イタリアの空港に着いた。
到着ロビーにはディーノの姿があった。











La Traviata  15










「ディーノ!9代目が…!
「分かってる。急ぐぞ」







目の前に止めてあった車に乗り込む。
荒々しい運転、法定速度のギリギリで急いだ。


イタリア国立病院の最上階。
そこにボンゴレ9代目の部屋はあった。

は急いでベッドの横に跪いた。
酸素マスクを付けて眠る9代目。







「9代目…」







その声は自分でも思ってないほど涙声だった。
彼の手を握ると、思っていたよりも華奢で、シワシワだった。
こんなに小さかったっけ?と思うと、頬に涙が流れた。

トンと誰かが私の肩に手を乗せた。
それがディーノだとわかったが、泣き顔を見られたくなくて、振り向かなかった。








…行こう…」
「ずっとここにいる」
「…まだ起きない…一度戻ろう。疲れただろ」








ディーノに身体を支えられながら病室を出た。
彼はロビーに出るまで、ずっと肩を抱いてくれていた。

しかし、たちがロビーに付いた時、雰囲気がさっきと違った。
入口から黒い集団がズカズカとエレベーターに向かってくる。
それを見たは息を飲んだ。








「…これはこれは、愛しの妹じゃねーか」
ザンザス…!
「兄に向かってその口の聞き方たぁ、関心しねーな」
「ッ!…何しに来たの」
「じじいの見舞いだよ」
あんたに会う資格なんてないわ!!
「おぉっと、…ここは病院だぜ?
 それに、俺もじじいのことを心配してるんだ」
…あんたのせいで9代目は…!!








ディーノの静止を振り切り、はザンザスに向かって手を振り上げた。
しかしパシッと誰かに手首を掴まれてしまった。







う”お”ぉぉい。それはオレが許さねぇ」
「…スク、アーロ…!」
「相変わらず、威勢がいいなぁ!!」
離して!!
「まだあのへなちょこと付き合ってんのかぁ?」
「離してってば!」
「オレのとこに戻ってこいよぉ」
ッ!









すると、スクアーロの腕をディーノが掴んだ。
力が入っていることが見た目からでもわかる。
とても怒ってる。









「スクアーロ。はオレの女だ
「はんっ!どうだかなぁ!」
「ボスの女の手ぇだしたら、どうなるか分かってんだろ」









パッとの腕を開放したスクアーロ。
は掴まれていた腕を撫でた。
少し赤くなっている。
ディーノもスクアーロの腕を離した。

ヴァリアーの集団はの静止を無視し、エレベーターに乗り込んだ。








、世界がひっくり返るぜぇ!








そんな言葉を言い残して。








※ ※ ※ ※







ボンゴレの所有地に着いた。
ディーノは屋敷まで肩を抱いて連れて行ってくれた。
きっと私が震えているのにも、気付いていたと思う。
扉が開くと、懐かしい人物が私を出迎えてくれた。







ガナッシュ…ッ!!
「姫…久しぶりだな」







その言葉を最後まで聞かずに、私はガナッシュに抱きついた。
ガナッシュは何も言わずに私はしっかり抱きしめてくれた。









「…変わらんねーな、姫」
「う、うるさ…いなぁ…!!うぅ…」
「あはは。すまんすまん。
 おい、ディーノ。今日はこっちで預かる」
「あ、はい…頼みます」
「あぁ。任せとけって」









私はガナッシュに頭を撫でられながら屋敷に奥に入った。
ガナッシュは私を部屋まで連れて行くとそのままベッドに座らせてくれた。








「疲れてんだろ?」
「…なんで倒れたの?」
「俺はピンピンしてるぜ?」
「違うわよ!9代目。あんた、すぐには死にそうじゃないし」
「言うねぇ…。ま、最大の原因は疲労だ」
「!」
「お前も知ってるだろ。ザンザスのこと」
「…病院で会った」
「そうか…9代目の頭を痛ませる最大の原因だ。
 まぁ、なんで起きちまったのかは不明なんだが…これから戦いが起こる」
「…そのリング?」








私はガナッシュの指にはまったリングを指差した。
ボンゴレ・ファミリーに代々伝わるリングで、ボスの守護をする6人がそれぞれ所有する。
ガナッシュはそれの雷をあてがわれていた。

彼は笑いながらその指輪を外し、私の手のひらに乗せた。
歴史を感じさせる指輪に、見た目より重く感じた。








「さすが姫、昔っから勘だけは鋭いなぁ…」
「“勘だけ”って…どういう意味よ
「ははは!悪ぃ悪ぃ…ま、このリングだ」
「…ツナたちが、危ない…」
「あの日本にいる10代目候補だな。あぁ、危ない…だが、まだ大丈夫」
「!」








スッと私の手のひらから指輪を取り、同じ場所にはめなおすガナッシュ。
そして部屋から出て行った。
出て行き際、振り向いて私に一言言った。









「今日の晩飯、姫の好きなラザニアだって」
「…うん!」

















2013/11/14