フワッと香る春の香りは、いつも私を切なくする。












桜 -SAKURA-












「はい!この季節がやってきました〜!特別隊恒例・春のお花見大宴会〜!!










テンション高くチラシを配りまくる椿と葵。私は無視をして書類に目を通していた。









「もう、隊長!もっと関心持ってくださいよ〜!」
「そうですよ、今年は他の隊も呼ぼうと思ってるんですから」
「…は?」
「もう決まってるのが〜、京楽隊長でしょ〜浮竹隊長でしょ〜あと、日番谷隊長に乱菊さん、弓親に一角…」
「ちょ、ちょっと待て…一体何人…」
「あと、朽木隊長!
「…白哉坊まで…」
「隊長格は全員声かけました!」
「椿…一体何人呼んだんだ?」
今現在で参加表明しているのはざっと100名です!









ガクッと肩を落として私はため息を付いた。










「葵…経費はあといくら残ってるんだ?」
「旧年度の繰り越し分を加味して…ざっと20万…」
「全然足りんじゃないか…」
「うちは元々、交際費低めに設定してるんで」









そろばんを弾きながら淡々と計算する葵の姿を見て、またため息を付いた。










「はぁ…今月は赤字だ…」












不安に思いながらやってきた宴会当日。
絶好のお花見日和で、桜も満開に咲き乱れていた。
飲んで食べてのどんちゃん騒ぎ。
日ごろから神経を尖らせている隊長格にはいい息抜きだろう。
私は少し離れた丘の上で、酒瓶片手に瀞霊挺を見下ろしていた。









「一人で何を黄昏てる?」
「…白哉坊か…ふん…おぬしの分からぬことよ」
「…そうか」
「…」
「…」










沈黙。
それに耐えきれず、私は静かに口を開いた。










「本当は…」

「本当は、桜なんて大嫌いなんだよ
「…」
「すぐに散ると知っていて、何故これほどまでに全力で花を開く?そして、何故これほどまでに…美しい?」
…それは自らの理想だからか?
「…」
「全力で戦い、全力で散る…桜のように、そなたはなりたかったのでは?」
「…」










私は、白哉の言葉を聞き、一杯の酒を煽った。









「そうだな…私は桜のように美しく咲き、散りたかったのかもしれない…」
「…」
「だが、散れなかった…むしろ私は…只々地面に生えている雑草のように、今も悠々と生きている。」
…」
「あの時、桜のように散っていたら、こんな惨めに何十年も何百年も生き続けることもなかった…!
「…」
「…だから、私は桜が嫌いだ」









私は立ち上がり、白哉に背を向けた。
すると、後ろから白哉の声が風に乗ってやってきた。










が、桜にならなくてよかった
何を…!
「桜は何度も咲き、何度も散るが…命は一度散ると終わる
「…」
「それを私はよく知っている」
「!」








白哉は私を置いて、宴会場へと帰って行った。










「白哉坊…」
、そなたの気持ちは痛いほど分かる。忘れろとは言わぬ。だが…前を見ろ。桜のように」
「!」
「桜は…散ると、次の春のことを考えるそうだ」










上を見上げた。
淡いピンクの花びらが風と共に舞い散った。









「ふふ…あはは…!そうだ…そうだな…私は桜になれなくて良かったのかもしれないな」












散る -CHIRU-












なぁ、真子…
もし願いが叶うならば、もう一度、そなたと桜が見たい









2016/03/19