「ほら、座れ」


そう言ってディーノは私をベッドまで連れて行ってくれた。









La Traviata  38








「この数ヵ月で随分髪が伸びたなと思ったんだ。
 それに肌もピチピチだ」
「…」
「なぁ、…」
「…あんたは随分おじさんになった」
「はは!そうだな。もう32だ」
「うわー…おじさんだー。おじさんの匂いが移るー
「わ!ヒドイな。このッ!
わっ!









ベッドの押し倒された私は上に乗るディーノをまじまじと見つめた。

未来に来て一週間。
その前までは毎日のように顔を見てたのに。
ここに来てからの一週間はとても長かった。
ずっとディーノにそばにいてほしかった。

そう思うと勝手にディーノの頬に手を伸ばしていた。









「何ですぐに来てくれなかったの?」
…」
「ずっと寂しかったんだから…
 あんたは昔っからいてほしい時にいないのよ」
「すまん…」
「いっつも謝って終わるし」
「う…」
「でも私を一番に考えてくれてるから、許す」








チュッとキスをして、そのまま身体を重ねた。





その夜、ディーノはずっと私の髪を撫でてくれていた。
ふと目を開けると、「ん?」と笑顔で私を見てくれた。









「私、また狙われてるみたいよ」
「…は?」
「リング争奪戦のときもそうだったけど…
 今度は時計だって。
 この時計ね、過去であんたにあげようと思って…
 未来の私はなんで砕いちゃったんだろうね」
…」
「200年前…こんなの作らなければ良かったのかな…」
「…」
「でもまず…みんなに私のこと…言わない…と…」








翌日、久々に熟睡した私は、朝食の場に顔を見せた。








さん!!おはようございますぅ!!」
「ハル、おはよう」
さん!!コーヒー、飲みますか?」
「京子…うん、ありがと」
さん!!」
「ツナ…あの、あとで皆に話があるんだけど…」
「へ?」







朝食後、修行の前に皆に談話室に集まってもらった。
京子やハルは戦いのことも知らないので席を外してもらっていた。
不安そうな顔の皆に話すのはすごく緊張したが、話さないでいるわけにもいかなかった。









「あの…リング争奪戦後話そうと思ってたんだけど、機会がなくて
 今話すことじゃないかもしれないんだけど…」
「おい、。さっさと話せよ」








ちょっとイラついた声で急かす隼人。
私は溜息を付いてから、みんなの前にあの時計を出した。









「これが白蘭の言ってた“ジョットの時計”。
 200年前、私がボンゴレ一世に送った時計よ」
「へぇ〜。さんが…って、え?
「は?何言ってんだ?」
「ははっ!さんも冗談言うんだな」
「…違うのよ。
 ほんとに私は200年前、ジョットと一緒にボンゴレを創設したの」








それを聞いた隼人は、もう我慢の限界だ、とばかりに机をバンッと蹴った。
ヒィッと小さく悲鳴をあげたランボをフゥ太がギュッと抱きしめる。








んなわけねーだろ!!人間が…人間がそんな長生きするわけねー!!
「そうよ!だって私は200年前、確かに死んだわ!自殺したもの
自…殺…?
「そう。私はあの日、確かに死んだわ。
 それなのに22年前、赤ん坊としてまたイタリアにいた。」
「あ、あの…それと時計ってどう関係が…?」
「私もよく分からないの。
 これはボンゴレファミリーとして組織されて5年目の記念日に私がジョットにプレゼントしたの。
 時計が時間を刻むように、一時一時を大事にしてほしかったから。」

「やってらんねーぜ…全く」
「隼人…」
「ジョットの時計だぁ?200年も前のやつがまだ動くってのかよ!」

「この時計には伝説があるのよ」
伝説?









途中でビアンキが口を挟んできた。
姉に向かってはあまり大声を出せない隼人は、再びドスッとソファに腰掛けた。








“ボンゴレの危機にその時計の針を12時に合わせると初代の守護者が現れる”っていうね」
「「…」」
「もしかして白蘭はそれを…」
「そう。信じてるわ。
 トゥリニセッテが現れた時点で伝説は実話だと確信したみたいね。
 歴代で最強のボンゴレ初代守護者の力を手に入れたら…」
周りに敵はいなくなる
「そうよ…だからと時計を白蘭の手に渡してはいけない」











全てを聞き終わったあと、全体の空気は動くことなく、シーンとしていた。
誰もが口を閉ざしたが、その静寂した空気を突き破ったのはリボーンだった。








「よし。修行行くか」
「リボーン!こんなときに…」
「いいか。全員で過去に帰るんだろ?
 も一緒にだ。
 そのためには修行しなきゃなんねーだろ」
「リボーン…」
「白蘭さえ倒せば帰れるんだ」
「…そうだね!よし、みんな修行だ!」
「ツナ…」
「大丈夫、さんは白蘭なんかに渡さないから!」










みんなが修行に行ったあと、頬に一筋の涙が流れた。
それを見たディーノがそっと拭ってくれた。








「良かったな、仲間がいて」
「うん…」
「じゃあオレも行くから…」
「どこに?」
「オレも家庭教師やるんだ」
「いってらっしゃい」
















2014/02/05