私たちが日本に逃れて早3ヶ月。
最も恐ろしいことが起こってしまった。








La Traviata  30






ツナ、行っちゃダメよ
「大丈夫。さん。相手が提供してくれた場だ」
「だから危ないのよ!京子たちはどうするの!」
「京子は強い。ハルも。だから大丈夫だよ」
違うわ!それは貴方を…







私は溜息をついて椅子に座った。

真夜中の会議室。
そこにはボンゴレ10代目の守護者である山本、獄寺がいた。
笹川はイタリアに、雲雀や他の守護者は別の仕事で不在だった。








「隼人も何とか言って!無謀すきるわ!!」
「そうです10代目…一人で行くなんて…オレたちを護衛に…」
「いいや。一人で行く。そういう約束だ」
「ダメよ、ダメ…」
さん。心配しないで」







断固として決定を変えないツナ。
ツナたちが出て行ったあとも、私はその場に座ったままでいた。
日本に来てから体調が悪くなる一方だった。
しかし、その理由が既に分かっていた。

非73線(ノン・トゥリニセッテ)だ。

これはアルコバレーノにとって毒となる。
これのせいで古い友人たちが亡くなっていった。
リボーンも…
私には関係ないと思っていた。
なりそこないのラル・ミルチには関係あるらしいのだが、何故私が…

理由が分かってからツナは早急にノン・トゥリニセッテを遮断する装置を設置してくれた。
それでも外に出ると吐き気と目眩に襲われる。
ロベルトと一緒に外に出かけることもままならなかった。


色々な出来事が走馬灯のように映像として流れているとき、
ギィッと会議室のドアが開いた。







さん…?」
「ツナ…」
「もう2時ですよ」
「こんなときに眠れないわよ」
「ロベルトは寝てるのに…」
「そうね。お昼もいっぱい走り回ってたから…
 ねぇ、ツナ、やっぱり明日、行くの?」
「…そうですね」







私の隣に腰掛けるツナ。
そんな彼の方を向き、頬に触れた。







「ジョットと一緒…」
「へ?」
「ツナはジョットと一緒よ…仲間のためなら自分の命も惜しくない…」
さん?
「ツナももう知ってるでしょ?」
「はぁ…詳しくは知らないですけど」
「ディーノの前でジョットの話をしたら嫉妬するんだけど。
 そこまで決意が固いのなら…気を付けて」
「はい。」
「絶対、戻ってきてね。京子のためにも」
「ははッ!京子は強いですよ」
「そんなことないわ。あの子も頑張ってる。貴方に心配かけまいと…」








私はツナの頬にそっとキスをした。
イタリアではごく当たり前なスキンシップだが、ツナの顔は赤くなっていた。

そしてその翌日。
ツナが出て行って、帰ってくることはなかった。
山本と獄寺はツナにバレないように護衛として後を付けて行ったが、
交渉することもなく心臓を打ち抜かれたそうだった。
それを聞いた私は、検討違いの山本と獄寺を責めた。








だから言ったじゃない!!
「「…」」
なんのために付いて行ったのよ!?
さん…すまん」
「ボスが死んだら…もう何も太刀打ちできない!!
 キャバッローネだって、もう手助けできない!!」

そんなことないぞ

「「「!!??」」」







聞き覚えのある、懐かしい声が足元から聞こえた。
私たち3人が下を見ると、ある人物が立っていた。








「「「リボーン!!!」」」
「ちゃおっス」

「なんで…死んだ…はずじゃ…」
「今日は何日だ?」
「6月…19日だけど…」
「じゃあ9年9ヶ月しか経ってないんだな」
「え…?」
「オレは10年バズーカで飛ばされたみてーだ」







訳が分からなかった私たちは、落ち着くためにリボーンを食堂に連れて行った。
ノン・トゥリニセッテ対策を万全に施し、4人分の熱いコーヒーを入れる。
すると昼寝から起きたロベルトがコーヒーの香りに気づき、食堂にやって来た。








「ままぁ〜」
「あぁ…起きた?」
「おやつ?」
「へ?あぁ、そうね。ちょっと待って…」
「まま、このひと、だれぇ?」
「リボーンおじさんよ。挨拶は?」
「こんにちわ」
「ちゃおっス、ロベルト」
「ぼくのなまえしってるの?」
「まぁな」








私はロベルトを抱きながら椅子に腰掛けた。








「9年前っていったらちょうど…」
「リング争奪戦のすぐあとだ」
ボンゴレリングさえあれば…ッ!
「オレの予想だと、もうすぐボンゴレリングがやって来る」
「え?それってどういう…」
「さぁな。ツナはどこだ?」
「それが…」
「獄寺」
「なんスか。リボーンさん」
「ツナのとこに行け」
「へ?」
「何か感じるんだ。はここにいろよ。体調悪ぃんだろ?」
「なんで知って…」







リボーンの言いつけ通りアジトを出る獄寺。
ボーっとしていたからか、ロベルトが私を見つめていることに気付かなかった。








「ママ?」
「…へ?あぁ、ごめん。どしたの?」
「ツナおにいちゃんは?」
「え…」
「どこいったのぉ?」
「ちょっと仕事でね、今日は戻ってこないの」
「あしたもどってくる?」
「さぁー?ママには分かんないなぁ」
えー!かくれんぼするやくそくしてたのにー!!」







プンプンしながら食堂を歩き回るロベルト。
そんなことをしてもツナが来る訳もなく、途中で疲れて持ってきたぬいぐるみで遊び始めた。
去年ディーノに買ってもらったテディベアだ。
自分で「ジャン」という名前を付けて遊んでいた。







「ママがあそんでくれないからジャンとあそぼうねぇ
 あのね、もうちょっとでパパがくるんだよぉ
 はやくパパに会いたいなぁ
 ママもね、パパに会いたいんだってぇ
 でもね、これはジャンとぼくだけのひみつだよ?
 パパがいないときはね、ぼくがママをまもるんだぁ!
 だってね、ぼく、ボスになるんだから!
 ぼくがてきからママをまもるんだぁ!








本人は独り言を言っているつもりなのだろうが、同じ空間にいて聞こえないはずがない。
それを聞いて私は自然と笑みがこぼれた。







「あいつ、強いな」
「そりゃ、リボーン。私とディーノの子だもの。
 ちょっと弱虫だけど、きっと強い子になるわ」
















2014/01/29