十刃と呼ばれた破面は、獣の目をしていた。









紅蓮の愛


23.闇への階段









が戦いの中心地に行った時にはもう、ほとんどの戦いは幕を閉じていた。
日番谷は全身から血を噴き、倒れていた。
松本は織姫を抱え、自分の隊長の元に走り寄っていた。
黒崎一護は十刃に押され気味で、十刃は刀に手をやっていた。








ガッキン








金属同士の重なる音が周囲に響き渡った。
破面を斬ろうとした私の前に立ちはだかる東仙を目に、私は息を飲んだ。
異様な白い覇装を待とう彼は、私の知った彼ではなかったからだ。









…東仙…貴様…
「私は貴女と戦いたくはない、隊長」







破面を守り刀を抜いた元同朋。
は瞬時にその元同朋と距離を取った。







「今回はこちらの監督不足だ」
「…如何様にそのような訳を申すのか理解に苦しむ。
 貴様らは私が斬って終いだ。
 そのまま黒腔を開いていてもらおうか。」
「それは無理な願いだ。隊長」
「貴様に隊長などと呼ばれとうないわ。
 さっさと斬って終いにするぞ…」








私は刀を構えようとしたが、叶わなかった。
驚きの表情で私は自らの腕を見た。
全く動かない腕に


しまった…


という言葉だけが頭をよぎった。







「そう。貴女は気付くのが遅すぎた…」
鈴虫か…ッ!
「音波系最強の貴女の斬魄刀なら数分しか封じることはできないが…
 今はそれで十分だ」
「っ!」
「さて。帰るぞ、グリムジョー」

「はんっ!!
 …俺の名を…忘れんじゃねぇぞ、黒崎一護!!
「!?」
「そして二度と、聞かねぇことを祈れ。
 
 グリムジョー・ジャガージャック
 
 この名を次に聞く時が てめぇの最後だ。死神」









黒腔が閉じた瞬間、私の刀は自由を取り戻した。
肩の力を抜き、刀を鞘に戻した。







『主、すまぬ…』
「いや、いいさ。私が気付かなかったのが悪い」
『…』
「さて…課題が多いな…」







私はアパートの屋上で治療をしている織姫の横に降り立った。
ルキアの傷が癒え、冬獅郎の傷が癒えた。








「大丈夫か、冬獅郎、ルキア」
「あぁ…」
「はい、すいません…」
「いや。謝るな。今日はもう遅い。明日、学校の屋上集合だ」
「「「「はい」」」」
「あ、あの、私は…!」
「織姫はいつも通り授業に出ろ。これは死神間の問題だ」
「…」







ふと一護を見た。
何かを考えている様子だったが、何を考えているのか私には分からなかった。

この時に気付いていれば、と今となっては後悔しかない。












2013/07/11