ガッシャーン





下の階で窓ガラスの割る音がした。








La Traviata  24








スッと出てきたのは今まで見なかった雲雀恭弥。
私自身、彼と話をしたことはないが、強いという事実は知っていた。









「校内への不法親友及び校舎の破損。
 連帯責任でここにいる全員咬み殺すから…
 っていうか、君…」
「ん?私?」
「…どこかで会わなかった?」
「うーん。会ったことないと思うけど…」
「そう。君も校舎、壊したの?」
「違う違う。そっちの怖い顔の奴らが壊したの」








ピシッと人差し指でレヴィを差した。
そんな私を血の気の引いた顔で見つめるツナ。
「てへっ☆」と舌を出しながらウインクすると、余計に肩を落とした。


雲雀が暴れようとした矢先、山本が雲雀とヴァリアーの間に入った。







「そのロン毛はオレの相手なんだ。我慢してくれって」
「…邪魔する者は何人たりとも咬み殺す」
「やっべ!怒らせちまった!」
「ちゃおっス ヒバリ!」







リボーンの言葉を聞いて校舎を後にする雲雀。
リボーンは人を説得することが上手いとつくづく思う。
雲雀が消えてからそこにいた面々がよく知った声が聞こえてきた。







「あれ?恭弥のやつ、来なかったか?」
「この声…」
「よ!ツナ」
ディーノさん!!
「ひとしきり暴れて帰っていったぞ」
「やっぱり…あんたが雲雀の家庭教師だったんだ」
、身体は大丈夫か?」
「朝起きたらいないんだもん。大丈夫だと思ったから出て行ったんでしょ?」
ち、違うって!!








雲雀を連れて来たのはディーノだった。
ディーノは今まで、雲雀の家庭教師をしていて旅に出ていたのだ。








「山本」
「ん?なんスか、ディーノさん」
「スクアーロのことをおまえに話そうと思ってな。
 攻略に役立つかもしれねーしな」
「え、ディーノさん。あいつ、知ってんスか?」
「ああ…よく知ってる。
 それにしても…に何も聞いてないのか?」
「え?さんも知ってるんスか?」
…」








ディーノに呼ばれたので彼の方を見た。
彼は、少し失望したような目で私を見つめていた。








「まだツナたちに話してないのか?スクアーロのこと」
「…怖がらせるだけだと、思って」
「何なんスか、さん、ディーノさん」








山本は不安そうな顔で私たちを見つめた。
ディーノも私を見たが、私は腕を組んでディーノの一歩後ろへ下がった。
これはディーノに任せるという合図。
彼は溜息をついたが、そのまま話し始めた。








「スクアーロは…ヴァリアーのボスになるはずだった男だ」
「「!?」」
、スクアーロ、俺の3人は同じ学校に通ってたんだ」
「うわぁ…」
「はは!すごいメンバーだろ?
 は校内一の美人だったんだぜ?」
ディーノ!!それ、関係ない!
「悪い悪い。
 その頃からスクアーロの暴れっぷりは凄かったんだ」







スクアーロの経緯を話すディーノの後ろで私は、学生時代のことを思い出していた。
8年前、屋上から始まった物語は忘れることのできない思い出だった。







「…というわけだ」
「山本、あの…」
「ん?なんスか、さん」
「いや、やっぱり大丈夫。気を付けて」
「大丈夫っすよ!」







帰りの車の中、私はよそよそしくディーノに話しかけた。







「ねぇ、ディーノ…」
「ん?どした?」
「ちょっと、話したいことがあるんだけど…」
「あー。これからイタリアとの電話会議があるんだ…明日じゃ、ダメか?」
「…分かった」
「悪いな」
「ううん。大丈夫」










結局、ディーノとの時間の折り合いがつかず、翌日の夜になってしまった。
今日は私にとって一番興味のある試合。
なんせ山本の相手はあのスクアーロだから。
きっと本気で殺しにかかってくる。
それに、自分が負けたと思ったらきっと…








「おい、
「…え?」
「大丈夫か?顔色悪いぞ」
「あ、うん…平気」
「ところでさ、昨日、何言おうとしてたんだ?」
「え?」
「ほら、俺に言いたことあるって言ってただろ」
「あー…もういいの」
「はぁ?」
「忘れて。もういいの」
「…そうか?」
「うん」








戦いの観覧席に移動しながらディーノが言った。
もういいわけなんてない。
でもスクアーロの試合前に、ディーノに「愛してる」なんて言葉、かけられなかった。


並中のB棟は既に校舎の様子をなくしていた。
上から降る大量の水の中、スクアーロと山本は件を交える。
その様子を私たちは固唾を飲んで見守っていた。










「おい、
「!」








隣の観客席からドスの効いたザンザスの声が聞こえた。







「お前、そいつらに言ったのか?スクアーロの秘密」
ッ!!
「おい、ザンザス。に話しかけるな」
「跳ね馬…お前も知らないことだぜ?」








ザンザスの話しを聞いたディーノやツナたち全員が私を見た。
私は背中に冷や汗が滴るのを感じたが顔には出さずに答えた。








「スクアーロの秘密なんて知らないわよ」
「あっはっはっ!昔の男の秘密なんて話さねーってことか」
ザンザス!!勝手なことを…」
「それで日本のガキが死んでもお前にゃ関係ねーもんな」








私はそれを聞いて唇を真一文字に閉めた。
スッとザンザスの方に歩み寄ろうとしたが、チェルベッロに邪魔をされてしまった。








様…相手方のボスに危害を加えた場合もリング没収です」
「…一発殴るだけよ」
「それもいけません」
「…」








背中にはみんなの刺すような視線を感じていた。
だから、振り返ることができなかった。
すると後ろから、大怪我をした獄寺が咳き込みながら叫んできた。








「おい、!!山本が負けてもいいのかよ!!
…そんなわけない!!
じゃあ言えよ!!
「…」
!!!







ゴホゴホッと咳き込む獄寺が心配でふと皆の方を見た。
冷たい視線や不安そうな視線が突き刺さる。
私はそれがとても痛くて、うつむいていることしかできなかった。







「おい、…」
「リボーン」
「お前は、スクアーロの見方か?」
「違う!違うわ!!
「なら、早く教えろ」
「…」
「お前が言ったことでスクアーロが負けても、あいつはお前のせいにしない」
「!」
「むしろ、正々堂々と山本と戦えると喜ぶだろう」








リボーンの言葉を聞いて、少しの沈黙の後、私は呟いた。








「…なのよ…」
「え?」
義手なのよ、あいつの左手!!
なっ!?







目の前にいたディーノが目を見開いた。
でもそれと同時に視界が歪んでいくのを感じた。







だからあいつに死角なんてないの!!!



















2014/01/09