ズブッと私の身体から刃が抜けたのを感じた。
黒い死覇装が赤黒く染まっていく。
そして私は、瓦礫の中に落ちる人間を見て目を見開いた。







烈…志……?








紅蓮の愛


37.破面の軍勢







特別隊副隊長である桐生烈志は、訳が分からなかった。
何故自分の隊の隊長が、己に刃を向けてくるのか。
どれだけ叫んでも彼女には聞こえていないようだった。
ただ、烈志にとって今の彼女は、刃を持った女狐にしか見えなかった。
そこから動くことを許されず、右腕を切り落とされた。

痛みなどない。

ただあるのは、自らの隊長に斬られたという無念さだけだった。
そして、今までの戦闘で霊圧を使い切っていた烈志は瓦礫の中へと落ちた。










「君が斬ったのは副官の桐生君だ」
「え…うそ…」
「嘘じゃあない。私の完全催眠は君の卍解を破れるように改造したんだ」
「そんな…」
「これだけは大成功だった。私にとって君の鈴神楽は天敵だったんだ。
 心の奥底まで見通して操るからね…だが、もう今の君の心は怖くない









パリン







何かが割れた。
それは響凜鈴神楽の張っていた見えない結界であり、私の心だった。








あぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁっ!!









私は振り返りざまに剣を振った。
もちろん、藍染に届くわけはない。
私はビルに叩き付けられた。









「さて。君はあの時死ぬはずだった。
 ほんの百年、寿命が延びただけ。今度は私の手で、終わらせてあげよう」









藍染の指先が私の喉元に触れる。
その時だった。










待てや

「…」

「久しぶりやなァ…藍染









私は目を疑った。
藍染の背中越しに見える、あの懐かしい面々を。
藍染もその姿をみるために一瞬動きを止めた。
私はその隙に、瞬歩で総隊長の後ろに付いた。









「総隊長…!」
…平子真子…!やはり現世に…身を潜めておったか…」
「…」









平子真子は被っていたベレー帽を手に持ち、くるくると回しながら口を開いた。









「久しぶりのご対面や。
 十三隊ん中にアイサツしときたい相手がおる奴いてるか?」
いてへん!
「ウルサいなァ ひよ里!
 オマエには訊いてへんねん!」
「ウチにはきいてないてどういうコトやねん!!
 みんなにきいてんやろ みんなに!!
「オレは別にいいぜ」
「ボクもいいよ」
「ワタシハ…十三隊にはいまセン」
「俺もいねぇ!」
「ベリたんいないね?なんでー?」
「…」









ひよ里、ラブ、ローズ、ハッチ、拳西、白の順に口を開く。
リサは無言で、その場から消えた。








「あ!どこいくねん リサ!!
「…ほな俺も、総隊長サンとこアイサツしてくるわ」








2016/10/30