一瞬で、これは違うと思った。












    暁 -akatsuki-











    俺が霊術院に入ったとき、ほんま面倒な団体やな、と思った。
    正義感に溢れ、ただ己の力が一番やと思ってる。
    そんなわけないのに。
    いつか自分の壁にぶつかる。
    全員が全員やないやろうけど。
    ここにおる9割はきっとそうや。



    そう思いながら入学式を終えた。
    そう思いながら五年が過ぎた。
    そう思いながら冬が始まろうとしていた11月。
    俺は廊下ですれ違った女を二度見した。

    今まで見たことないくらい綺麗やった。
    黒い艶のある髪は肩に付かへんくらいに短かった。
    まつ毛は影ができるくらい長かった。
    ただ、雰囲気が、人を寄り付かさへんようやった。










    「なぁ、ラブ。めっちゃ可愛い子見つけたわ」
    「…は?お前、ここには可愛い子いないって言ってなかったか?」
    「そんなん撤回や。俺はあの子を探す!」
    「はぁ?何年かも分かんねぇんだろ」
    「根性や!!」
    「…もう勝手にしろ」










    それで、俺は探し当てた。
    あの忘れられへん横顔。

    俺よりも4学年下の、
    あの五大貴族の中でも朽木家と並ぶくらいの名家・家の次期当主ときた。


    そりゃ、あない綺麗やったらな


    それが本音やった。
    綺麗さと家柄の良さは比例する。
    これは俺の持論やけど。

    なんとしても諦められへんかった。
    が綺麗やからちゃう
    が金持ちやらかちゃう




    悲しそうやから




    金持ちには金持ちなりの悩みがあるんやろう
    綺麗な女にはそれなりの悩みがあるんやろう


    俺は別にと絶対に話したいわけちゃう


    いや、それはちょっと言い過ぎやけど。
    勿論できれば、仲良くなりたいけど!


    もし俺と話して、がちょっとでも笑うんやったら
    関西人根性、出したろうやないか!










    「…なぁ!」
    「…」
    「なぁ!!」
    「…誰だ、おぬしは」
    「俺は平子真子!五年や」
    「…私は忙しいので…」
    「そんなんで疲れへーん?」
    「…」
    「笑ったほうがおもろいでー」
    「…」
    聞こえてる!?
    「聞こえておるわ、馬鹿者!
    「あは!そっちのほうがおもろいやん」
    「!」
    「絶対そっちのほうがええで、ちゃん」
    「なっ!」








    一回、名前で呼んでみた。
    案の定、真っ赤な顔で反撃しようとする。
    めっちゃ可愛いやん、やっぱり。










    「まぁ、仲良よぅやろうや」
    わ、私は貴様が嫌いだ!!









    そう吐き捨てられた。
    特別、嫌な気はせぇへんかった。
    寧ろ、何故かやる気が出た。








    「俺が、お前をひっぱりだしやろうやないか」









    そのずっと沈んだままの気持ち。
    真っ赤な暁、見せたろうやないか。








    2016/11/20