私たちは街の繁華街に出た。
通りは人でごった返している。







twilight



13   人殺しと救済








「人多いなぁ〜」
「こりゃアクマの巣だね」
「なぁ、…」
「んー?」
「オレのことどう?」
「別に。かっこいいと思うよ」
マジで!?







何気なしに言った言葉にラビが予想以上に反応する。
どういう真意で言ったのかは知らないが、ラビが喜びそうな返答は自ずと分かる。
私はヒールでザクザクと雪の覆う道を歩く。
その横を私に歩幅を合わせてラビが歩いた。








「知ってるでしょ?私にはユウがいるから」
「…」
「どこまで知ってるのかは知らないけど、私たちに関わらないほうがいいわよ」
…でも…!
「…貴方はブックマンでしょう?」

「こんな世の中じゃなかったら、違ってたのかもね」









それだけ言うと、前にアレンの姿を捕えることができた。
立ち止まって何やら心底怯えているように見える。
そうすると、アレンの後ろでアクマが転換した。







エクソシストでちゅね







その瞬間、隣にいたはずのラビが飛びだし、アクマを破壊した。
まわりに爆発音と煙が舞う。








「あっぶな…
 なーにやってんだ、アレン」
「立ちなさい。敵が来たわ」








私は発動すると、近くにいた人間の首に八凛を突きつけた。
転換しようとした瞬間、首を落とす。
そこには爆発音しか残らない。

そこに心はない。
アクマなら壊すまでだ。







「きゃぁああ!人殺しだ!!








街の人々は私たちを指差して叫ぶ。
もう慣れてしまった言葉。
普通の人間はアクマの存在を知らない。
私たちは人間を殺す殺人者にしか見えない。
そんな世界に生きている分、もう何も感じない。










「アレン、大通りは人が多くて危ねェよ。
 アクマに背後を取られる」
「人間を見たらアクマだと思わないとね。
 今、アクマを見分ける眼、使えないんでしょ?」
「ご、ごめんなさい…でもさんとラビはどうして…」
「「ん?」」









ドン








鉄球が飛んできた。
それが意外に熱くて、周りの雪が溶けてしまった。
新たなアクマがカキーンと鉄球を飛ばしてくる。
私は八凛を構えたが、ラビにさえぎられた。








「ここはいっちょ、男気見せるさぁ!!
 大槌小槌 満満満
「(でっかくなった!)」
「頭下げろよぉー
 こんな大通りで、んなモンなげっとぉ。
 危ねェだろ、アクマ!!










ズドッ







鈍い音と共に建物に穴を開けた。
ラビはヘラヘラ笑いながら「コムイが弁償してくれっさ!」なんて言ってるが、
あとで一緒にどやされる私の身にもなってほしい。
すると、警察官がやってきた。
人殺しと聞いて駆けつけて来たのだろう。
私たちに近づく警察官はアレンの腕を掴んだ。
その瞬間、私とラビは警官に武器を突きつけた。








「やめ…なさい!
「!!」

「ラビ!アレン!場所を移すわよ!」
「あぁ!コイツら、オレらとドンパチしに来たみてェだな」
「…」









私たちは列車の車庫にやってきた。
そこなら人はいないはずだ。








「しっかし、反応遅いぞアレン」
「アクマの姿になってから戦闘態勢に入ってたら死ぬわよ」
「ごめん…ラビたちはどうしてわかったの?」
「わかんじゃねぇよ。全部疑ってんだ。
 自分に近づく奴は全部、ずっと疑ってる」

「昨日会った人間が、今日はアクマかもしれない。
 私たちはそういうものと戦争してるのよ、アレン。
 あなただって分かってるでしょ?」








ぞろぞろと私たちの周りに人間が集まってきた。
勿論、アクマだ。
私たちには人間にか、見えない。
それでも、それを破壊しなければならない。







「私たちは圧倒的に不利なの。私たちにアレンみたいな便利な目はないし、
 アクマは人間の中に紛れてしまう。
 私や他のエクソシストにとって、人間は伯爵の味方に見えちゃうのよ」









昔、クロス元帥から教えられた。
何故、目立つ団服を着て、エクソシストだとバラしながら歩いているのか。
それは、ローズクロスが目印だから。
アクマに襲ってもらうように仕向けるため。

でも、私には関係ない。
人間もアクマも同じ。
全部が敵。
全部、なくなればいい。














2013/07/07