ちゃぷん、とお湯の跳ねる音がこだました。










紅蓮の愛



22. 襲撃の夜









風呂から上がると、タオルと浴衣が用意してあった。
私はありがたく、それに着替えると、頭にタオルを乗せながら廊下に出た。
台所からは、鉄裁とジン太(そう呼ばれているのを耳にした)の声が聞こえていた。







「こら、ジン太殿!つまみ食いはいけませんぞ!!
「なんでこんなに和食ばっかりなんだよ!!」
「それは様がいらっしゃって…」

「別に気を使わんで良いぞ」

「「わぁっ!?」」






目を細めて彼らを見た。
ジン太の後ろにデカイ身体を折り曲げて隠れようとしている鉄裁。
勿論、隠れられるわけもなく、全てが見えていた。

私は台所を横切り、冷蔵庫を開けた。
中を覗くと、意味不明な化学薬品と同じ棚に「麦茶」と書かれたボトルを見つけた。
ボトルを取り出し、コップに注いで、飲んだ。
その一連の動作を息を殺して見つめていた二人。
そんな二人に私は目を向けた。







「そんなに私が怖いか?ん?」
「い、いいいいいいえ!!滅相もごさいませんよ!ねぇ、ジン太殿!?
「あ、あぁ。オレは別に…」
「たかが隊長という肩書を持つだけだよ、私は」
「…」
「ふーん。ま、オレには関係ねーけどな」
「はっ!まぁ、そうだな。おぬしには何の関係もない、ただの戯言だよ」






コップを鉄裁に預けたあと、私は喜助を探して、店舗の方へ向かった。







「…まだいる、店長…」
「何の用っスかねぇ…尸魂界の副隊長サンなんかにこちらは何も用なんか無いんスけどねぇ…」
「…恋次だな」
わっ!サン、お風呂、上がったんスね」
「あぁ。いい湯だったぞ。で、いつからいるんだ?」
「いやー、かれこれ2時間ほど」
「あやつも寝泊まりする場所がないのだろう。入れてやればいいではないか」
「そ、そんなぁ!もうウチには場所なんてないっスよぉ!」
「ふーん。まぁ、どうでもいいが。喜助、話があるのでな、後で良いかの」
「…勿論っス」







何も起こらず、夕食を終えた。
子供たちは今のテレビの前に座り、私たちは鉄裁の出してくれた緑茶を飲みながら、その光景を見ていた。







「で、話なんだが」
「またまたややこしい話ですか?」
「まぁな。総隊長からの指令だ。」
「こっちはもう尸魂界から追放された身なんですが」
「…一つ目は…」
あはー、華麗なる無視っスね
「冬の決戦までに、隊長格を虚圏に送れるよう、黒腔を固定してもらいたい」
「…」
「もう一つは、転界結柱を作ってもらいたい」

「言ってる意味は分かるだろう」







部屋にはテレビの音声しか聞こえない。
喜助は身動き一つせず、ただただ、黙っていた。

どれほど時間が経ったのかわからないが、
しばらくして、ようやく喜助が口を開いた。








「…わっかりましたぁ!そちらの頼みとやらは聞き入れましょ」
「すまないな」
「けど、コチラからも条件があります」
「…条件?」
「技術開発局の全面協力を約束してもらいます。
 そこで、空座町の原寸大のレプリカを作ってください」
「…」
「それと。貴女の力が必要だ、サン
「…どういう意味だ?」
「その意味はいずれ、分かります。
 コチラの条件も飲んでいただかないと、そちらのお願いは聞けません」
「…わかった。現世での決定権は私にある。その交換条件でいこうではないか」
「さっすが!サン、話の分かる…」
ッ!?店長!」





誰もが気づく霊圧。
ジン太が驚きと不安の声を上げた。
私はコトッと湯呑を静かに机に置いた。
子供達が冷や汗を流すのが見えた。






「テッサイさん、ジン太とウルルを頼みました」
「はい、店長」
「…喜助、おぬしはまだ出て来んでよい」
「…そうっスか?」
「あぁ。私が出れば終いだ
「…ほいな」








私は無言で居間を出た。
義魂丸を飲み込み、外に出た。
外には刀を抜いた恋次がいた。







「あ、やっぱ隊長、いたんですね」
「まぁな。ここの店主は古い顔馴染みだ」
「へぇ…!隊長、2体、近づいてますよ!」
「そうだな。気を抜くなよ、恋次」
はい!もちろんっスよ!」









破面2体が私たちの前にやってきた。
不気味な笑みを浮かべている2体に恋次は刃を向け、私は無言で破面を見た。








「ここは、一番の当たりのようだ。イーフォルト・グランツ」
「そーだな、兄弟」

「「…」」

「その羽織、隊長さんですね。」
「まぁ、そうだな」
「何番隊ですか?」
特別隊だ
「なんと!イーフォルト、こっちは私がいただきます!」
「あ、おい!待て!!







私に突っ込んできた破面。
爆炎とともに、恋次の姿を見えなくなった。







隊長!!??
「…恋次、戦場では己の心配だけしろと、白哉坊に教わらなかったのか」







爆炎が晴れた。
恋次の驚いた顔が見える。
もう一体の破面も驚いているようだ。
なにせ、私の手には胴体と頭部の離れた破面が握られていたのだから。







「貴様の敗因は、私の実力を見誤っていたことだ。」







ポイと捨てた破面の身体は重力に逆らうことなく、下へと落ちていった。






「阿呆な破面よ…貴様には私の名さえ、知る価値もない






パンパンと相手の血を拭う。
それからもう一体の破面を見た。






「貴様は先ほどのやつ良い強いことを願おうか」
「くっ…あいつはNo.18!!俺はNo.15だ!!」
「そうか…番号が付いておるのか。若い番号ほど強いというわけか?」
「…いいや。No.11以降は作られた順だ。十刃は比べ物にならない!!」
「そうなのか。お喋りな破面だ。さっさと…」
隊長、俺にやらしてはくれませんか」
「…」
「霊圧の感じからして一体います…その十刃が…!」
「…そうだな」
隊長…!
…死ぬなよ
「はい!」







ザッと瞬歩を使い、私はその場から消えた。







「行ってしまったか…まぁ、兄弟、貴様を殺して彼女も殺そう」
はん!俺に勝ってからから言えよ!」
「…面白い」













2013/03/15