平子真子は総隊長の前に姿を見せた。
私は俯くしかできなかった。
この百年、見たい会いたいと思っていた相手なのに、まともに姿を見ることさえ、できなくなっていた。







紅蓮の愛


38.再会








「…恨みを…晴らしに来おったか」
「藍染になァ、あんたのことは別にや。
 恨んどるとしたら、あんたらがここにメッチャ強い結界張って戦っとったことにやな!
 外で見張っとったコイツ見つけられへんかったら永久にこの周りグルグル回り続けとったとこや!」
「申し訳ありません…!通していいものか逡巡したのですが内部の戦況を見て…」
「…」
隊長の卍解を感じまして…通すことに…」
「よい…平子真子。
 …今はおぬしらを”味方”と考えて良いのかの








味方、という言葉に反応し、私は顔を上げた。
一瞬、真子と目が合った。
その目は何故か悲しそうで、すぐに逸らされた。









「…そんなもん決まってるやろ、あかんわ
「…」
「…」
「俺らはあんたらの味方ちゃう。俺らは藍染の敵、ほんでもって。
 一護の味方や









そして真子は、仲間の元へ戻った。
私はとても苦しかった。
藍染に傷付けられたせいではない。
真子が、死神を嫌っているという事実を、知ったことに息が出来ないほど苦しめられた。
真子が、ひよ里が、みんなが死神を嫌いになったのは、きっと…


私のせいだ










「やっと戻ってきた」
「ハナシ終わったのか?」
「…終わってへんけど、もうムリやろ
 敵さんもそろそろ、シビレ切らす頃や」
は、いいのか…?」
…いくで









真子はラブの質問に答えることなく、仮面を身に着けた。
そして真っ先に向かうは藍染の元。










「どや、随分虚化を使いこなすようになったモンやろ?
 …藍染、終いにしようや」











※   ※   ※









私はポタポタと血を垂らしながら、歩き出した。








「…や…どこへゆく?」
「勿論、私の敵は藍染ですから」
「そんな身体で、先に治癒を」
「いいえ、どうせ百年前に失っていた命です」
「…すまなかった」
「…」
「おぬしには嘘を…」
「今は戦う時です。ここで勝たねば総隊長の嘘も無駄になります」












※   ※   ※










懐かしい甘い匂いがした。
これは…真子の「逆撫」の匂い…









『さて。右と左、どっちでしょーか!』
『…右』
『ブー!正解は、上下前後も逆の右でしたー!
『右か左か、で言ったらあってるだだろう』
『ちゃうねんなー!こいつは全部を逆にすんねん、すごいやろ!?
…めんどくさい
『へ!?そうか!?おもろいやん!あ、、逆撫でのことは誰にも内緒やで?』
『…まぁ、そなたがそういうなら…』









そんな言葉を思い出した。
左右、上下、前後、全てを逆にする逆撫での能力…
普通に考えてもその能力を知らされたばかりでは適応できない。
だが…相手は、藍染…

藍染の刃が真子の真後ろを捉えていた。
次の瞬間、私は動いていた。
背中にピキッと尖った痛みを感じた。









ぐっ…
「これはこれは…」
「な…!…!?
「真…」








肉が削がれ、冷たい刃が骨に当たるのを感じた。







百年越しの再会、というわけか」
…!?
「真…子…そなた…だけは…」
!!!!







重力に逆らわずに落ちていく。
真子が落ちていく私に手を伸ばした。
私はそれを掴もうと同じように伸ばしたが、その手を掴むことなく、瓦礫に叩き付けられた。









「美しいモノを壊すことがこれほどまでに楽しいとは…」
「…」
「私もくんの美しさには一目を置いていてね。
 美しい彼女をずっとこの手で壊したかった…二度と元に戻らないまでに、ね
藍染…!!
「いい眼だ、平子真子。だが、遅かった」
!?
君たちは百年前に、消えたんだよ









私は、目を開いた。
霞んでほとんど見えなかったが。
真子が私の名前を呼んだ気がした。
私の意識は、そのまま闇に消えた。









真子…そなただけは…死なせは…しない






2016/10/30