瀞霊廷内に帰って来てすぐ、
私の予想していた通り、緊急の隊首会が招集された。





紅蓮の愛




07 隊首会







私の立ち位置は総隊長の右横。
そこが特別隊隊長の場所である。

私が一番隊に着いたときには、すでに半分以上の隊長が
そろっていた。






「…みな、早いな」
「そりゃ、緊急だもん」
「京楽…」
ちゃん、どこか行ってたの?」
「…何故だ?」
「ちょっと、お香の香りがするから」






ニヤッとして私を見る京楽。
私はすぐさま、羽織を翻して、その男から遠ざかった。
それほどキツイ匂いではないと思っていたが。
京楽は昔から頭のキレる奴だ。
別に嫌いではないが、厄介な奴なのだ。

少しして総隊長がやってきた。






よ、報告、ご苦労であった」
「申し訳ありません。私がいながら、旅禍を取り逃がして…」
「いや。その話は市丸から詳しく聞こうではないか。ほれ…来たか。
 さぁ!今回の行動についての弁明を貰おうか!三番隊隊長----市丸ギン!!!






バンと扉が開くと、市丸が立っていた。
私の嫌いなキツネ目の男だ。






「何ですの?イキナリ呼び出されたか思うたら、こない大袈裟な…
 尸魂界を取り仕切る隊長さん方がボクなんかの為にそろいもそろって、まァ…でもないか。
 十三番隊隊長さんがいらっしゃいませんなァ。どないかされはったんですか」
「彼は病欠だよ」
「またですか。そらお大事に」
「フザケてんなよ。そんな話しにここに呼ばれたと思ってんのか?」






私はため息をついた。
この隊首会が始まったらいつも隊長同士の口論が始まる。
たいていは十一番隊、十二番隊などが事始めだ。
ここには、自分の欲求しか考えないものしかいない。







ぺいっ!
 やめんかい、みっともない!更木も涅も下がらっしゃい!
 …まぁ、じゃが、今のでおぬしがここへ呼ばれた理由は概ね伝わったかの。
 今回のおぬしの命令なしの単独行動。そして標的を取り逃がすという隊長としてあるまじき失態!
 それについておぬしからの説明を貰おうと思っての。
 そうでもしなければの怒りも静まらんじゃろ。
 その為の隊首会じゃ。どうじゃい、何ぞ弁明でもあるかの
 
 市丸や






隊長全員の視線が市丸を捕らえていた。
市丸は少し間を置いてから口を開いた。






ありません!
「…何じゃと?」
「弁明なんてありませんよ。ボクの凡ミス。
 チャンにも迷惑かけました。そりゃ、心から謝りますわ。
 さぁ、どんな罰でも----」
「…ちょっと待て、市丸…」






すると、耳を裂くような警鐘が鳴った。






緊急警報!緊急警報!!瀞霊廷内に侵入者有り!!各隊守護配置について下さい!!






何だと!?侵入者…!?
「まさか…例の旅禍か!?」







更木が真っ先に、隊舎から去るのが見えた。







「…致し方ないの…
 隊首会はひとまず解散じゃ!市丸の処置については追って通達する。
 各隊、即時に廷内守護配置についてくれい!」







そこで私は、すぐさま烈志の配置されている場所へと向かった。







隊長!」
「様子はどうだ?」
「先ほどから情報が錯綜していて…旅禍の侵入した痕跡がないんです」
「…誤報か…?」
「どうやらその線が強いようです」
「誰が一体誤報なんて…」






明朝まで全体で捜索したが、結局旅禍の姿を発見することはなかった。
他の隊でもそのような情報が出回り始めた頃、
空が一瞬にして明るくなった。

私はハッとして空を見た。






「烈志、空だ!空を見ろ!!
「な、なんですか…あれ…」
「あれが旅禍だ!!全隊士に通達しろ!あれは遮魂膜を通過するぞ!!」







空鶴と夜一のことだ。
万全を期して突っ込んでくるはずだ。

しかし、光は4つに分裂し、散って行った。
私は烈志に言った。






「特別隊全隊士に連絡しろ。旅禍は殺すな。拘束だ」
「はっ!」
「葵、椿はいるか」
「「はい、隊長」」
「葵は藍染、椿は市丸を張れ」
「「!?」」
「理由はまた話す。相手は隊長だ。決して気付かれるな」
「「はっ!」」







私自身は夜一の霊圧を探した。
あやつの霊圧など、寝ていても見つけることなど容易い。








***









烈志は、副隊長招集に参加していた。
強制的に副官章を付けることなど、つい最近、副隊長に昇進した烈志にとって初めてのことだった。
『つい最近』といっても20年は副隊長の地位にい続けているのだが。

そこには、すでに他の隊の副隊長たちは集まっていた。







「おーおー。これはこれは…特隊の副隊長さんは遅れておでましか」
「うるさいな、射場。」
「気に障ったんやったらすまんの」
「…別に」
「なぁ、烈志。お前、何か知らないのか?旅禍のやつ」
「それが全くなんだよ、隊長も何か一人で動いてるし…恋次こそ、知らねーのか」
「…あぁ」






恋次は少し顔を背けた。
烈志の予想では、旅禍は朽木ルキアを助けに来たのだろう。
隊長が依然、現世であった俄死神について話していたのを思い出したからだ。

すると、四番隊第三席の伊江村が近況報告をしにやってきた。







「…十一番隊第三席・斑目一角様、同じく五席・綾瀬川弓親様…
 以上二名の上位席官が重症のため戦線を離脱なさいました…!
 各部隊の詳細な被害状況については現在調査中です。」







烈志は伊江村三席の話を聞きながら、考えを巡らせていた。





そういえば…郁斗…梶郁斗はどこだ…?







2012/08/30