ちゃーん!!あっそびーましょー!!







最近、隊舎の前でこの声がよく響く。
とてもイライラする声のトーンだ。
何も考えてない能天気で、アホっぽい声。
ほっておけばおくほど、声が大きくなる。








ちゃーん!!おらへんのー!?あっそびっま…」
だー!!!!煩い!!平子!!
「なんや、おるやん」
「いるに決まっておるだろ!今は執務中だ!!」
「いやー、昼メシ一緒に食おうと思って誘いに来たんやけど」
「おぬしとなど食わぬ。さっさと帰れ!」
「えー。ケチやのぉ。ちゃん」
「その呼び方止めろ!」
「へーい。ほな、また来るわw」
「来んで良い!馬鹿者!」








平子が帰るときには私は肩で息をしていた。
これほど大声で喋り続けたことなど最近では、記憶にない。
平子は五番隊の隊長をしている。
そう、彼は隊長なのだ。
あのような奴が隊長である隊がどれほど大変か、想像するに足りんわ。

翌日の午後、私が休憩がてら、散歩で商店を見回っていると、
シュッと人影が風のごとく前を横切った。
そのあと、大声が飛んできた。








オラァァァアア、ハゲ真子ィ!!返さんかーい!
「嫌じゃ。これは元々俺のや!」
「ウチのや、ボケ!」
「口悪いぞ、ひよ里!」
「お前に言われたないわ!!」

「おい…」
「ん?あ、隊長か」
「おぬし、十二番隊の…」
「おう!ちょっとすまんの、今、ハゲ真子追っかけてんねや!またな!」
「は…」








私が何か言う前にそのまま、風のように去ってしまった。
私は何やらおかしなものを見たのかと思い、
一人でお団子を買って執務室へ帰った。

その次の日も次の日も、平子は私の隊舎にやってきた。








ちゃーん!今日こそ、一緒にメシ食おうやー!」
「しつこいぞ、平子!メシくらい他の奴と食えんのか!」
「…もしかして、ちゃん、気づいてない?」
「何がだ?」
「いやいや!俺、男やん!分かる?」
「それくらい知っとる!」
「男がやで?こうも毎日、どうも思ってない奴誘いにくると思うか?」
「…」
「俺かてそない暇ちゃうで!?どれだけ毎日仕事から逃れるための理由を…」
「は?」
「いやいや!それは置いといてやな…なぁ、ちゃん、分かる?」
「…っておる…」
「え?なんて?」
「分かっておるわ、馬鹿者!!」









平子は私の顔を見てきょとんとしていた。
たぶん、私の顔は今までにないほど赤くなっていたに違いない。

もちろん、平子が私に好意を持っていることくらい気付いていた。
でもそれに気付かないでいた。
だって…恥ずかしいではないか…
こうも公に誘われると、受け入れるのに勇気がいるのだ。








「やっぱりな!じゃあ、昼メシ、一緒に食おうや。えぇ店知ってるんや」
「…一回だけな!///」
「またまたぁ!なんぼでも誘いに来るやん!」
「煩い、黙れ!」
「わー。ちゃん、怖いなぁ。まぁ、ひよ里よりマシやな」










手も足もでない









「まったく…おぬしには敵わんわ」
「褒めてくれてありがとさん!」
「褒めとらん!」




2012/08/24