「ユウ…?どこ行くの?」
「…鍛錬だ」
「…そう…」
「…戻ってくる」
「…うん」




日が昇ってすぐ、ユウはいつも鍛錬に行く。
ユウのぬくもりが消えたベッドは、はやり居心地が悪い。






twilight


04 任務








数時間後、バタンとドアが閉まる音がした。
ユウが部屋に戻って来たのだ。








「…ん…お帰り」
「…あぁ」
「ごはん、行く?」
「あぁ。起きろ」
「うん」







勿論、私は裸なわけで。
でもユウは私の身体を見ても顔色一つ変えない。
ちょっとムッとする。
これでも自信あるんだけど。胸とか…腰とか…脚とか!?







「ユウ…私の裸見てもなんの反応もしないよね」
「…別に」







べ、別に!?って何!?
別に欲情もしないから関係ないって!?








「リナリーの裸だったらよかったのに、とか思ってるんでしょ!?」
「…は?」
「どーせね、男は誰でも清純な女の子が好きなのよ。ほんと、ヤんなっちゃう」








下着を身に付けながらボソボソ言ってると
急に後ろから胸を鷲掴みにされた。








「ひゃぁっ!!?」
「朝からうっせぇな…黙れ…」
「ちょ…ッ」
「俺がお前の裸に興味ねぇわけねぇだろ…さっさと服着ろ、バカ」
「う…はい…」







最後に首筋を強く吸われ、ユウは私から離れていった。
10分後、私たちは食堂にいた。









「あらーw仲良し二人組w」
「蕎麦」
「はーいwちゃんは?」
「中華粥。今回は杏仁豆腐付きで」
「はいよー」







私たちが席について少しすると、後ろのところで殉職者追悼式が始まった。
ユウの機嫌がどんどん悪くなるのを隣で感じながらお粥を口に運んでいた。
食べ終わるや否や、ユウの機嫌がMAXの悪さをたたき出し、口を開いた。







「…うるせーな。
 メシ食ってる時に後ろでメソメソ死んだ奴らの追悼されちゃ味がマズくなんだよ」
「テメェ、それが殉職した同志に言う台詞か!!」






言い合いで終わればよかったのだが、堪忍袋の緒が切れたファインダーがユウに手を出し、
それを避けた彼が、ファインダーののど元を掴んだのだ。







「ちげーだろ。サポートしかできねぇんだろ。
 お前らはイノセンスに選ばれなかったハズレ者だ。
 死ぬのがイヤなら出てけよ。お前ひとり分の命くらいいくらでも代わりはいる」







そろそろ止めようと思ったそのとき、誰かがユウの腕を掴んだ。







「ストップ」

「あら、少年」
「関係ないとこ悪いですけど、そういう言い方はないと思いますよ。
 さんも、いるなら止めるとかないんですか」
「……放せよモヤシ」
「アレンです」
「まーね。ユウの言い方は勿論言い過ぎよ。でもここでする彼らも悪いわ。
 追悼するなら聖堂に行くべきよ」






お茶を見ながら興味のなさそうに言った。
まだユウとアレンはいがみ合っていた。
次の瞬間、私の手から湯呑が滑り落ち、床で大きな音を立てて割れた。
締め付けられるような胸の間隔と、額から出る脂汗。
その音を聞いた瞬間、周りの視線が私へと集まった。








「…!?」
「…っは…っは…っは…」
「発作か!?」






ユウが私の顔色の覗く。
アレンは何が起こったのかわからないのか、その場であたふたしているようだった。
アレンがジェリーのところに走っていくのが見えた。
しかし、私は自分自身の身体のことを考えるので精一杯だった。






「アレはどこだ?」
「…へ…部屋…」
「なんで持ち歩かない!?」
「…っは…っは…すぐ…マシになる…」
「ちげーだろ!マシになるとかじゃ…」







そこで、遠くからリーバー班長の声が聞こえた。








「神田!アレン!
 10分でメシ食って指令室に来てくれ。任務だ」








騒ぎを聞きつけたジェリーが水差しとグラスを持ってやってきた。
私は彼女の手からグラスを受け取ると、そのまま一気に飲み干した。
その時には、もう動悸は収まっていた。
そして、机を軸に立ち上がるとスッと廊下のほうへ歩き出した。
歩き出したとき、少しふら付いてしまい、ユウが私の腰を支えた。








「行こ…任務よ」
「おい!」
「私は大丈夫。アレン、行くよ」
「あ、はい…」
「おいモヤシ、先行ってろ」
「なっ!」








アレンは何か言いたそうだったが、しぶしぶ先に歩きだした。
するとユウは私は壁に押し付けた。
その目には怒りが写っていた。








「…何考えてんだ」
「別に…」
「アレ飲まねぇといけないの、お前が一番良くわかってんだろ」
「…ほっといてよ」
「ほっとけるかよ!死ぬぞ!?」
「いいわよ、死んでも。これで死ねるなら万々歳。ここから離れられる」
「…」
「ねぇ、ユウ。私は貴方と違って今もアレを身体に入れないと発作が起こるの。
 私は貴方と違う。私は失敗作。失敗作は早く壊れるようにできてるのよ」
「…」
「…それに…早く解放される」








それから私はユウの腕を振り切って歩き出した。
10分後、何事もなかったかのようにアレン、ユウ、私はコムイの前に来ていた。








「さ、今回はトリオで行ってもらうよ。
 南イタリアで発見されたイノセンスがアクマに奪われるかもしれない。
 早急に敵を破壊しイノセンスを保護してくれ」







30分後、地下水路集合ということで、私たちは準備のため一度部屋へ戻った。






「団服、デザイン変えてもらおっかなぁ…ね、ユウ…ん!?」






ふと腕を掴まれたと思ったら、急に唇をふさがれた。
強引に舌で口を開けられたと思ったら口の中に水と何かが流し込まれた。
飲み込むしかなかったが、飲み込んだ瞬間、何かわかり、ガリッとユウの唇を噛んだ。
私から離れたユウの唇からは血が滲んでいた。








「なっ、に…すんのよ…!」
「これで数か月は大丈夫だ」
「…」
「…お前まで失いたくない」
「…」
「行くぞ」



























P.S


地下通路にて…


「あれ?神田くん、唇から血が出てるよ」
「…黙れ」
ちゃんの機嫌がものすごく悪そうだけど、大丈夫?」
「…」
「あっはーん。そゆこと。お盛んねぇ」

「「だまれ、コムイ!!」」

「はい…」








2012/08/20