車庫はアクマの死臭で充満していた。
twilight
13 吸血鬼の城
「何体、壊った?」
「30…くらい」
「私も」
「あ オレ勝った。37体だもん」
「…そんなの覚えてませんよ」
「まぁ、合わせて100ね。単純に考えて私たちだけに向けられた襲撃ね。
アレンとリナリーが負傷してるのを狙ってか、または何か別の目的か…」
「大丈夫かな 病院…イテ!!」
「ダイジョブか?」
左腕が痛んだのか、アレンは左腕を押さえながら立ち上がった。
「まだ完治してねんだろ、その左」
「まぁね。僕もラビ達みたいに装備型の武器がよかったな」
「、病院ってあっちの方向だよな?」
「うん、多分」
「アレン、ここ握って。も…」
「私は遠慮しとく。自分で飛べるし、それ嫌いだし」
「なんてこと言うんさぁ〜。
まぁいいや、大槌小槌…伸!!」
「わぁああぁぁぁぁぁあ!!」
「病院まで伸伸伸〜〜!!」
私は高速で飛んでいくラビたちを見て笑った。
あれには絶対にお世話になりたくない。
そして、私は自分の武器でゆっくりと病院に戻った。
※ ※ ※ ※
「それじゃあ 任務について話すよ」
大雨の中、馬車が走る。
病院に突っ込んだラビとアレンはブックマンに正座をさせられていた。
私はというと、端っこに座り、土砂降りの外を見ていた。
「先日、元帥の一人が殺されました。
殺されたのはケビン・イエーガー元帥。
5人の元帥の中で最も高齢ながら常に第一線で戦っておられた人だった。」
「あのイエーガー元帥が…!?」
「ベルギーで発見された彼は教会の十字架に裏向きで吊るされ、背中に『神狩り』と彫られていた」
「神狩り…!?」
「イノセンスのことだな、コムイ!?」
元帥は適合者探しを含めてそれぞれに複数のイノセンスうを持っている。
イエーガー元帥は八個、所持していたそうだ。
瀕死の重症を負い、十字架に吊るされてもなお、かろうじて生きていた元帥は、
息を引き取るまでずっと歌を歌っていたらしい。
「大事なハート…って?」
「我々が探し求めている109個のイノセンスの中にひとつ、【心臓】とも呼ぶべき核のイノセンスがあるんだよ。
それはすべてのイノセンスの力の根源であり、全てのイノセンスを無に帰す存在。
それを手に入れて初めて我々は終焉を止める力を得ることができる」
「そのイノセンスはどこに?」
「わからない」
「へ?」
「実はぶっちゃけるとサ…」
ベラベラとコムイがアレンに愚痴をこぼしている間、私は馬車の窓から外を見た。
土砂降りの雨が窓を叩きつける様子を無機質な目で見つめていた。
※ ※ ※
「……」
「…」
「…!」
「…え?」
「早く。汽車が出ちゃう!」
「あ、あぁ…うん」
「もアレンくんも…どうしちゃったの?
クロス元帥の元に行くって聞いてからおかしくなっちゃって。
アレンくんなんてあからさまに夢まで見てるし」
「アレンも私もクロス元帥のこと嫌いだからねー」
「…えぇー…」
「だってさぁー!」
私は元気な声を出してリナリーにクロス元帥の愚痴を言い始めた。
すると無意識にポケットの中に入れた手に、アルミのケースが触れた。
その瞬間、流暢に話していていた言葉が不意に出なくなった。
「?」
「あ、うん。なんでもないよ」
「…そう」
「あ、汽車が止まったね。ちょっと外の空気でも吸ってくるよ」
「!」
「え?」
「…戻ってきてね」
「…何言ってんのよ、リナリー。当たり前じゃない」
リナリーに微笑みかけて汽車を出た。
夕暮れの空気を肺一杯に吸った。
それでもやはり、息苦しかった。
「ほんと。全部全部…なくなっちゃえばいいのに」
「…貴女様の胸にあるのは…十字架ですか?」
「え?」
「捕えろー!!!」
「わ、わぁぁああ!!!」
手際よく手足に巻きつけられたロープ。
それを椅子に固定する者、私の胸にあるローズクロスをマジマジで見つめる者。
その中の一人に私は問いかけた。
「何してるの」って。
「修道女様!私たちをお守りください!!」
「…は?」
「この村の奥には昔から吸血鬼が…」
「あー、ダメダメ。私、そーゆーオカルトチックなやつ無理!」
「…はい?」
「ちなみに言うと私、修道女じゃないから。むしろ神なんてクソ喰らえって思ってるし。
倒せるのはアクマだけ。吸血鬼なんて、どっかのレンジャーにでも頼んでよ」
「悪魔も吸血鬼も一緒でしょう?!!」
「違う違う」
するとドアがバァンと勢いよく開き、知った白髪の少年が私の隣に縛られた。
「あれ?アレンじゃん」
「さん!?なんでこんなところに!?」
「いやー、人違いされちゃって」
「僕も同じです。修道士に間違えられちゃって」
「このローズクロスもちょっとデザイン変えてほしいなぁー」
ブツブツと独り言を言っていると、話がドンドン進んで行ってしまっていた。
なんでも、吸血鬼であるクロウリー男爵は昼間は決して姿を見せず、彼の住む古城からは毎夜
人間の悲鳴が泊まることはないらしい。
城に入ったら最後、生きては出られないという言い伝えまであるという。
ただ、城に近寄りさえしなければクロウリーは村人に危害を与えることはなかったらしい。
そんなある日、突然、クロウリーは老婆の身が蒸発するまで生き血を吸い尽くし殺したそうだ。
「うそぉ」
「な。何奴!?」
「ラビ!?どうしてここに!?」
「お前とを探しに来たんあさぁ。そっちこそ何やってんだ?」
「黒の修道士さまがもうひとりぃー!!!」
「わぁ!!?」
ラビまで捕まったあと、村長は一人の神父の話を始めた。
「実はクロウリーは暴れだす少し前に村に一人の旅人が訪れたのです。
旅人は神父と名乗り、クロウリー城への道を聞いてきました。
死ぬかもしれないと必死で止めたのですが旅人は笑いながら城へ行ってしまったのです。」
私は、大きく溜息を付いた。
「はぁ〜!あの女ったらしめ…ッ!!」
2014/08/17