カチカチと秒針が時間を刻む音がする。










La Traviata  37







メローネ基地襲撃から早2日。
私はずっと部屋にいた。
所謂“引きこもり”というやつだ。
外ではバジルが過去からやってきたり、自分たちの家に行ったり、
少しばかりの“日常”を楽しんでいるようだった。







コンコン







部屋のドアをノックする音が聞こえた。
返事を躊躇っていると、ひょこっとツナの顔が現れた。








…さん?」
「あぁ、ツナか。どうぞ」
「真っ暗、ですね…」
「電気のスイッチ、そこだから」
「あ、はい…」









パチッと電気が付いた。
久々の明かりに目が眩んだが、ものの数秒で慣れた。
ドア近くでもそもそしているツナが面白くてクスッと笑ってしまったが、
すぐに「座りなよ」と声をかけた。









「ご飯、食べてますか?最近、顔見てないから…」
「うんー。食べてるよ」
大丈夫、ですか?
え?
「だって…こんなさん、初めて見たから…」
「あは!私、意外と根暗なんだよ。
 あとねー、浮き沈みが激しいって言うの?AB型だからかなぁ」
さん…









真っ直ぐに私を見つめるツナ。
そんな目を見ていると、何故かこんなことをしている自分が情けなくなって、
ギュッと自分の膝を抱えた。








「ほんとはさ、この状況を一つも理解してないんだよね。
 この部屋見てよ。
 子どもの服とかおもちゃとかいっぱいでさ、子どもの写真ばっか飾ってんの。
 未来の私はママしてるんだー、とかさ。
 一週間前まで殴り合いの喧嘩してたザンザスは兄貴面するしさ。
 ディーノは…音信不通だしさ。
 なんなの?これ…笑っちゃうよね
「…」
「おまけにこの時計…
 200年前にね、ジョットにあげた時計なの。
 大事な、大事なものよ…
 私がジョットと一緒にいたっていう証拠…
 なのにこんな戦いの景品みたいにされちゃって…」
「ちょ、ちょっと待ってください。
 200年前?さんがいた?
「…あれ?まだ知らなかったっけ?」
し、知りませんよぉ!!!








びっくりしたツナの顔を見てまた笑ってしまった。

この子はほんとに凄いなぁ…と今まで心にかかっていたモヤが少し晴れた気がした。





その頃、食堂ではみんなで夕食を囲んでいた。








「ってかさ、さんって不思議だよな」
「あ?何言ってんだ、山本」
「だってさ、リング争奪戦のときもだけど、いっつも重要なポジションっていうか…」
「そういえばそうだな!極限に謎だ!」
「俺が知ってるのっていうと、はボンゴレ一世の妻と同じ名前だってことくらいだな」
「「同じ名前?」」
「あぁ。ボンゴレ一世の妻もっていうんだ。歴史書で読んだ」
「でもよぉ、同じ名前くらいいるだろ」
「だから関係ねーと思うけどな」
「ふーん。あ”!了平さん、それオレのトンカツっすよ!
極限、食べたもの勝ちだ!!
それは違うっしょ!!
「ところで10代目は?」









その夜、凄まじい動物の叫び声がアジトに響いた。
飛び起きた私は急いでドアを開けた。
その瞬間、なにやら炎の塊が廊下をものすごい勢いで横切っていくのが見えた。








な、何!?
、部屋に戻ってろ!
は、はい!(え、ツナ?)」







それから静まるまでの数分、部屋の中で待っていた。
ザパーっと水がなだれ込む音まで聞こえ、その数十秒後、全ての音がピタッと止んだ。
部屋から出てみると水溜りの中にツナが怯えた顔で座っていた。








「ど、どうしたの…?」
「沢田殿のボックス兵器が…」
「ボックス兵器ってボンゴレ匣?」
「普通に炎を注入したつもりだったんだけど…」
「まさか…入江のやつが不良品を!?」

いいや 今のはツナが悪いぜ
「「「!?」」」
「あれはお前の匣兵器の本来の姿じゃない。
 特に大空の匣はデリケートなんだ」







後ろから声がしたと思って振り返ってみると、
馬に乗ったディーノがいた。
未来のディーノは大人っぽくなって、ちょっと大きくなったような気がした。
でも馬から落ちる姿を見ているとへなちょこさは全く消えてないんだな、と少し安心もした。








ディーノ…
ん?なんか…」








何も言わずディーノに抱きついた。
顔を見られたくなくて、彼の胸に顔をうずめた。

彼はそんな私を見て笑いながら髪を撫でてくれた。








「10年前のか?」







頷くことしかできない私をディーノはギュッと抱きしめてくれた。








「そうか…じゃあロベルトもいないんだな。
 よし。
 ツナ、重要な話は明日にしよう。
 今日は夜も遅いし、解散な」
「は、はい…」








ディーノは匣兵器だった馬を匣の中に入れると、
私の肩を抱いて部屋まで連れて行ってくれた。




















2014/02/02