「すんごい乗車の仕方ですね」
「これ、まだマシな方」







私たちは列車の屋根から中に入った。
ローズクロスを見せるだけですぐに一室用意された。
凄まじい権力の行使だ。
はそれを横目で見ていた。






twilight


05 イノセンス








「さ、今回の任務は?」
「マテールの亡霊…」
「これは…」








ファインダー・トマの話と資料を読んでいると、マテールの亡霊が人形であることが分かった。
しかし、マテールの地に着くまで列車で8時間ほどかかる。
何せイギリスからイタリアだ。
今の一般人の文明の力では空を飛ぶことさえできない。
それに、さっきユウに無理やり飲まされたアレのせいで体調がすこぶる悪い。








「ごめん、私、寝る」
「は?」
「着く前に起こして…」








私はユウの体に身を任せ、そのまま深い眠りに付いた。








「…さんの仲いいんですね」
「お前には関係ない」
「むっ…なんですか、その言い方」
「うるせー。が起きる」








そういうとユウ自身も目を瞑った。
一人になったアレンは車窓の風景を眺めながら、たまに資料に目を向けていた。


数時間後、パチッと目を開けたユウはそのままを揺すった。
夢を見ていた。
すごく嫌な夢だった。







「おい、着いたぞ」
「ん…」
「マシになったか?」
「…まぁまぁ…」







街に近づくにつれて殺気立っていく空気。
そして、次の瞬間には冷たい雰囲気が回りを覆った。







「遅かったか…」
「そうみたいね。無線が通じないから急いだんだけど」
「おい、お前。始まる前に言っとく。
 お前が敵に殺されそうになっても任務遂行の邪魔だと判断したら俺はお前を見殺しにするぜ」
「ちょっと…ユウ…」
「戦争に犠牲は当然だからな。変な仲間意識持つなよ」
「…嫌な言い方」
「まぁまぁ。アレン、初任務頑張って。私がちゃんと援護する」
「はぁ…」








すると、町から大きな爆発音とともに大量のアクマの気配がやってきた。
私たちは分かれてアクマを破壊する。
イノセンスは装置ごと結界内に保護されていたが、アクマの総攻撃の中、
あまり時間は持たない。
そして、アレンは何の考えもなくレベル2のアクマに突っ込んでいった。







「あのバカ…」
「レベル2がいるのね。なかなか手強いかも」
「俺はあいつを助けないからな」
「もう…じゃあユウはイノセンス保護、私はレベル2を破壊(や)るから」
「…」
「もう!返事!」
「…あぁ」








私はひとしきりむくれると、アレンの元へと向かった。
しかし、その前に瓦礫が崩れ、そして地面に穴が開いていた。






「うわー、でっかい穴。アレンも瓦礫の中に消えちゃったし、探すの大変そ…」







ミシミシって音は前々から気づいていた。
でもまさか、自分の立っている地面が崩れるとは思ってなかったんだよね。
資料で読んだことが頭の中をよぎった。
マテールの町には強い日差しから逃れるための地下通路があるって。
それが今回の戦闘と長年の老築化とともに底が抜けやすくなっていたのだ。







「いやぁぁぁああっ!」








底が抜けて私は地下へと落下した。
瓦礫のせいで身体のあちこちを打ったが、丈夫な団服のおかげで傷はそれほど負ってない。
すると無線ゴーレムのビタが震えだした。







、大丈夫か』
「落ちた」
『は?』
「地下よ、地下。今どこ?」
『こっちもイノセンスと共に今から地下に入る。合流しよう』
「したいのは山々なんだけど、自分が今どこにいるのは全く…」







そこで通信が切れた。
たぶんトマからの連絡を優先したのだろう。
それは賢明な判断だと思うが、こっちの心配も少しはしてほしい。
だってここがどこなのが分からないし、第一、アレンを探さなければならないのだ。
ここで大声を出すのもバカのする行動だ。








「ね、ビタ。アレンの気配、分かる?」
〈♪〉
「分かる!?すごい!」







そして数十分後、狭い通路で迷っていたアレンを発見した。








さーん!!」
「あ、アレン発見!」
「僕迷っちゃって…あ、あのアクマ。普段のと違うんです」
「あぁ、レベル2に進化したやつね」
「能力を持ってて、対象物を写し取るんです、能力とかも…それで僕…」
「取られたのね」
「…は、はい…」
「まぁいいわ。ユウを早く探しましょ。そこにイノセンスもある」
「あ、あの…僕を疑わないんですか…」
「今の情報を聞くと、そうかもしれないけど。貴方は私の名前を知ってた。
 ユウも、貴方も地上で私の名前を発してない。つまり、私の名前を知るのは本物のアレンとユウ、トマだけ」
「なるほど…」
「さ、行きましょう。ビタ、次はユウの気配探して」









クネクネと狭い地下通路、とりわけ排水溝のようなところを這っていった。







「スカートの中、見ないでよ!」
「み、見てませんよ!!」
「ま、わたし、リナリーみたいに短くないからね。スリッドは深いけど」







そして出たところに、なぜかアレンがいた。








「あら?アレンに挟まれてる」

「無に帰れ」







ユウの対アクマ武器から発せられた界蟲が偽アレンに向かっているところだった。








「ユウ!!」








2012/08/20