いつもと変わらない朝が来る。
瀞霊挺はいつもと変わらない朝日が昇って来ていた。
寝巻から死覇装に着替えて、隊長羽織を羽織る。
歩けば、紅の羽裏が覗き、隊員たちは頭を下げる。
朝食は席官20人と取る。
連絡事項を一気に伝えられるから。






「本日の連絡事項は以上です!!」






副隊長の声が座敷全体に木霊した。
今日も一日が始まる。












「ねぇ、隊長。今日のお茶菓子、ここのたい焼きがいいです」
「なんでまた…」
「最近人気なんですよー?なんでも行列ができるって」
「へぇ。じゃあおぬしが行って参れ」
「えー!?」
「自分が食べたいと申したのであろう?10ヶ買って参れ」
「実費ですかぁ?」
「半分出してやる」
「いってきます!!」







特別隊…
それが私の治める隊である。
最近はめっぽう平和で他の隊と業務もさほど変わらんが。
すると、バーンと執務室のドアが開いた。







「なんだ、真子か…」
「なんだ…やあらへん!!今日、約束してたやんけ!!」
「…なにを?」
「一緒に甘味処行くってゆうてたやん!!」
「…あ…」
「なんやそれー!!俺、待っててんで!?」
「すまぬ…すっかり忘れておった」







ドカッとソファに座る真子。
こやつは五番隊の隊長をしている。
隊長にしては腑抜けた顔をしておるが、知識、実力共にトップレベルの死神だ。
そんな彼が私と共に生活するようになってから何十年かが過ぎようとしていた。
お互い、飽きずに一緒にいられるということは相性がとてつもなく良いのであろう、
と私は勝手に想っている。







「なぁ、…」
「なんだ?」
「今から甘味処行っても時間、中途半端やから夜、飯食いに行こうや」
「そうだな。」
「お前の好きなとこ連れてったるわ」
「…そなた、今日はやけに優しいな…どうした?」







私がふと彼の顔を覗き込むと、ふいに唇に温かいものが当たった。






!!
「今日、お前の誕生日や。
「へ?」
「なんや!自分の誕生日も忘れとったんか!」
「そうか…もう一年が過ぎたのか。早いのぉ」
「なんやババァみたいなことゆって!」
「ババァだからな」







二人顔を合わせて笑う。
そんな毎日が好きだった。
真子といるといつも笑っていられた。

次の瞬間、周りが真っ暗になった。
瞬きをした瞬間だった。
今まで前にいた真子がいない。
周りには何もなかった。
ただただ、闇が広がっていた。

急に不安になった。
何故、私は一人なのか理解できなかった。
急に訪れた闇は私を恐怖に陥れた。
何が起こったのか、
今、私はどこにいるのか分からなかった。

また次の瞬間、私は堕ちた。
暗い水の中に。
もがいた。
息が出来ないから。
バッと起き上った瞬間、

私は布団の中にいた。
寝汗で寝巻が濡れていた。
泣いていた。
頬に流れる涙が止まることはなかった。

真夜中だった。
次は一瞬で理解できた。
全てが夢であったことを。
真子がいない。
当たり前だった。

死んだのだから。

どこからが夢なのかは分からないが、
全てが夢であったことは理解できた。

真子がいるはずがない。
彼は何十年も前に死んだのだから。
未だにこんな夢を見るなんて。

あぁ…そうか。
今日は私の誕生日だ。
私は毎年、自分の誕生日が来るたびに、
この夢を見て、そして涙を流すのだろう。








Mezzanotte







真夜中に流す涙は
私以外誰も知らない







2011/09/25