「で、アレンっていうんだ、少年」







門が閉まった後で、はアレンに話しかけた。








twilight


03 名前








さん!知らんぷりしたんですか!?」
「だって名前知らなかったし。名乗らないとね」
「むっ…よろしくお願いします」
「よろしく、少年♪」
「まぁまぁ。私は室長助手のリナリー。室長のところまで案内するわね」
「あ、カンダ……って名前でしたよね…?よろしく」
「呪われてる奴と握手なんか するかよ」
「(…差別)」
「ごめんね。任務から戻ったばかりで気が立ってるの」







スタスタと歩いていく神田はクルッと回ってを見た。







、行くぞ」
「はいはい。じゃ、少年…くれぐれも注意してね」
「は、はぁ…」







私はユウについて、廊下の奥へと歩いて行った。

ユウの機嫌が悪いのは分かっていた。
オーラがそんな感じだったから。
任務から帰って来たばかりであんな冗談みたいな状況に呼び出されたんだから。
ま、そんなの毎回のことなんだけど。







「ねぇ、まだ怒ってるの?」
「…別に」
「あ!お腹空いてるからか…ご飯、食べに行く?」
「お前は?」
「一応食べたけど…ついてくよ」
「じゃあいい」
「食べないと力でないよ」







しかし、そんな私の声を聞かずにユウの足はいつの間にか私の部屋の前に来ていた。
まぁ、私の部屋と彼の部屋は隣同士なんだけど。







「シャワー借りるぞ」
「へ?あ、うん」








そのまま部屋に入って、団服を私に投げて寄こした。
いっつもこうなんだから。
そして私はユウがシャワーから出てくるまで本を読んで待ってるの。
私の部屋には何でもある。
一番のお気に入りはリーバー班長に作ってもらった10秒でお湯が沸くポット。
これで飲みたいときにすぐお茶が飲める。
私の趣味は世界のお茶を飲み比べること。
棚には任務で行った地域のお茶が瓶に詰まってるの。
緑茶、烏龍茶、メープル茶、生姜茶、プーアール茶…
その他、50種類はあるはず…
その中から今回は日本の新緑茶を選んだ。
お茶を入れながら、本を選ぶ。
そうしているうちのさっさとユウがシャワーから出てきた。








「早かったね」
「…あぁ」
「髪、拭いてあげる」








髪の長いユウはいつも水を滴らせながら出てくる。
それを拭いてあげるのが私の役目。
私がいるときだけだけど。
白い肌に長い黒髪。
長い睫…まるて女の子みたい。
女の私でもちょっと嫉妬するくらい綺麗。
でも身体は男だからゴツゴツしてる。
女の私でもキスしたくなる。
私はスッとユウの首筋に唇を近づけた。

触れる寸前で、ユウに顎をつかまれた。







…何しようとした?」
「え…えぇーと…キス?」
「…そうか」







すると、そのまま私の唇はユウの唇と重なった。
ユウの唇は本当に柔らかい。
ずっと触れていたいくらい。
そんなことを考えていると急に身体が痺れてくる。
ユウの全てが入ってきたように。








「ね…ちょ…っと…ユウ…」
「ん?」
「ぁ…」
「お前のせいだぞ」
「…そんな…」
「こっちは溜まってんだよ…」







私とユウはこういう関係。
それより深いかもしれない。
ユウの右胸には梵字がある。
そして私の右胸にも…
これは私たちの絆であり、忌むべきもの。
私たちは死ぬまで同じ道を歩む。








…」
「…ん…」
「…最近、治りが遅いんだ」
「…そう…」
「また見えるんだ…」
「…そう…」







そして私はユウにキスをした。
静かに目を閉じたユウはそのまま寝息を立て始めた。







「…ねぇ、ユウ?思い出せる?
 思い出さないほうがいいのよ、本当は。
 でもユウが思い出したいなら…思い出せばいい。
 知りたいのなら…知ることができるのならば…」







私も目を閉じた。
そこに広がるのは広大な海の底に沈む大きな船…







「…私はいつでも、ユウの味方だから…」










2012/08/20