ドイツ・ベルリン郊外。
私はブックマンに連れられ、アレンとリナリーがいる病院へとやってきた。







twilight


12 教団の駒









「わー☆ちゃん、久しぶりー☆」
…私はお前なんか知らない
きゃー!聞いた、ラビ!?ちゃんが怖いよ!」
「あははー。はいつもこんなんさ、コムイ」







病院・最上階の一室。
コムイは最上階を貸し切っていて、その一室で私たちを出迎えた。







「ってか、なんでコムイがいるの?」
「いやー。アレンくんの対アクマ武器がまた損傷したみたいで、その修理☆」
「嘘付け。それだけじゃないくせに」
「…ブックマンから聞いたかい?」
「えぇ…イエーガー元帥が殺されたんだって?」
「…まぁ、その話はアレンくんとリナリーが目覚めてから改めて話すよ。
 それより、これ。いるでしょ?」








そういってコムイが私に差し出したのは、小さなケースだった。
私はそれを見た瞬間、すぐにコートのポケットに突っ込んだ。
他の誰にも、見られたくなかった。








「これから君たちには長期任務に就いてもらう。
 とても大事な任務だ。だから…」
「そんなときに死なれたら困るって?」
「…」
「はっ!そろそろ飲まないとダメな時期だった。
 ありがたく受け取っておくわ、コムイ」
「…ちゃん」
駒は駒らしく、教団に仕えないとね
ちゃん!
「……ちょっと外の空気吸ってくるわ」







病室を出るとき、ラビは私を見つめていた。
誰とも話す気分じゃなかったから、私はそのままラビの前を通りすぎ、
ドアを開けた。







「……」
「記録するなら、してもいいわよ」
「!」
「まぁ、教団の話なんか私より知ってると思うけど」








バンッ







勢いよく閉めたドア。
廊下は冷え冷えとしていて、その音だけが、いつまでも響いて聞こえているようだった。



外は雪が降っていた。
積もり始めていて、地元の子供たちがはしゃいでいた。
私は何気なしに外にでた。
病院の裏には少しばかりの庭が広がっていたが、すでに雪に覆われてしまっていた。







「はは…次は雪か…寒いな」







数日前まで灼熱のフランスにいたにもかかわらず、
次は雪の降るドイツ。

コートが丈夫でよかった。

と思いつつ、本当にイノセンスのせいなのか、と少し疑問に思った。
息苦しい世界は、これが普通なのかもしれないと。


ぼーっと空を見上げていたら、病院の裏口が開く音がした。
ふと見ると、ラビとアレンが出てきた。








「あら?じゃん。こんなとこで何してんさ?」
「涼んでんの」
「…寒くね?」
「脚がね。ちょっと寒いかな」
「そりゃ、ほとんど生脚さね」
「ところでアレン、右目はどう?」
「ぇ…」
「いや、覆ってるから。怪我したんじゃないの?」
「はい…でも大丈夫です」








私がアレンに微笑みかけると、その横で、ラビが何やら雪を丸めだした。







「雪だるま、作るさ!」










アレンとラビが雪だるまを作り出して数分、
大小様々な雪だるまが出来始めた。
私は手がかじかむので、傍観者を決め込んでいた。








「アレン、トシいくつ?」
「15くらい」
「あ オレ、お兄さん。18だもん」
「え?アレン、15なの?」
「え、知らなかったんさ?
「だってそんな話、しなかったし」
さんはいくつなんですか?」
「ラビと同い年。18歳」

「15ねぇ〜白髪のせいか、もっと老けて見んぜ」
「(白髪…)」
「あ、オレのこと、ラビでいいから。Jr.って呼ぶやつもいるけど。
 アレンのことはモヤシって呼んでいい?」
は?
「だってユウがそう呼んでたぜ」
「ユウ?」








アレンはきょとんとした顔でラビを見た。
私はすでにラビたちの話に飽きて、ビタのために小さな雪のお城を作り始めていた。






「あれ?お前、知らねーの?神田の下の名前。
 神田ユウっつーんだぜ、アイツ」
「そうなんだ…あ、そういえば、さんがユウって言ってたような…」
「今度呼んでやれよ。目ン玉、カッて見開くぜ、きっと。
 あいつ、にしか許してねーから。下の名前で呼ぶの」
「…なんでですか、それ」
「そりゃー、とユウはできちゃってるからさ☆」
はぁ!?







アレンの大声に私はパッと二人を睨んだ。







「なに、いきなり大声出して」
とユウができてるって話したら、アレンがビックリしたさ」
「え?知らなかったの?」
「いや、雰囲気ちょっと分かってましたけど、でも誰もそんな話しないし!」
「そりゃ、しないでしょ。こんな戦いの中心で、大事な人作るとかバカのすることよ」
「…あ…」
「私たちは特別。はい、終わりね。これ以上の話は大人のすることなの。15歳の白髪少年♪」
なぁ!?







「大人」という言葉に反応したのか、ラビの耳がウサギのように大きくなった。







「え?オレ、大人!だから教えてさ〜」
「無理」
「なんでさ!?」
「もう知ってんじゃん、ラビ」
「いーや!最後までいったっていう確信はないさ!」
バカか!!







私は本気でラビを殴った。
バコーンという音とともに、ラビが雪にのめり込んだ。








「ま、次会うのはだいぶ先かもしれねーけど」
「…どういう意味ですか、それ」
「オレの予想だけどさ。
 今度の任務はかなり長期のデカイ戦になんじゃねーかな。
 伯爵が動き出したんだ。
 ノア一族の出現ってどういうことだろ」
「僕は…アクマを破壊するためにエクソシストになったんだ。
 人間を殺すためになったんじゃない…」







それだけいうと、歩き出したアレン。
私はその姿を横目に見ていた。







「おい?どした?
 モヤシ」
アレンです!!ちょっと歩いてくるんで先戻っててください!」

「あちゃぁ〜〜?やっぱガキだ」
「すぐ熱くなるから。あの少年」
は知ってるんさ?」
「うーん。一回だけ一緒に任務に行った」
「へ〜」
「何も知らないのにレベル2に突っ込んでいったの」
「は!すげ〜な、オイ」
「それでユウがキレて、大変だった」
「…想像付くさ…」






私はアレンが消えた方向へと視線を向けた。
ラビも同じ心境だったらしく。
よいしょ、と腰を持ちあげ、コートについた雪をはらい落した。






「行きますか、あのガキ見に」
「…そうね。アレン、今左目使えないんでしょ?」
「あぁ…」







ザクザクと雪を踏みしめながら、私は歩き出した。










2012/09/13