一護たちが現世に帰って数週間、急きょ、隊首会が執り行われることになった。








紅蓮の愛


16  真実へ








「それではこれより…隊首会を執り行う!」









内容は、藍染が手に入れた崩玉から出来る成体の破面(アランカル)についてだ。
勿論、護廷隊は藍染の野望を止めることと共に現世を守らなければならない。
よって、結論として現世に死神を送ることとなった。









「三番・五番・九番隊は隊長不在のため、副隊長が隊を引っ張るよう、頼む。
 特別隊は通常任務を執り行うのと共に、現世の安全確保も視野に入れて動いてもらいたい。
 今回の隊首会は以上じゃ!解散!









それだけ聞いて、他の隊長はぞろぞろと一番隊から出て行った。
でも私は、少しの間、じっとそこにたたずんでいた。
烈志に名前を呼ばれてやっと自分が何をしているのか気付いた。








隊長!隊首会、終わりましたよ」
「…え?あ、あぁ…」
「藍染のことですか?」
「…まぁな」
「何があったのか詳しいことは知りませんけど、
 隊長を苦しめているのが藍染なら、俺は藍染を…」
「烈志…ありがとう。さ、行こうか」
「は、はぁ…」








執務室に戻ると、葵が書類整理、椿が部屋の掃除をしていた。
二人とも、藍染たちから受けた傷は完治して、仕事復帰していた。








「「隊首会、ご苦労様でーす」」
「あぁ。」
「隊長、お茶、飲みますかー?」
「あぁ、頼む、椿」
「はーい」
「隊長、判子ください」
「あぁ、葵」

「「…隊長、何かありました?」」

は?なんだ、二人とも…」







葵は書類、椿はハタキを持ちながら、ズイッと私の前にやってきた。
椅子に腰を下ろしたところだった私は、目を丸くして二人を見た。








「葵は騙せても私は無理ですよー!男ですか!隊長!?」
「…は?」
「いやー。隊長、元気なさげだから…男の影があるのかなぁって」
「椿、何言ってるのよ。隊長、無視してくださいね、無視!」
「ふふふ…私に男などおらぬよ」
「うーん。そこもしっくりこないんですよね、隊長、超美人なのに」
「そうか?」
「そうですよ!超美人で超家柄良くて超強い!!完璧じゃないですか!!」
「完璧な女を欲しがる男などおらぬよ」
「えー?」









私は微笑みながら椿を見た。









「さ、椿、お茶をくれぬか。喉が渇いた」
あ!すいません!只今、お持ちします!」









真田姉妹には私が退院した後、謝罪に行った。
勿論、藍染での怪我に関してだ。







『隊長、何言ってるんですか、私たちは隊長の部下ですよ。ね? 葵』
『そうです。隊長の命はなんでも聞きます。』
『…』
『いつもの隊長じゃないですよ。どうしたんですか?』
『…自分のやってることが分からなくなった』
『『隊長?』』
『いや、別に…まぁ、仕事は来週から復帰してくれ。今週はゆっくり休んでいいから』








それだけ言って帰って来たのだ。



あの事件後、烈志、真田姉妹、郁斗は私の顔色をうかがうようになった。
百年前のことを知らない彼らにとって、私が何を思い続けているのか疑問なのだろう。

私は椿に入れてもらったお茶を持って縁側に出た。
私が日ごろから手入れしている日本庭園が広がっている。
そこに流れる小川の横に隊花である彼岸花が一輪だけ咲いていた。








「もう咲く時期か…」







天国から咲いたかのように見えるそれは、天上の花とも呼ばれている。
『刹那』を表す花は、私の心を見据えているようだ。








「花言葉は、あきらめ…想うのはあなた一人…
 まるで私のようではないか…これほどの花があるか?真子…」








あれから、真子のことをよく考えるようになっていた。
この百年間、自ら考えないようにしていたのに。
もう声も、匂いも、覚えてないのに。

こんなにも想い続けているのに、
もう彼はいない。
会えることはない。

そう思いながら湯呑を見た。
もう湯気はなかった。







「私は…一生、報われぬことをした…」









2012/09/15