こんなはずじゃ…
ボソッと心の声が出たような気がした。
ウサギ
の
彼女
「〜!見てみて!これ!どう!?」
「もう、ラビ煩い!あっち行ってよ」
「何でさ〜?」
「今私、仕事中なの!?分かる!?」
「え〜?」
私は白衣を色んな液体で汚しながらラビを見た。
手には泡の吹き出そうなフラスコをちらつかせている。
ここ、科学班のラボでは日夜色々な研究が行われている。
かくいう私も、日々科学の進歩を信じ、研究している。
そして横にいるのはエクソシストのラビ。
彼はまぁ、私の彼氏…っぽい人。
ラビが勝手に言っているだけなのだが。
「さぁ〜、今度いつ非番なんさ?」
「…分かんない」
「えぇ〜?コムイに聞いてこよっと♪」
「ちょっとラビ!!」
たまにこうやってラビに振り回されて街に買い物に出たりしていた。
私にとってこんな日常が普通だと思っていた。
だから、私はラビがいつも戦いの最前線にいることを忘れてしまっていた。
「…あれ?ラビは?」
「ラビなら任務行ったぞー」
「え、そうなの?班長」
「おぉ、今回は2、3週間返って来ないっつってたなぁ」
「へぇー」
「なんだ、恋しいのか?」
「は!?んなわけないでしょ。私の恋人は科学だけ」
「全く、は素直じゃないなぁ」
「ちょ、班長!!」
本当にその時は、むしろ清々していた。
だって大好きな科学の研究の邪魔をする奴がいなくて、没頭出来たし、
たまにの非番だって、自分の好きなことをして過ごすことができた。
でも何か、ちょっと足りない気がした。
何が足りないのか、言葉にすれば分かりやすいのだけれど、言葉には出来なかった。
寝る前、本を読んでいてもそんな症状に見舞われるようになった。
ラビが任務に出て20日目のことだった。
本の内容が頭に入って来ないし、ふと気づくと窓の外を眺めていた。
「…ラビの馬鹿…」
ベッドの横たわった時、つぅっと一筋の涙が流れた。
その日私は、夢を見た。
大きな手が私の頬を撫でたような気がした。
「、ただいま」
「ん…ラビ?」
「布団、かぶらないと風邪引くさ」
「…なんで私の部屋、いるの?」
「鍵開いてた♪」
「…馬鹿!!」
「へ?」
寝起きの私の前に、何故かラビがいた。
彼の頬には絆創膏が貼られ、血が滲んでいた。
それでも笑顔で私を見つめている。
「任務は?」
「さっき帰ってきたさ〜」
「…怪我…」
「カスリ傷だから」
「でも…」
「それよか、寂しかった?」
「…え?」
「オレがいなくて、寂しかった?」
「……ん」
「え?」
「…寂し…かったよ、すごく…」
無意識にそんな言葉を言っていた。
ニッコリ微笑むラビを見て、私は自分が何を言ったのか急に理解した。
シーツを頭からすっぽり被り、ラビから隠れるように背を向けたが、
そんな私を彼はギュッと抱きしめてくれた。
「ちゃん、ちょーかわいい」
「…う…///」
「顔、見せてよ」
「やだ」
「えー…オレ、任務から帰ってきて疲れてるんさぁ」
「…」
「の顔見たらすぐ元気になるのに」
「…」
そろそろ〜っとシーツから顔を出すと、ふいにチュッという可愛い音が聞こえた。
それがラビが私にしたキスの音だなんて、すぐに気づかなかった。
「ラ、ラビ!?」
「これからいーっぱいキスするさ!」
「〜っ!!」
ウサギ
な
彼女
「こんなはずじゃなかったのに…」
「んー?」
「だから、こんなにあんたを好きになるはずじゃなかったのに」
2015/10/02