百年という月日は、あまりにも長く、つらかった。
だが、その半面、あまりにも短く、儚かった。







今日も隊舎にあの鈴の音が響く…









紅蓮の愛








序章  あの日の約束









ドタドタドタッ!




バンッ!









「?」
た、隊長…!







肩で息をしながら執務室の扉を開いたのは、特別隊副隊長の桐生烈志である。
身長185pはあり、たくましい体格の持ち主である。特徴は深い藍色の瞳…








「何だ、騒々しい…」








そんな騒がしさの中でも、冷静に筆を動かし続けるのが、特別隊隊長のだ。
才色兼備とはまさに彼女のことだろう。
流れるような緑の黒髪に闇までも見透かしてしまうような漆黒の瞳…









朽木隊長の妹君が現世で行方不明だそうです!
「百哉坊の…確か浮竹のところだったな?」
「はい。名は朽木ルキア…十三番隊隊員です」
「ん?席官ではなかったか…まぁ、そこらへんはおいといて。
 で、その朽木ルキアが行方不明と特隊とは何の関係があるのだ?」
「なんか、うちの隊が探しに行かなきゃなんないそーです」
「…は?それは隠密鬼道の仕事だろう?」








今までずっと動かし続けていた筆を置き、別の書類を捜し出した
この件に関してはあまり興味がないようだ。








「俺もそう思ったんですけどね。何か、朽木ルキアは大罪を犯したらしいです」
「…大罪?」
「はい。“現世の人間に対する死神能力の譲渡”」
「それはそれは…本当ならば救いようがないのぉ…」
「ってわけで、うちに回ってきたそうです」
「そこが意味が分からん!普通は六番隊だろう!?自分の妹ではないか!」
「そーゆう規約があるっぽいですよ。隊長、知らないんですか!?」
「ま、読んどらんと言えば、読んどらんな…よし!では烈志、お主が行って参れ!」







ビシッと指名する。だが烈志は全く乗り気ではなかった。









「えーッ!無理ですよ。だって俺、今から総隊長の所に行く用事があるんですから」
「む…それはしょうがない…では葵に行かせろ」
「真田葵三席は真田椿四席と共に虚退治で不在です」
「では郁斗に…」
「梶郁斗五席は流魂街監視のため不在です!」
「…行く奴がおらぬではないか…平には行かせられぬ…」
「隊長ぉ、行って来て下さいよ。朽木ルキアを見つけて連れ戻すだけです。
 義骸は技術開発局の阿近に頼んでおきましたから」
「は…!?ちょ…ッ!」









が文句を言う前に烈志は執務室から出て行ってしまった。
は溜息を付くと、席を立ち窓を閉めた。
初夏のこの時期は、窓を通って心地よい風が入って来る。
今日もまた、青空が綺麗な日であった。










「綺麗な空だ…あの日と同じ、青空…」








そう呟いて、は執務室を後にした。















2011/09/20