ッッッ!!!








La Traviata  27






急に肺に空気が入るのを感じ、咳き込んだ。
誰かが息をし易いように気道を確保してくれた。
うっすら目を開けると、そこには彼がいた。







ジョッ…ト…?
さんッ!
あぁ…ツナ…
「大丈夫ですか!?」
「…ありがと…助けてくれて…」








スッとツナの頬に触れた。
そして氷漬けにされたザンザスの方を見た。







「もうあれが溶けることは…ないよね…」
「はい」







自力で立ち上がってザンザスの方に歩いて行った。








「あんたは許されないことをした…この世で息をする資格なんてない…」


『ちょっとどけてくれる?姫』


!?
 マーモン!










マーモンのもつ六つのリング。
それが炎に包まれ、ザンザスを凍らせていた氷を溶かした。








「リングを…よこせ…」
「もっちろん!これはあんな亜流のニセモノじゃなくて
 9代目直系のボスにこそふさわしいからね」
「ベル…ダメよ、はめちゃ…」
「はっはーん!姫も往生際が悪いなぁー」
「違うわ。ザンザスは…」
「ま、どいつもこいつも新ボス誕生のために立会いごくろーさん」








そう言ってベルはザンザスの指に大空のリングをはめた。
カッとリングの中心が光ったと思うと、ザンザスをその光が包んだ。








力だ!!とめどなく力があふれやがる!!!
 これがボンゴレ後継者の証!!
 ついに!!ついに叶ったぞ!!これでオレはボンゴレ10代目に…

「違うわ…ザンザス…」
!!







次の瞬間、ザンザスは血を吐いてヨロけた。
それを私は受け止め、ゆっくり地面に下ろした。
ヴァリアーが次々と驚いて叫ぶ。






「どーしたんだ!?ボス!」
「バ…バカな!!まさか…!!」


…リングが…ザンザスの…血を…拒んだんだ…








ザンザスは彼を見つめるツナを睨んだ。
彼が口を開くたびに大量の血が滴る。







「さぞ…かし…いい気味だろうな!」
「ザンザス…喋っちゃダメ…」

「…そうだ。
 俺と老いぼれは…血なんて繋がっちゃいねぇ!!








一瞬にして辺りを包む静寂。
その理由が同情なのか驚きなのか、誰も分かるわけがなかった。
スクアーロが話すザンザスの過去にその場にいた全員が驚き、息を飲んだ。

その当時、私はザンザスと隔離されて育てられていたため、
ザンザスがどんな状況に置かれていたなど、知ることがなかった。








「…くだらねー…」

「9代目が…裏切られてもおまえを殺さなかったのは…
 最後までおまえを受け入れようとしていたからじゃないのか…?」
「…9代目は血も掟も関係なく誰よりもおまえを認めていたはずだよ。
 9代目はおまえのことを…本当の子どものように…」

るっせぇ!!
 気色悪い無償の愛など!クソの約にも立つか!!
 オレが欲しいのはボスの座だけだ!!
 カスはオレを崇めてりゃいい!!
 オレを讃えてりゃいい!!








「ぐぁっ」と血を吐くザンザスの肩を私は持った。







「だから…ダメって言ったじゃない」
「!」
「あんたはボスにはなれない…って」
「…リングの秘密、知ってたのか…」
「えぇ。リングの掟を決めた場にいたから」

ッッッ!!!!











ザンザスの怒声が夜空に響いた。
ランチアが乱入してきた第二戦も既に決着がついていた。
その終戦後の校庭にとって、その声は大きすぎた。
そして力も入らず、地面に伏したザンザスの横に、私は立った。










「ってめぇ!!何を知ってる!!??
「全てよ。全てを知ってる…」
「…」
「私は、あんたを許さないわ。
 でもきっと、9代目はあんたを許す。」
「ハンッ!じじぃは未だに俺の全てを分かってねぇ!!
「いいえ。分かってるから、あんたを10代目にしなかったのよ」
「っ!!てめぇに何が分かるってんだ!?あ!?
「分かるわよ。
 だって私は…だもの
「…認めるのか」
「えぇ」









その場にしゃがみ、私はザンザスの額に手を置いた。








「2代目にそっくりなザンザス…それで身を滅ぼさないことね」









それだけ言うと、私はその場を立ち去ろうとザンザスに背を向けた。
するとまた、後ろか大声が聞こえた。











ジョットの時計だぁ!!ッ!!

ジョットの時計はどこにあるッ!!??
「…なに、それ?」
「てめぇがジョットにやった時計だ!!
 あれさえあれば、ボンゴレは昔の力を取り戻す!!!
「…あんたが何を言ってるのか分からないし、
 私はそんな時計、見たことも聞いたことも、勿論、あるのかさえも知らない」
ッ!!てめぇは…だろぉ!!










最後の最後まで叫び続けるザンザス。
そんな彼を置いて、私はディーノの手を取った。
「行きましょ」と半ば急かしながら校庭を後にした。








「身体は…大丈夫なのか?」
「えぇ」
…」
「ん?」
「話がある…」
「…私も」














2014/01/29