あらゆる場所で霊圧の衝突を感じる。







紅蓮の愛




09 助けとは別に










夜一を探して瀞霊廷を駆けた。
勿論、すぐに見つかるわけはない。
あやつがここにいたころ、夜一を追い詰めた者などおらんかった。
私もその一人、いつまでたってもあやつの速さには追いつけなかったし、
隠れたのを見つけることもできなかった。








「また、貴様と鬼事をするとは思わんかったよ、夜一…」








そんな最中、裏艇隊が私の前にやってきた。








隊長殿!緊急伝令であります!」
「…なんだ、私は今、忙しい…ん?緊急?」
「山本総隊長、日番谷十番隊隊長の連名による一級厳令であります」
「内容は?」
「…藍染隊長が…お亡くなりなりました!
!?
「死因は斬魄刀による鎖結および魄睡の摘出と心部破壊。
 事故死ではなく、殺害であります!
 隊長殿、何卒お気を付けなさるよう、お伝え申しあげます!」
「…分かった」







私は広い瀞霊廷内を見まわした。

あの藍染が殺されただと?
一級厳令ゆえ、間違いではないだろうが…
ありえぬ。
あの男がそう簡単に殺されるわけはない。








隊長!
「…烈志か?」
「はい!今、裏艇隊から…」
「知っておる。藍染が殺されたらしいな」
「はい…」
「特別隊全隊士に伝えろ。旅禍を見つけ次第、拘束、私に知らせろ」
「は…?しかし…旅禍は藍染隊長を…」
「…旅禍は絶対殺すな。命令だ」
「は、はい!」
「…私はこれから旧友に会ってくる」
「…はい?」
「嫌な予感がするのだ…」








***








私はある場所に向かった。
そこは、昔、夜一に連れて行ってもらった秘密の場所だ。
こっそり何かを作るのことが得意だった浦原が作ったという鍛錬場。

夜一の霊圧は少しも感じられない。
だが、私には確信があった。
夜一はそこにいると。







「やはり、ここだったか。夜一」
…!!?
「猫の姿より、今の方が動きやすかろう?ん?」
…」
「うぉ!?お前…!えーっと…」
だ。現世ぶりかの、黒崎一護よ」









鍛錬場の岩の後ろから出てきた一護は、
全身汗まみれだった。
おそらく、夜一にしごかれていたのだろう。








「おぬしら、知り合いか?」
「まぁな。私が現世に朽木ルキアを捜索しに行った際、知り合ったのだ」
「…さん、隊長なんだな。」
「あぁ。そうだ」
「じゃあ、ルキアやオレたちの敵だな」
「…まぁ、そうだな」









肩で息をしながらも、一護は私に刀を向けてきた。
それを夜一は静止する。
手を出すな、という意味だ。
私はそれを見て笑った。









「ふふ…手など出さぬよ。
 おぬしの戦いは見ておらぬが、現世のときより大幅に強くなったようだ」
「…あぁ!」
「そりゃ、更木も負けるはずだ。」
「…何をしに来た、
「あぁ…少し、情報を流しに来た」
「…!」
「藍染が何者かによって殺された。護廷隊は旅禍の仕業だとみている。
 夜一、貴様の存在はまだ総隊長には知られていない。恐らく他の隊長も…」
「いいや。白哉坊に会った」
「へぇ。でかくなってただろう?」
「…あぁ。蒼純にそっくりじゃった」
「生意気な口を利くのは今も変わらんがな。
 あぁ…いかんいかん。話が逸れた。
 つまりだ、今のところ、貴様ら旅禍に利があるというわけだ。
 そこで、ほれ、こいつをやろう…」








私はポイッと夜一に小さな袋を投げた。
夜一は怪訝そうにその袋を開けたが、
中身を見た瞬間、目を見開き、私を見つめた。









「これは…」
「卯ノ花にもらった。
 それを飲めば身体は劇的に回復するだろう。一護に飲ませてやれ」
「…すまぬ」
「貴様を助けるためではないぞ。勘違いするな」
「…あぁ」
「朽木ルキア処刑には何か裏がある。それを見つけるためだ。」
「…」
「…それに…もう人が死ぬところは見とうない…」








私は羽織を翻して、鍛錬場を後にしようとした。
一護の礼が岩に反響している。








「あぁ、あと、夜一…私は今でも貴様を許してはおらぬ」









そして私はその場から消えた。







2012/09/01