烈志はその夜、の部屋をノックできずにいた。
が泣いていただからだ。







紅蓮の愛



11 決心









「真子…すまぬ…すまぬ…!







そんなか細いの泣き声を聴きながら、烈志はずっと
隊首室の外で立っていた。
処刑の日程変更を知らせたいが、そんなのいる部屋に入る勇気はなかったのだ。
のこんな弱弱しい声を聴くのは初めてだった。



翌日、は部屋から出た。
襖のすぐ横で寝る烈志を見つけ、蹴り起こした。








「おぬし、何故こんなところで寝ておる!?」
ぶへっ!お、おはようございます、隊長」
「私に用か?」
「え?あ、あぁ…朽木ルキアの処刑が…」
「知っておる。処刑を止めるぞ」
「はい?」
「薄々気付いていた…ただの隊士に双極を使うなど有り得ん。
 だから、真田姉妹を怪しいと思った二人に付けた。」
「あ…そういえば…真田姉妹がいない…」
「藍染に葵、市丸に椿を付けた。
 藍染が死んだのに葵が帰って来ない。」
「ま、まさか…」
「いや。死んではないだろう。
 だが、それを確かめるには…処刑を止めねば」










私たちは双極に出向いた。
処刑には護廷隊の隊長・副隊長が同席することになっているからだ。
もう既に二番隊・四番隊・八番隊、そして朽木白哉がその場にいた。








「…なんと、特隊隊長のお出ましか」
「私が来て悪いか、砕蜂」
「…別に。もう貴女は人が死ぬ場面にはいらっしゃらないと思ってた」
「言葉が過ぎます、砕蜂隊長」
「よい、烈志。砕蜂、私がまだ思い詰めていると思うておったか?」
「はっ!…どうだろうな」
「ふふ…その通りだ…この度は直談判しに来た。」








ふと横を見ると、京楽が何やら目で訴えてきた。
勿論、長年、奴の相手をしてきた私くらいにしか分からない変化だ。
私は少し、微笑むと、表情を消して総隊長の前に立った。







「むっ…なんじゃ、
「総隊長。少しお話をしませんか」
「…、どういうつもりじゃ?」
「ふふ…世間話ですよ」
「そんな暇はないと、分からんのか」
「…総隊長自身が特別隊創設の際、私のじじ様、劉厳様に仰ったことです。
 死神の罪は死神自身で裁かねばならない。
 四十六室のみに頼っていてはいけないと。」
「…そうじゃったかの。」
は代々、そのお言葉を守って参りました。
 罪人の死神を殺し、時には部下さえ殺して参りました。
 今ここで、処刑されようとしているのは、ただの隊士です。
 処刑こそせず、我がに任せてはもらえませぬか」
「…四十六室の決定は絶対じゃ。それはおぬしもよお分かっておろう」
「…それが真実だと、決めつけてよいのですか」
!?









が双極に着く少し前、十三番隊隊長の浮竹はとある倉庫を物色していた。









隊長!まだですか!?
「いやぁ…がここにあるって…あれ…?」
「もう始まっちゃいますよ!!!」
「…待たして済まない…ちょっとばかり手間取っちまって…
 だが、これでいける…!
 行くぞ、双極を…破壊する!!
「「はい!」」








***









と総隊長は面を向き合わせて動かなかった。
総隊長の睨みをこれほどまで、感情を崩さず見つめられるのはくらいだろうか。
しかし、それほど時間が経たぬうちに、総隊長は口を開いた。








「否。我々は四十六室の決定を飲む。双極を解放せよ!!







双極は解放され、炎の鳥が現れた。







「燬こう王…
 双極の矛の真の姿にして極刑の最終執行者。
 彼が罪人を貫くことで、極刑は終わる」









私は舌打ちをした。








「もはやここまでか…」
隊長…」
「浮竹はまだか!?」







私は極力、口を動かさないようにして烈志に尋ねた。
勿論、彼が浮竹の状況を知るはずがない。
私は、ここへ来る前に、浮竹に話をつけてきた。
彼は部下である朽木を易々処刑させないと見込んでいた。
私は彼に、四楓院家に伝わる双極破壊方法を教えたのだ。
夜一が追放されてからは、私が管理するようになっていた。


歯を食いしばり、額に汗が流れ落ちた頃、
双極の前を黒い影が走り抜けた。
それは紛れもない、黒崎一護だった。












2012/09/05