」
「…ザンザス」
「…はぁ!?」
「だから来ると思ったんだけど。やっぱ来ないよねぇ」
それだけ言うと、私はまたディーノの頬に軽くキスをした。
「じゃあね。私、9代目の隣にいるから」
「おぅ」
2014/02/09