『手術中』という文字にランプが付いて何時間が経つんだろう…










La Traviata  26








手を組み、祈り続ける。
時折、ディーノが肩を抱いてくれるが私の心が安らぐことはなかった。










「……少し休もう」
「…待つ」
…」
「いいの。9代目の顔を見るまで…」









カチッ









私が話している途中でランプが消え、ドアが開いた。
すぐさま駆け寄るが、勿論9代目に意識があるわけがない。
どれだけ声をかけても酸素マスクから息を吸う弱い音だけが聞こえる。

病室でずっと手を握っていると、夜が明けていることにさえも気がつかなかった。









…メシ、買ってきたぞ」
「ディーノ…」
「これ食べろ」
「いらない…」
「食べろ…今夜、また並中に行かなきゃなんねーだろ」
「ッ!
 こんなときによくそんなこと…ッ!
「お前は見なくちゃならないんだろ?」
「!」
「…お前は見なくちゃならない…だから連れて行く」
「…」









目の前に出された簡易のスープ。
食べる気になったときにはもう、それは冷めてしまっていた。

私が出発するまでに9代目の目が覚めることはなかった。
車の中で、私はか細い声でディーノに訪ねた。









「…誰に言われたの?」
「…」
「家光でしょ…?
 ホント、あの男だけは何考えてるのか分かんない…」
「なぁ、
「…」
「全部終わったら、話してくれよな」

「俺さ、なんでも受け入れる覚悟あるし」
「…」
「伊達にボスやってるわけじゃねーし、自分の女のことくらい…」
「…うん。ありがと」








校庭に着くと既にルールの説明を終えようとしていた。








「はっ!姫さんは遅れてもいいってわけか」
ザンザス…ッ!

様にはここから見ていていただきます」








チェルベッロに連れられた場所は赤外線センサーが設置されたボックス。
スイッチが入れられ、中から出ることはできなくなった。








様」
「何?こんなとこに閉じ込めて、まだ何か要求する気?」
「座ってらっしゃったほうが宜しいかと…」
「はぁ?何言って……ッ!?
「そのボックス内には特殊な機械が取り付けられており、約30分で酸素濃度が0%になるように設定されています」

てっめぇッ!!
「跳ね馬のディーノ、部外者の貴方が動くことで沢田綱吉側は負けと見なされます」
くっそ…!









※   ※   ※









ハァ…ハァ…ハァ…



自分の息が上がってきているのが分かった。
そろそろ酸素量が標高3000m級の山の上と同じくらいだろうか。
それを超えると目の前がぼやけて来て、きっと、気を失うだろう。







スクアーロ!!






意識が朦朧とする中で、バジルの叫び声が聞こえた方を見た。
そこには包帯に巻かれ、頭に銃を突きつけられたスクアーロが目に入った。
彼の頭に銃を突きつけている男の中にはディーノの姿もあった。







「雨戦の日、部下をB棟に忍び込ませていたんだ…山本を救う為にな。
 だが、水槽に落ちたのはスクアーロだった…
 かろうじて助け出したが瀕死の重体…
 なんとか腕の立つ医者とでかい設備のある病院を探して大手術だ」
「そ…そんな事…!」
「こいつにはなんとしても聞き出すべきことがあるからな」

「う”おぉぉい、跳ね馬ぁ…」
「…黙れ」
はどこだぁ?」
「お前には関係ない」







ふとスクアーロが私が監禁されたボックスのある方を見た。
私たちは数十秒間目を合わせて、そして目を伏せた。








「そういうことかぁ…
 跳ね馬、を殺したら…」
殺させねぇから黙っとけ!









ディーノの叫び声が私の遠くなった耳にも聞こえた。

そんな時、チカチカと何かが光ったように感じた。
薄らと目を開けると、そこには彼がいた。








ジョット……?














零地点突破 初代エディション…










懐かしい顔が見えた気がした。
そして私は、気を失った。













2014/01/29