すると窓からルキアが這い上がってきた。
「外から行くとはこういうことか…」
と一人納得するであった。








紅蓮の愛


20  欠片(カケラ)を残して…








「お…おい…今、マドから入ってきたぞ…!?
「何だあいつ…?」
「つーかあの赤髪とスキンは何だよ…?」
「おーい、黒崎ー…、それみんなあんたの知り合いー…?」









教室がざわざわしていたちょうどその時、
ルキアのとび蹴りが一護にクリーンヒットした。
そのあと間髪入れずに飛び交うビンタ。
一護は鼻血を出しながらルキアに怒鳴った。







「てめ…」
「何だ、そのフヌケた顔は!?
「…な…」
「ちょっと来い!!」
「ちょ…っ 何だルキア おい!!どこ行く気だコラァーーー!!







すると、ルキアは一護を引っ張って窓の外へ行ってしまった。







「…やっぱりこうなったわね」
「そっスね。全く世話の焼ける野郎だ…」
「まァ あんだけフヌケたツラ見せられちゃああしたくもなるだろうぜ」
そぉ?ヘコんでた顔もあれはあれでソソるもんがあったわよ。
 ですよねぇ、隊長!
「は?何故私に振るのだ?」
「同じ女として共感して欲しくて」
「いや…別に私は…」






そんな話をしていると、また教室がザワザワし始めた。







「黒崎、どうしたんだ?さっきの女にシバかれてからグッタリしてんぞ…」
「白目むいてないか…?」
「おーい黒崎ー…大丈夫ー…?」
「ヤベーぞオイ、死んでんじゃねーのか、アレ!?」
「やっぱヤベー連中だよ、あいつら…赤い髪だし…」

「…」
「気にすんな恋次、人間共のたわ言だ」







一角は聞く耳を持つまいと、平静を装っていた。
次の言葉を聞くまでは…







「イレズミだし…」
「金髪…」
「銀髪…」
「美人…」
ハゲ…
「オカッパ…」
「巨乳…」
ハゲ…


おい…今、ハゲっつった二人、順番に出て来い…
「気にしない方がいいっスよ、人間のタワ言なんだから」
「うるせぇッ!真っ二つにしてやらァ!」
「木刀で?」
「僕も加勢するよ、一角!!」






そんな騒がしい教室を見まわしていて、ふと一つの机に目をやった。
急に冷や汗が背中を伝うのを感じた。
…?」
という冬獅郎の声にも振り向かず、私はその机に触れた。
数人の生徒が机の周りから避けた。







「す、すまぬが…ここは…誰の席だ…?」






誰も答えるわけがない。
こんな得体の知れない一行に混ざって来た私の質問など誰が答えようか。






「誰でも良い…誰か、教えてくれぬか…」
「え、そこ、ヒラコってやつの席だよ。ヒラコシンジ
!?







その名前を言った生徒の目を見た。
私が睨んだせいで怯んでいるが、嘘を付いているようには見えない。
私は平静を保とうと深呼吸した。

隊長、どうかしたんですか?」

と乱菊の心配そうな声が聞こえた。
そんなはずはない。
きっと同姓同名なだけだ。



そんなはずはない。



現世にも霊力を持つ人間は少なくともいる。
それが似ているだけかもしれない。
いや、彼より少し荒々しい「ような気がする」
そう。
確信はない。
確信できない。
なにせ…





百年前だから…






私は「ふーっ」とため息を付いて、教室の外へ出た。






「用は済んだ。行くぞ」
「え、あ、はい!
 ホラ、あんたたちもモタモタしない!学校は引き上げるわよ、ボンクラ!」
「おい、その“ボンクラ”には俺も入ってんじゃねぇだろうな?」








教室を出ても、心の乱れは収まらなかった。
あの机に触れたときに感じた「霊圧」
でも、


忘れてしまった


彼の全てを忘れてしまった。

声も、
匂いも、
ぬくもりも、


全て。
でも、霊圧だけは。
いつなんどきも感じていた霊圧だけは忘れていなかった。
失われたと思っていた。

いや。
失われた。

一度は失われた霊圧が何故、現世の、
一護の高校で見つけられたのか、分からなかった。















2013/03/13