時は流れ…9年6ヶ月後…









La Traviata  29







「ちょっ、おい!!ロベルト!!どこ行くんだ!?
ママーッ!!
「服着ろってば!!」
「ロベルト、お風呂上がったぁ?」
「パパね、おみずばしゃーってかけるんだよ!?」






小さな息子の髪を拭きながら「ふふっ」と笑う女性。
顔を上げると息子と同じような格好をした夫が出てきた。






「お疲れ」
「いやぁ、ホント疲れる」
「あとは私が寝かせるから」
「なぁ…」
「んー?」
「あとで話がある」
「…わかった」

「ママー?」
「あー、はいはい。ごめんね」







ロベルトはもうすぐ3歳になる。
私とディーノの間に出来た一人息子で、次のキャバッローネのボスだ。
本人もお遊びながらに分かってるらしく、ボスの真似事をして遊んでいる。
そんな彼が寝たあと、私たちはリビングでお茶を飲んでいた。








…今の現状、分かってるよな?」
「勿論よ。私を誰だと思ってるの?」
「ははっ!じゃあ話は早い…ロベルトを連れて日本へ行け」
「!」
「ここももう危険だ。」
「ディーノは…どうするの?」
「ファミリーを守らなきゃなんねぇからな、ひと段落したら、俺も向かう。
 日本にはツナがいるから安心だ」
でも…ッ!
「ロベルトはお前に任せたから。
 明日の朝、誰にも気付かれないように発て。
 必要なモノはトランクに詰めてある。あとは着替えと…」








最後まで言い終わる前に私は彼にキスをした。








「死なないで。」
「…はは!俺を誰だと思ってるんだ?」
「へなちょこディーノ…」
「なっ…」
でも優しいパパですごく強い…ボスよ
…」
「私からは連絡しない。待ってるから」
「あぁ」








翌日、私はロベルトを早く起こした。
寝惚け眼の息子に服を着せ、パンをくわえさせた。








「ままぁ…」
「んー?さ、これ背負って。お菓子入ってるからね」
「どこいくのぉ?」
「ツナお兄ちゃんのとこよ。京子お姉ちゃんもいるからね」
「パパもいっしょ?」
「パパはお仕事があるからあとで来るわ。さ、早く」








外に停めてあった車に乗り込む。
昨夜のうちにディーノが用意してあった車だ。
まだ日が昇らないうちに空港に付いた。
いつもはプライベードジェットを使うが今日は一般の飛行機を利用する。








「ママ!たかいねー!」
「そうね。静かにしててね」
「うん!」







久しぶりの飛行機にはしゃぐ彼を見ながら私は溜息を付いた。
これからきっと、苦労するとわかっていたから。









※    ※    ※









ツナおにいちゃーん!!
「へ?ロベルト?ってことは…」
「Chao!ツナ、久しぶり」
さん!!
「わお!大人っぽくなっちゃって。元気?」
「元気ですよ、一応」
「そだね。」







ツナはもう私より背が高い。
10年前から知ってる私にとって、彼の成長は驚きだらけだった。
それに段々ジョットに似てきているってことも。
まぁ、これはディーノには内緒だ。








「ツナおにいちゃん、あそぼー!」
「おぉ!でも先に家に行こうな」
「いえ?」
「あぁ。これからロベルトとママが住む家だよ」
「おにいちゃんもいっしょ?」
「あぁ」
「じゃあいくー!」








ロベルトがツナになついていることが唯一の救いだった。
これで長い間パパに会えないことで泣いたりはしないだろうから。

私は日本に着いた瞬間から少し調子が良くなかった。
目眩と吐き気が止まらない。
ツナに運転してもらい懐かしの並盛へ向かう。
短い間ではあったが、中学生となって潜り込んだ場所だ。








さん、大丈夫ですか?」
「えぇ…ちょっと吐き気と目眩がするだけだから」
「ディーノさんから話は聞いてます。もうさんたちの部屋はありますから」
「…え?」
「ディーノさん、さんたちのことを守ろうと必死ですから」
「いつからこうなると?」
「オレたちも定かじゃなかったですけど、半年前から言われてました」
「…そう」
「オレたちもさんとロベルトを全力で守りますから」
「ありがと。でも大丈夫。
 自分の身は自分で守るわ。ロベルトも。ママは強いんだから!」








ねー!」とロベルトと一緒に笑顔を作る。
そう言っているうちに車はとある有料パーキングに止まった。







「ここから歩きます。
 さん、霧のリングは持ってますか?」
「え?あ、あぁ…向こうを発つ前にディーノが渡してくれたわ」
「それがアジトへと通じるキーになります」
へぇ
さんは霧属性の炎を持ってるんですよね?」
「そうよ」
「そのリングに炎を灯してみてください」








ツナに言われるがままに炎にリングを灯す。
そうすると藍色の炎の道筋の先に頑丈なコンクリートのドアが現れた。








「他の人間には見えません。霧属性の炎保持者専用の入口です」
「すごーい…」
「さ、入りましょう。
 中を案内します」
「ぼくもいく!」
「あぁ。オレと一緒に行こうな」








日本のボンゴレのアジトも凄かったが、ここまで成長していたツナにも感動を隠せなかった。













2014/01/29