本部に戻るといつもみんなが「おかえり」と言ってくれる。
もちろんみんなのことは好き。
みんな、私の存在を認めてくれているから。
私がいることに意義を見出してくれるから。

でも教団は大っ嫌い。
私を道具として使う教団なんて。

今回の任務も、人間のエクソシストなら確実に死ぬようなものだった。
私も一度は「死んだ」。
そんな私を道具にする教団は大っ嫌い。

神田ユウも私と同じ。
だから、私はユウにしか心を開かない。
ユウにしか、全てを見せない。










「あ、おかえりー」









ユウが私と一日違いで本部へ帰還した。
彼も任務に行っていたみたいで、ちょっと不機嫌だ。
彼は、いつも私の部屋のシャワーを借りに来る。
彼の部屋にシャワーは付いてないから。









「借りるぞ」
「どうぞ」










シャワーの流れる音が聞こえる。
私はいつもその音を聞きながら本を読む。
でもたいていは本の内容なんて頭に入ってこない。
考えていることは、いつも、自分の最期。

やっぱり戦いの中で死ぬのかしら。








「…おい」
「ひゃっ!?」
「何ぼーっとしてる?」
「え?あ、いや…あの…髪ふこうか」









ユウは椅子に腰かけた。
私は前からユウの髪をタオルで包んだ。

綺麗なユウの髪。
私はたまにヘアスタイルを変えるから、ちょっと痛んじゃってて…
でも、ユウの髪はずっと綺麗。








「ユウの髪は綺麗よね」
「は?」
「どこまで伸ばすの?」
「さぁな」
「えー?決めてないの?」
「勝手に伸びるんだよ」
「あはは…そりゃ生きてるもの。伸びるよ」








『生きてる』
その自分で発した言葉で手が止まった。

本当に、生きてる?








…?」
「生きてるのかな?私…」
「…」
「心、ちゃんとあるかな?」
「…さぁな」
「え?」







ユウは私からタオルを奪うと、そのまま私の顔を見た。
私はそのままユウの前に跪いた。
私もユウの顔を間近で見たかったから。

すると、ユウの手が私の頬を包んだ。
温かい手だった。
その両手がすっと、私の首に差し掛かった。
ユウの手で、私の首が全て覆われる。








「ユウの手…あったかいね」
「お前の首も温かいぞ…」
「だって…血が通ってるもの」
「…あぁ。生きてる証拠だ」
「そうね…私、ちゃんと生きてるものね」







ユウの手がだんだんと私の首を絞めつける。
息苦しい。
でもこの世界はもっと息苦しい…と思った。








「…お前は…俺の手で終わらせてやる」
「ん…」
「それがお前の望むことなら…」
「うん…それは私が望むこと…」











その手で終わらせて










貴方によって終わりがもたらされるなら…
それが最高の終焉だと思うわ










2012/08/24