どれほどの時がたったのか。
    周囲はまた雑音が生まれた。







    紅蓮の愛


    40.貴方さえ助かれば…








    「…おい、隊長、あの破面の男と抱き合ってるぞ
    「あいつ、誰だよ、マジで」

    「どうして隊長様、泣いてるの?」
    「金髪の人が泣かしたのかな?」








    そんな声を聞こえてきた。
    しかし、そんな声よりも大きな咳ばらいが、上から聞こえた。









    「ごほんっ!おい、真子。いつまでを晒し者にする気だ?」
    「俺のや!別に晒し者になんか…オマエ、裸足やんか」
    「あぁ…気が付いたらそなたの霊圧を追っていたから…」
    「ほんま、可愛いこと言うなぁ!」
    「ばっ…真子…っ!












    そんなことはない、と言葉を続けようと口を開いた瞬間、
    視界が歪み、真子の胸に倒れこんだ。








    !?
    「あ、ぁ…すまぬ…貧血だ…」
    「はやく卯ノ花サン!!おい、ラブ!行くで!
    「きゃ!?真子!?
    「あ、おい!」









    真子はを抱き上げると、そのまま瞬歩で四番隊の隊舎まで向かった。
    まぁ、真子の足なら一瞬なのだが。
    私はすぐにベッドに寝かされ、卯ノ花が来るまで動くことも、話すことも許されなかった。









    「先の戦闘で血を無くし過ぎたせいでしょう。この程度ならすぐに治ります」
    「私もそう言ったのだが…すまんかった、卯ノ花」
    「…良かったですね、隊長」











    ※   ※   ※








    藍染が尸魂界に向かった直後、真子は自らの傷も顧みず、の元に走り寄った。
    その場は血で埋め尽くされ、の身体は冷たくなりつつあった。









    「あかん…あかん、!!








    勿論、が真子の声に反応するわけもなく、動かないままだ。









    「おい!四番隊!!はよ…はよ、誰かおらんのか!!!








    真子の怒鳴り声が周囲に響く。
    救護班は大勢いたが、誰も破面の軍勢である真子の声に応えようとはしない。
    ハッチも、ひよ里の生命維持に手一杯で駆けつけることができないでいた。








    …すまん…俺が…ッ…

    …一度、離れていただけますか?
    !? あんたは…」
    「貴方の霊圧は、今の隊長にとって悪影響です」
    「卯ノ花サン…」









    卯ノ花は静かに、しかし、しっかりとした口調で真子にそう告げた。
    すぐに治療用の結界が張られ、簡易的な手術が行われた。
    手術中、卯ノ花は真子に話しかけた。








    「…貴方の傷もひどいではないですか」
    「俺なんかどうでもえぇ…さえ助かれば…
    「貴方は二度も隊長を苦しめるのですか」
    「え…」
    また、貴方は彼女の前から消えるつもりですか
    「…」
    「勇音、この方の治療をお願いします」









    卯ノ花の横で助手でしていた虎徹勇音は卯ノ花の命令通り、真子を治療し始めた。








    「…隊長のできる限りの治療は終わりました。
     出血多量のため、増血丸で補いましたがここ数日が山場でしょう」
    「山場…!?」
    「もともと霊圧の高いお方ですが、生きるということに固執しない方ですので…」
    「ッ…」
    「目覚めるまでずっと…そばにいてあげてくださいね」
    「…あぁ。おおきにな、卯ノ花さん」
    「お礼なんていりません…私はこの百年、ずっと隊長を見てきました。
     これからは貴方が、彼女を護ってあげてください
    「…一番難しいこと、言うなぁ」








    自嘲気味に笑う真子。










    ずっと護りたいんや、ほんまは…










    2016/11/06