アジトに増えていく仲間。
昨日は情報収集に行っていたビアンキとフゥ太が帰って来た。








La Traviata  32







「ねぇ、姉。話があるんだけど」
「え?」






重要な話が終わってみんなが散り散りになったあと、フゥ太は私を呼び止めた。







姉はユニってボス知ってる?」
「勿論。ジッリョネロの姫よね?
 以前パーティで会ったことがあるわ」
「彼女が白蘭に操られてる可能性が出てきた」
「…」
「彼女の特殊な能力が白蘭の目に止まったらしいんだよ」
「…大空の…アルコバレーノ…」
「そう。それで、姉も目を付けられてるって話を聞いたんだ」
「私?そんなわけ…」
「ボンゴレに伝わる『ジョットの時計』」
!?
「その伝説に白蘭が興味を示したらしい」
「…そうなの。
 でも残念ね、その時計、今はもう無いわ」
「ほんと?」
「えぇ。ボンゴレリングを砕く時に一緒に砕いてもらったの。
 あんなもの、ない方がいいのよ」
「そう…じゃあ一つは安全だね。」








それを聞いたあと、私はソファに座ったまま動けなかった。
白蘭に『ジョットの時計』を嗅ぎつけられた。
あれが白蘭の手に渡ったら、それこそ世界の終わりだ。
私は机の上に置いてあったメモ用紙とペンを取り出しペンを走らせた。

過去の私に知らせないと…

最後の行でペンを動かす手が止まった。
書く事はわかっているのに、動かなかった。
次の瞬間、私は暗闇に消えた。






ボンッ






がいたはずの場所にモクモクと煙が立つ。
煙が消えたあと、そこには何やら古い時計を持つ若いが現れた。







へ!?
 な、なにここーーーーッッッ!!???









叫び声にも似た声はアジト中に響き渡り、全員が再び応接室に舞い戻った。







「わ!?さん!?
「ツナ!?ここ何!?」
?」
ラル!?でかくなってる!?なんで!?」

「あ、さん、ロベルトちゃん、知りませんかぁ?」
「ハル!?ロベルトって誰!?








気持ちを落ち着けるハーブティーを飲みながらみんなの話を聞いてようやく現状が理解できてきた。
そんな私は大きな溜息を付き、自分の中で話を整理できるように口に出した。







「じゃあ、ここは9年10ヶ月後の日本で、ボンゴレは壊滅寸前。
 倒すべき相手は白蘭ではなく、眼鏡をかけた入江正一。
 ロベルトは私の息子で、10年後の私と一緒に消えちゃった。合ってる?」
「あぁ。合ってるぞ」
「えー。でも10年後は私もママしてるのかぁ〜。なんか信じられな…ん?何この紙…」
「お前の筆跡じゃないか?」
「うん。それにこのリングと箱、なにこれ?」
「10年後のも色々悟ってたらしいな」








達筆なのか雑なのか分からないイタリア語。
急いでいたのか、少し読みにくかった。







「えーっと…『10年前の私へ。まだまだお肌もピチピチで遊び盛りなんでしょうね』
 は?なにこれ、嫌味!?
 10年後の私ってこんな嫌味言うおばさんなの!?」








『10年前の私はこんな言い方をしたら嫌味って言うんでしょう?
 どう?10年後の日本は。凄く、刺激的だと思わない?
 10年前の私のために2つのリングと2つのボックスを置いていくわ。
 この時代にはこの2つがないと戦えないの。
 リングに炎を灯して、ボックスに注入するのよ。
 一つは武器、もう一つには大事な宝物をいれるもの。
 それを白蘭から守って。
 あと…』



そこで手紙は終わっていた。
手紙と10年後の私が置いていった土産を交互に見る。
ゴールドで装飾されたボックスとシルバーで装飾されたボックス。
それにイカつい形の二つのリング。
指にはめると何故かしっくり来た。








「ねぇ、リボーン。これに炎を灯すの?」
「あぁ。そうだぞ」
「どうやって?」
「覚悟だな」
「覚悟?」
「あぁ。理由は人によって違うが…」







リボーンが話している途中でボウッとリングに炎が灯った。
インディゴ色だ。







「インディゴ…?」
「この時代のは霧属性の炎を持ってたそうだぞ」
「じゃあこっちも…」







右手にはめたリングからもインディゴの炎が出ると思ったが、
それは検討違いだったらしい。







「…イエロー?」
「晴属性の炎だな…」
「あれ?私って霧じゃ…」
「稀に二つの波動を同時に出せるヤツもいる。
 だが…(こんなに純粋な…)」
「だが、何?」
「いや。開けて見たらどうだ?」
「そだね」








インディゴの炎が灯ったリングではシルバーのボックスが開いた。
その中にはボウガンが入っていた。







わぉ!ボウガン?
「8代目と同じ武器だな」
「ホントだ。オッターヴォみたいにかっこよく使えるかな?」
「さぁな。」
「何それ。じゃあこっちは…」








カチッと開いたゴールドのボックス。
中身は空で何も入ってはいなかった。







「なんだー。空っぽじゃん」
「…それは保存用のボックスだ」
「へぇ〜。何入れるの?」
「お前、さっきから何持ってるんだ?」
「え?これ?
 これはねぇ…あ」
「どうした?」
「きっとコレだ…」
「…」







ふと悟った。
これをこのボックスに入れて守れってことなんだ。



この


『ジョットの時計』を…









2014/01/31