「また雨かぁ〜」
La Traviata 13
机にうつぶせになりながら窓の外を見つめる。
すると、バコンッと頭に衝撃が走った。
「いって!」
「こら、!ちゃんと座らんか!」
「雨だと身体怠くて…」
「はぁ?」
「日本のこの時期って梅雨って言うんでしょ、先生?
なんで夏休み、冬休み、春休みはあってなんで梅雨休みってのはないんだ…?」
「馬鹿なこと言っとらんで、この問題を解け!」
「だから、数学無理だってば!」
いつも飽きずにこんなやり取りを数学の時間にやる。
そんなこともにとっては、「日常」になっていた。
下校時間、雨は止んでいた。
※ ※ ※ ※
宛に一通の招待状が届いていた。
結婚式の招待状だった。
「えぇ!?リボーンとビアンキ!?マジ!?
先越されたなぁー!!」
ボフッとソファにダイブする。
6月の花嫁、ジューンブライドは全世界の女性の憧れだ。
私自身も憧れていないわけではない。
ただ、結婚というものにあまり関心がなかった。
「結婚かぁー。一緒に住むとは、また違うよねぇ」
ソファに寝転びながら飾ってあるデジタルフォトフレームを見た。
ディーノとのツーショットの他に最近撮ったツナたちとの写真もある。
それはとして、ではなくとして一緒に撮った写真だ。
「私はいつまであの子たちを騙し続けるんだろう…」
勿論、仕事だ。
でも、こんなに心が痛む仕事は初めてだった。
ツナは私の記憶にある人物にすごく似ていた。
小さい頃からある記憶。
私は、父親だと思っている。
優しい目をしていて、優しい声で私を呼ぶの。
額にオレンジ色の死ぬ気の炎を灯して、拳を振るうの。
笑ってる私を見て、彼も笑うの。
だからだろうか。
ツナを見る度に、偽りの私で接していることが嫌だった。
「記憶の人は…本当のお父さんよね。きっと…」
その人と笑う私は、今みたいな大人の姿だけど。
それはきっと私の妄想が生んだもの。
だってお父さんじゃなかったら…
ふと悲しくなって、ディーノに電話をかけた。
ワンコールで出てくれる彼。
それで愛されてるなぁって感じる私は馬鹿なのか。
『もしもし?』
「…」
『?』
「…ちょっと声が聞きたくなって」
『あはは!なんだよ、それ。子どもじゃあるまいし』
「いーじゃん!別に…」
『そっち、今夜中だろ?早く寝ろよ』
「うん。あのさ、結婚式の招待状来た?」
『あ?あぁ、リボーンのやつだろ?あれ、本気か?』
「さぁ?私も確かめてないから」
『まぁ、明日の朝、そっち着くよ』
「うん。待ってる」
『…』
「なに?」
『先越されたと思ったか?』
「うーん。ちょっとね。でも、私はまだ結婚とかいいや」
『そっか』
「うん。ディーノも、でしょ?」
『そうだな。まぁ、お前が言うなら…』
「え?何か言った?」
『別に!早く寝ろよ!おやすみ!』
「え、うん…おやすみ」
ブチッと切られた携帯を見つめながら微笑む。
「ふふ!おやすみ、ディーノ」
2013/11/10