「あれ?日本って春から新学期なんだ」
La Traviata 11
クラス発表が行われている校舎前。
至るところで、歓喜と落胆の声が聞こえていた。
「あ、くん!久しぶり!」
「あ、あぁ。ちょっとイタリア戻っててさ。ツナ、何組?」
「そ、それが…」
「はいは〜い!沢田ちゃん!同じクラスになったのも何かの縁だね。お互いガンバローよ!」
「誰?こいつ」
「わーお!初対面にしてクールなお兄さん!オレ、トマゾファミリー8代目ボス!内藤ロンシャンで〜〜〜す!」
の眉間に一瞬にしてシワが増えるのをツナは見ていた。
「もしかして、コイツとクラス一緒?」
「あ、うん…くんも」
「…俺、辞めようかな。学校」
「んなーーッ!?」
「俺、こんな馬鹿だけは大ッ嫌いなんだよぉ!!」
はロンシャンをビシーッと指差しながら叫んだ。
当のロンシャンは「え?なんでなんでー?」と呑気に言っている。
は、はロンシャンを知っていた。
8代目ではなく、7代目のほうを。
以前、トマゾの特殊弾の秘密を探るために潜入したのだ。
7代目は私を気に入り、全てを話してくれた。
馬鹿なボスだった。
まぁ、「嘆き弾」なんて、使おうと思うだけで反吐が出る。
だからボンゴレでは作られなかったが。
そのときから、トマゾは嫌いなのだ。
あの7代目ボスの手の感覚を思い出すだけで、悪寒がする。
「やっぱり嫌いだわ」
「なんでよぉー!ちゃーん!」
「俺の名を呼ぶな、気持ち悪い!おめーの親父のこと知ってっから嫌いなんだよ!」
「父ちゃん?なんでなんで?」
「あのエロ親父め…お前もその血受け継いでんだろーが!馬鹿!」
「はっはーん!オレっちも、けっこーストライクゾーン広いよー!」
「そこが嫌なんだっつってんだよ!!俺、帰る!」
「え、ちょっとくん!」
「ツナ、あとは任せた!」
このあと、はロンシャンのせいで、またディーノと大喧嘩することにあることを
知る余地もなかった。
※ ※ ※ ※
数日後、の姿で京子やハルとケーキ屋でお喋りをしていた。
以前、ケーキ屋で出会ってから定期的に女子会を開いていた。
「お腹いっぱい!ちょっと運動でもしましょうか」
「ふぇ?ジョ、ジョギングですか!?」
「あはは!ハル、今から走れる?」
「ちょっと…無理です」
「ボウリングしましょ!ボウリング!!」
が運転するのは白のアルファ・ロメオだ。
京子とハルが目を丸くする中、乗り込むように促す。
そんなこんなで、たちはツナたちが遊んでいるボウリング場に着いた。
「さて!着いた!」
「わー!ありがとうございます!」
「楽しみだね、ハルちゃん!」
「はいです!」
「さ、行きましょ」
入口まで歩いていると、駐車場に見覚えのある赤のフェラーリが止まっていた。
「あれ?これ…」と思いながらも、そのまま歩くだった。
お喋りをしながら充てがわれたレーンを探していると、京子がふいに「あれって…ツナくんたちじゃ…」
と言い出した。
前を見ると、ツナ・ロンシャン・ディーノと目を疑うほど残念な女の子たちがいた。
「ツナくん…?」
「へ?きょ、京子ちゃん!!?」
「なんだ、ツナ…わ……」
「ディーノ、なにこれ…」
「いや、これは…呼ばれてだな…」
「こんなブッサイクな子と合コンなんて…私がいるのに…」
「違うんだって、!!」
は京子とハルの手を掴むと入口のほうに早足で戻っていった。
ディーノが後ろから追いかけようとしていたが、CGのような女の子に挟まれて身動きが取れないようだった。
「まいった…マジで…」
「おい!リボーン!お前のせいだぞ!!」
「修羅場…なめないで!」
「おいッ!!」
自力で抜け出したディーノは走って駐車場の向かったが、
その時には白のアルファ・ロメオが猛スピードで駐車場で出ていく瞬間だった。
ププーッというクラクションが遠くで鳴り響く。
無茶な運転をしていることがディーノにも容易に想像できた。
「はぁ…まじで、参った…」
その頃、車の中ではむしゃくしゃしたが独り言を言いながら運転していた。
「ほんとッ…信じられない。あんな生物かも分からないヤツのどこがいいっていうの!?
誘われたからって…ほんと考えられない」
「あ、あの…さん…」
「あ!あなたたちは関係ないからね!ごめんなさい。家まで送って行くわね!」
「いいですよ!駅で降ろしてもらえれば…」
「そうです!ハルたち、自分で帰れます」
「いいのいいの!私が誘ったんだから」
運転中、ひっきりなしに電話が鳴っていたがは全て無視をしていた。
京子やハルを無事、家まで送り届けたあと、ようやく電話に出た。
もちろん相手はディーノ。
「…」
『なぁ…』
「わかってるわよ」
『!』
「ちょっと私に飽きたんでしょ?」
『…は?』
「だからあんなよくわからない生き物なんかと!少し距離を置きましょう」
『は!?ちょ、!!違うって!!』
ブチッと電話を一方的に切られたディーノ。
はぁ〜!と大きな溜息を付いて、運転席の背もたれに身を委ねた。
ずっとの宿泊するホテルの前で待っていたのだ。
諦めて帰ろうとしたとき、ディーノの携帯の着信が鳴った。
相手はだった。
「5月3日
マフィアランド」
だけだったが、ディーノは笑いながら携帯をしまった。
「ほんと…可愛いやつだな」
赤いフェラーリがエンジンを噴かせながら夜の闇に消えていった。
2013/11/08