並盛の地下。
白く丸い装置。
私はその前に立っていた。
La Traviata 51
「この中に、未来の私がいるんだぁ」
「そうだな」
「ディーノ!」
「もうすぐ過去のお前とお別れだ」
「いーじゃん。未来の私が戻ってくるんだし」
「はは!」
「だってあんた、パパでしょ?会いたくないの?私の子供に」
「そりゃ、会いたいさ。半年近く会ってないんだからな」
「邪魔者はさっさと帰りますぅ」
「お、おい!!」
「ふふ!過去の私は扱いにくいでしょ?子供で」
「なっ…」
「10年で変われるのかなぁー。
ディーノはおじさんだし、スクもおじさんだったし、ザンザスもおじさんだったし」
「おじさんって…お前なぁ…」
「でも中々おじさんもいいなって思えたよ。過去でおじさんに言ってみようかな」
「な!?それ、どういう意味だ!?」
少し焦るディーノの頬にチュッとキスをした。
「10年前の私の唇、ぷるっぷるでしょ?」
「…はぁ!?」
「未来の私に言っといて!過去の私のほうが良かったって!!」
そう言って私たちは過去へ帰った。
※ ※ ※
「ん…」
「ママ!」
「!」
私はゆっくり目を開けた。
視界には大きなクリクリとした目が見え、「ふふ」と笑ってしまった。
「ロベルト…元気?」
「うん!ママは?」
「ママも元気。パパにチューした?」
「うん!」
元気に頷く息子の頬にキスをし、次にディーノの唇にキスをした。
「どうだった?過去の私は」
「俺も歳取ったんだなぁって思った」
「でしょ?
あの頃は元気だったなぁーって思うもん」
「ほんと、よく俺も付いていってたよ」
「あはは!これからもずっと一緒にいてね」
「当たり前だ」
※ ※ ※
「わっ!びっくり…したぁ!!」
「ん?、どうしたんだ?」
「チェザーレ!!何してんの!?」
「は?お前さんが時計を取りに来たっていうから」
「時計?
あ、あぁ…そう!そうなの!!ありがと!!」
「は!?」
チェザーレから時計をひったくるようにして貰い受けると、
そのまま勢いよく店から飛び出した。
バッグをあさり、携帯を取り出す。
プルルルル…
『なんだ??』
「ディーノ!!!迎えに来て!!!!」
『はぁ?』
「いいから!!」
興奮したような、それでいて泣きそうな声でディーノに訴えた。
ディーノは渋々というような感じで、数十分後、私を迎えに来てくれた。
赤いフェラーリが路上に止まる。
ディーノが出てきた瞬間、私は彼に飛びつき、キスをした。
「わ!!!どうしたんだよ!!」
「おじさん臭くない!」
「はぁ!?」
「ふふ!」
「なんだよ、急に…」
「ねね!これからは私が香水選んであげるから!」
「もう、訳分かんねぇ」
翌日、私がディーノの城でコーヒーを飲んでいると、寝起きのディーノがやってきた。
「あ、おはよー」
「おっす…」
「…どした?」
「別に」
「悪い夢でも見た?」
「…お前、未来行ってたのか?」
「…あー。うん。」
「じゃあ夢のことは全部本当なんだな」
「…夢で見たの?」
「あぁ。大空のアルコバレーノが見せてくれた」
「ユニが…」
私の前に座りコーヒーをすするディーノ。
そんな彼を私は真っ直ぐに見つめた。
「こんな私でも、好きでいてくれる?」
「…」
「だって、200年前ジョットの奥さんだったんだよ?
自殺したんだよ?
今のボンゴレの柵(しがらみ)作ったの私なんだよ?」
「それがどーした。」
「!」
「一世も言っていたが今のお前は200年前とは違う。
俺のことが好きなんだろう?」
「…バカ」
「じゃあいーじゃねーか。
お前は俺が守るよ」
それだけ言って照れたのか、新聞で顔を隠してしまったディーノ。
私は満面の笑みでディーノを見た。
「ディーノ!」
「ん?」
「大好き!」
「…おう」
ジョットへ…
私は今、とっても幸せです。
またいつか、時が巡って貴方に出会えることを願っています。
2014/02/08