ここまで霊圧が高いと、すぐには死ねぬ。
私は目を開けた。






紅蓮の愛



14 狂った彼岸花








あ、藍…染…!

「あぁ…まだ生きていたかい」
!喋るな!」
「旧友の状態は気になるか、夜一」
「!貴様!!







霊圧を探れば、この場に隊長各のほとんどが集まっているようだ。
私は歯を食いしばって、身体を起こした。
血が身体から流れているのが分かる。


しかし、それを見た藍染は笑みを浮かべた。





「…どうした、何が可笑しい、藍染」
「…あぁ、済まない。時間だ」

「!離れろ、砕蜂!!」








大虚の「反膜」が藍染・市丸・東仙を包んだのが見えた。
周りの声が反響して聞こえる。
命が尽きていくのが感じられた。







「地に堕ちたか、藍染」
「…傲りが過ぎるぞ、浮竹。
 最初から誰も天になど立ってはいない。
 これからは…私が天に立つ」

藍染!!貴様は…貴様だけは許さぬ!!
!!」
「しぶといね。君も実験台にすべきだったと後悔しているよ、

 さようなら、死神の諸君。そして、
 さようなら、旅禍の少年。
 人間にしては、君は実に面白かった」







藍染が消えたあと、夜一が私に駆けてきた。
それでも私は狂ったように叫び続けていた。







藍染…!!あやつだけは…あやつだけは許さぬ!!
!!落ち着け!!
「許さぬ!!…許さぬ!!
「四番隊はまだか!!を…を…!!」








私は狂ったように藍染の名前を叫び続けた。
そして、駆け付けた救護班に麻酔のようなものを打たれた。
一瞬にして意識を失った。
寒さを感じるようになった。
闇を感じるようになった。
それでも、最後まで夜一の声は聞こえていた。









***








ふと目を開けると、白かった。
死んだら白い場所に行くのかと思った。
だが、頬を撫でる風を感じ、横を見ると、知った人物が寝ていた。








「…夜一…」
「ん…にゃ…?」
「夜一、起きろ。朝だ」
!!?大丈夫か!?今、卯ノ花を呼んでくるからな!」
「あぁ…」








急いで出て行った夜一を見送ったあと、私は身体を起こした。
身体中が軋み、痛んだ。
身体を見ると、包帯でぐるぐる巻きにされていて、自分の肌を見ることはかなわなかった。










!卯ノ花を…起きて大丈夫か?」
「あぁ。じき良くなるだろ」
隊長…気分はどうですか?」
「問題ない。心配かけたな、卯ノ花…」
「もう心配ないでしょう。あとは時が癒してくれます」
「…卯ノ花…」
「なんでしょうか、隊長…」
「狂ったようだったろう?」
「え…?」
「少しは覚えておるのだ。
 藍染の去ったあと…私は叫んでいた…
 狂ったように…いっそのこと…狂って…そのまま…」
隊長。貴女は強い女性です。とても。
 それだけ、心に留めて置いてください」








卯ノ花が出て行ったあと、また私は夜一と二人きりになった。
その状況が落ち着かないのか、夜一はそわそわし始めた。








「…どうした、夜一」
「別に!お、そういえば見舞いの隊士が来ておったぞ!」
「…あとでな」
「そ、そうか」
「…私はどれだけ寝ていた?」
「一週間じゃな。もう起きぬかと思ったぞ!」
「…夢を見た」
「…夢?」
「あぁ。真子やひよ里や白たちが出てくる夢だ」
「…」
「ひよ里や白の声は聞こえるのに…真子だけ…真子だけ聞こえぬのだ…」
…」
「一番聞きたい…今、聞きたいのに…聞けぬ、聞こえぬのだ」







静かに頬を涙が伝うのを感じた。
夜一は何も言わず、私を泣かせてくれた。







「すまぬ…夜一」
「あ…」
「もうおぬしのことを憎んでなどおらぬ。喜助のこともだ。
 許しはしておらんかったが、もう過去のことは水に流していた」
「……」
「だがら、喜助に会うたら言っておいてくれ。すまぬ、と」
「あぁ…」
「この百年、私は一人だった…
 親しい者が一瞬にして全員消えた。おぬしもだ、夜一…
 私はそれに耐えられんかった。何かを憎まねば、生きていけんかった。
 それだけは分かってくれぬか…どれも私の非力さ故だ…」
「良い…儂も悪かった…
 言えば、おぬしも来るというと言うだろう?それはおぬしの為にはならないと思うた」
「…あぁ…それも今なら分かる」
…」
「いい加減、吹っ切らねばならぬ。
 私はこれを機に変わるとしよう。」








夜一が見たは、涙を流しながら微笑んでいたという。






2012/09/09