ー!!温泉でも行かへーん?」
「真子!?な、何をイキナリ…」
「いやぁ、流魂街にえぇ温泉宿見つけたんや。一緒に行こや」
「いやいや。非番が合わないだろう?」
「合わす!!」
「…は?」








私も、今話している私の大切な人、平子真子も尸魂界では護廷十三隊の隊長という地位に付いている。
並大抵の死神にはなれない地位だ。
そんな地位の二人が今、そろって温泉旅行の話をしていた。
勿論、忙しくないわけではない。ただ、非番も少しは融通の利く地位なだけ…
厳しい言葉を言う私も、内心、とても楽しみにしていた。








「おいこら、ハゲ真子!!お前、と温泉旅行行くんやて!?うちもまぜろ!」
「はぁ!?なんでお前も一緒に行かなあかんねん。俺はと二人で行くんですぅー。邪魔せんといてんか!」
「うちかてと温泉行きたいんじゃ!!まぜろ!」
「いーやーやー!俺はと二人で行く約束したんや!!」
「はぁ!?」







いつもこんな感じ。
そんな言い争いでさえ、私には嬉しい日常だった。






「なぁ、。二人で行きたいよなぁ?」
「あ?あ、ぁ…」
「ほらみぃ!!」
!こんなエロガッパと二人で行ったら何されるか分からんで!」
「何を言いよる!?お前連れてったら家族旅行みたぁなるやろが!!」
「はぁ!?どういう意味やねん、それぇ!!」
「俺が父ちゃん、が母ちゃん、お前が子供じゃ!!あ…でもお前みたぁな子供いらんわ!」
「なんや、むかつくなぁ!!うちは子供ちゃうわ!!」






何故私の執務室でギャアギャア騒いでいるのかは知らんが、こんな日常も、何年も続けば慣れるものだ。
こういう日常が続けばいいと願い続けていた。
何も飾らない、そんな日常が。


だが、死神という職業柄、いつ崩れてもおかしくなかった。
そして崩れる時は…一瞬なのだ。
温泉旅行を一週間前にしたその日から、私の執務室は静かになった。
筆を滑らす音、外の鳥のさえずりさえ聞こえるほど静かだった。
いつもだったら、この時間は真子とお茶菓子を食べている時間で。
そこにひよ里が来たり、白が来たり。
たまにリサが来て喋って行って。
でももう誰もいない。
日常というものはこうも簡単に崩れさるものなのかと、思い知らされた。
心の底では分かっていたはずだった。
誰がいつ、死ぬかなんて分からない。
そんな職業なのだから。

でも、もし願いが叶うなら。
もし一つだけ、望みが言えるのなら。
あの日常に戻りたい。
だたそれだけが今の私の望みであり、これからの望みでもあろう。

もし永遠があるのなら。
もし、この世の中に永遠というものが存在するのなら。
それは花のように美しいのだろうか。
闇のように恐ろしいものではないはずだ。


私はふと、執務室を出て、ある丘へと向かった。
そこは瀞霊挺を一望できる場所で、私と真子が好きだった場所。
そこは誰にも邪魔されない場所。
心地よい風が吹き抜ける場所。
私がどれだけ悲しんでいようと、そこにはいつも同じ風が吹き抜ける。


永遠とはなにか…
一生とはなにか…
死神にはどちらも時間の概念を通して意味をなさないものだ。
永遠に咲き続ける花がないように、永遠に枯れぬ花がないように…
永遠に想い続けられる心もなければ、永遠に一緒にいられる人もいない。
人間ならば…
だが死神は違う。
死ななければ、強ければ、永遠に一緒にいられる。
そう思い続けていた。
だから隊長まで登り詰めた。
強い隊長に。
彼も隊長になった。
死ななければずっと一緒にいられると思っていた。
そう簡単にはいかなかったが。

だが、私は想おう。
永遠に彼のことを。
永遠という意味を私が担おう。
真子、私は永遠にそなたを想う…
そしてまた、会えるときを待とう。
永遠に…









IMMORTELLE









永遠という名の花があれば…
それは咲き続ける花なのだろう