よく夢を見る



息苦しい水の中




寒い





頭をよぎる声






約束







『また三人で行きましょう』








誰?








男と女の笑顔が私を包み込む








そして私は…








深い海の底で







死んだんだ










序章 闇へ











そこでいつも目が覚める。
寝汗で服が湿っている。
まだ真夜中なのか、外は暗い。
時計は深夜3時をさしていた。
この夢を見たとき、いつも右胸が痛む。
頭も痛む。
遠い遠い記憶だ。

一瞬、部屋全体に水が充満している気がした。
錯覚だ。
息が苦しい。
上手に息ができない。
慢性の発作だ。
ベッドサイドの引き出しに入れている小さな箱を取り出した。
手が震える中、蓋を開ける。
バラバラッと粒が床に落ちた。
一粒、必死に口の中に放り込み、飲み込んだ。

すぐに良くなる、もうすぐ収まる

こんな身体、嫌だった。
自分の身体に刻まれた梵字が物語る過去。
早く死にたかった。
死にたいのに死ねない。
過去に縛られた記憶も嫌だった。
正確に思い出せない記憶。
男と女の顔も分からない。
それでも愛おしい気持ちは消えない。




いつか思い出せる日が来るのだろうか。
こんな息苦しい世界から、抜け出せるのだろうか。
この世界に夜明けは来るのだろうか。




私の世界では、闇が始まったばかりだった。











twilight





2012/08/20