口の中に広がる鉄の味に顔をしかめ、私は、それを吐き出した。
紅蓮の愛
35. 卍解
「貴様は…」
「第三十刃 ティア・ハリベルだ」
「…日番谷はどうした?」
「…あそこに転がっているやつか?」
煙が晴れると、そこには日番谷が倒れ、動かなくなっていた。
「…はぁ、あやつはまだ成長途中だ」
「…だろうな」
「ふふふ!では第三の十刃よ。私が相手になろう」
ガキンッ
何度も刃が合わさる音が木霊す。
それが耳にも慣れた頃、ハリベルは一瞬、動きを鈍くした。
私はその隙を見逃しはしなかった。
ニヒルな笑みを浮かべ、彼女の腹を刃で貫いた。
「がっ…は…」
「ふふふ…動かぬだろう?」
「…ッ…」
「貴様、その姿、帰刃(レスレクシオン)後の姿で何度、音を聞いた?」
「…」
「いや、どれだけの時間…『聴覚を使った』?」
「!?」
私はハリベルから刃を抜くと、首元にそれを当てた。
「だから松本にも言ったんだ。『早く片付けろ』と。
この世界は今、闇の音に満ちている」
最期に私はハリベルに微笑むと、その首と身体をいとも容易く切り離した。
「ふふふ…弱いのぉ…全く以て…弱い…!!」
※ ※ ※
「はは…愛染隊長、ハリベル、死にましたやん」
「ふん。どうぜ雑魚だ」
「…ちゃんがこないに本気なん、ボク初めてやわぁ」
「隊長もこんな霊圧を持ってるんだな…」
「私は2回目だよ…おぉ、噂をすれば…隊長、久しぶりだね」
私は総隊長が覆った炎の中に入った。
血を吸った鈴神楽は、今までよりも艷やかで、妖艶に光った。
「藍染…私に殺される日がやっと来たな」
「…そうかな」
「百十年前のあの日、私は誓ったんだ。貴様は必ず、我が刃で切り刻むと」
私は怒りで気が狂いそうになるのを抑え、そして呟いた。
「卍解…響凛鈴神楽」
2016/2/9